「テクノロジーを通じて、医療を一歩前へ」をミッションに、注目を集める株式会社Linc’well(リンクウェル)。医療ITスタートアップである同社の強み、そして目指す世界とは。特にプロダクト開発・ユーザー体験に力を入れる理由とは。執行役員としてプロダクト責任者を担う原悠貴さんにお話を伺った。
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「テクノロジーを通じて、医療を一歩前へ」
2018年創業以来、ITを活用し、医療にも「世の中の当たり前」を適用することを目指し、事業展開してきたリンクウェル。テクノロジーを活用した、医療現場のDX推進に加え、次世代医療サービス・価値提供を行っている。
「生活の中で最も重要な「健康」を支えてくれている医療ですが、まだまだITが十分に活用されていない現状があります。患者さんの視点では、夜、休日などに病院が開いておらず、診察を受けづらいですよね。医療従事者視点でいえば、一人あたりの労働時間が長く、事務処理含めて負担の大きさが課題となっています。こういった医療現場の課題に対し、私たちはテクノロジーを最大限活用することでアプローチしています。」
こう語ってくれたのが、リンクウェルにて執行役員としてプロダクト責任者を担う原悠貴さん。その先に目指すのは「誰もが最高の医療体験を受けられる世界」だという。
彼らがいう「最高の医療体験」とは。そしてなぜリンクウェルでは、それが追求できるのか。彼らの事業の強み、そこに携わるやりがい、そして実現しようとしている世界について原さんに伺った。
▼リンクウェルの事業内容・強みについて
オンライン・オフラインで医療機関・患者/ユーザーをつなぐヘルスケアプラットフォーム事業を運営。「対面医療機関DX支援」「オンライン診療システム」「ヘルスケアEC」サービスの3つを提供している。祖業である「対面医療機関DX支援」は2018年10月以降、首都圏・大阪を中心に全国10院(2022年11月時点)を展開する「患者ファースト✕プライマリ・ケア」のクリニック「クリニックフォア」のデジタル実装支援をしている。また、同クリニックは、2020年4月以降「クリニックフォアのオンライン診療」の名称でオンライン診療も展開。保険診療に加え、低用量ピル、AGA、メディカルダイエット、美容皮膚、アレルギー内科、STDといった自由診療も含む幅広い診療科(20診療科、2023年2月末現在)を展開し、累計診療件数140万件(2020年4月~2022年12月当院のオンライン診療実績(薬の発送実績を含む))を誇る国内最大級の規模、かつ医療ブランドが展開する総合オンライン診療プラットフォームとして成長している。そのオンライン診療システムの開発に加え、リンクウェルはマーケティング・CRM支援等も手掛けている。加えて、未病・予防医療の一環として、クリニック専売化粧品、コンタクトレンズ、OTC医薬品などのヘルスケアEC事業も展開。個人の健康を改善することで、個人のQOLをあげ将来への不安を解消できる世界観を目指して事業展開している。
「オンライン診療」と「対面診察」を両軸で手掛ける意味
近年、実質的なオンライン診療解禁に伴い、その支援サービス・システムが増えている。そういったなかで、存在感を高めているのが累計診療件数140万件(2020年4月~2022年12月当院のオンライン診療実績(薬の発送実績を含む))を誇る「クリニックフォアのオンライン診療」だ。同サービスはリンクウェルがシステムの提供/マーケティング支援をしており、診療件数でみると国内最大級の規模を誇るという。
同社の最大の特徴は、システム導入・オンライン診療サービスの提供のみならず、全国10院ある「クリニックフォア」に対し、DX支援を行っている点にある。クリニックフォアは対面診療のWeb予約・オンライン診療両軸で診療を可能とする他に類をみないポジションを確立しており、そのプラットフォームを提供しているのがリンクウェルだ。
そもそも、なぜこの「オンライン」と「対面」両軸でのシステムを展開しているのか。どういった課題を解決しようとしているのか。原さんに伺うことができた。
「まず、現在の日本の医療における大きな課題は、時代に適した利便性の高い患者体験をつくれていないことだと捉えています。イメージしやすいのは、病院での限られた診療時間や待ち時間、薬をもらうまでの煩雑さですよね。平日日中、対面で診察をしてもらう/処方箋をもらう/調剤薬局で薬をもらう、それぞれに待ち時間があり、薬をもらうだけでも半日以上かかってしまったりもします。自分が患者さんの目線でいえば、多くの人たちが「どうにかならないか」と思っているはず。ただ、これらの課題は、単に病院・クリニックにシステム導入するだけでは解決しないもの。予約、問診、決済、カルテ記入など主要オペレーションのIT化はもちろん、サービスのデザインから共に行う。もちろんオンライン診療も機能する形で運用に乗せていく。この志を共にする「クリニックフォア」の医療従事者たちとサービスをつくっているのが私たちの特徴であり、最大の強みです」
実際、患者さんからも評価を得ていると原さんは語る。
「オンライン診療はまだまだ黎明期のサービス。これまで対面でしか医療を体験したことがない多くの人にとってはオンライン診療に対する漠然とした不安感があるのは当然のことだと思います。そんな中でオンライン・対面のどちらも対応している安心感が、患者さんが最初の一歩を踏み出す一助にもなっていると捉えています。実際の患者さんからも「安心して受診できました」という声をいただいています。クライアントであるクリニック側の使いやすさや業務効率化はもちろん、いかに患者さん起点で質の高い医療体験をつくれるか。信頼関係を築いているパートナーとともにチャレンジできるからこそ大胆に新しいことが実現できていると言えます。」
リンクウェルがDX支援、オンライン診療プラットフォーム提供/展開を行うクリニックフォアグループ。オンライン診療は、スマートフォンやパソコンでどこからでも診療を受けられる手軽さに加え、医師との安心で丁寧なコミュニケーションを大切にしている。クリニックフォアグループすべてのクリニックはIT化されており、便利でスマートな医療体験を届けている。
医療従事者・患者さんの「声」をダイレクトに受け取れる醍醐味
もともと外資系化粧品メーカ-、コンサルティングファーム、リクルートなどでプロダクトマネジメント、UIUXデザイン、事業責任者などを歴任してきた原さん。リンクウェルでこそ得られる経験について伺えた。
「ユーザーである患者さん、そして医療従事者の「声」を直接聞けること。ここに尽きると思います。それをもとにプロダクトをつくり、現場で使われる。課題解決が直接実感できる。プロダクト企画者にとってこれ以上ないやりがいですよね。以前SaaS系のプロダクト開発に携わっていたこともあるのですが、どれだけ優れたものが作れたとしても、運用面がハードルになることも少なくありませんでした。その原因の多くは「作る側」と「使う側」の距離が離れていたから。ただ、クリニックフォアグループを含めて、全員が当事者。同じ目線、志を共有しているので、医療現場オペレーションの変更にまで踏み込んで患者体験の向上を実現できるのが大きな特徴です。なかには患者体験向上の為のUX改善アイデアをPowerPointなどで作成して送ってきてくれる医療従事者もいて(笑)。毎日のように患者さんや現場の困り事を起点に「この体験を変えたい」と要望が上がってきます。スピーディに評価やフィードバックも得られます。もちろん検討した上でプロダクトに反映しますが、現場からアイデアが出てくるのは当事者意識が高い証。私たちも提案すれば、すぐにトライアルができる。これはなかなか他にはない環境だと思います。」
原悠貴/外資系化粧品メーカ-、コンサルティングファームを経て2014年に株式会社リクルートライフスタイル(現株式会社リクルート)に入社。プロダクトマネジメント、UIUXデザイン、開発ディレクション、新規サービス開発などに携わったのち、美容室検索・予約サービスのtoC向けWeb/アプリ企画開発を組織長として統括。その後スタートアップでの事業責任者を経て2022年にリンクウェルに入社。現在は執行役員としてプロダクト責任者を務める。
課題の壁は高い。だからこそやりがいに満ちている
医療領域におけるプロダクト開発の難易度は決して低いとは言えないが、プロダクトマネジメント冥利に尽きると原さんは語る。
「命に関わるものなので法的に多くの規制があり、一つひとつのサービスに求められるレベルが高い。業務そのものが非常に複雑で型化していくことの難しさがあります。たとえば「お腹が痛い」という症状ひとつとっても痛みの場所・種類、そして原因はさまざま。医療従事者は、複雑に絡まる可能性を一つずつ考え、慎重に診断に導き、薬を処方していく。構造的に理解してプロダクトに反映していかないと全く太刀打ちできません。ただ、そういったハードルを乗り越え、解決されたときのインパクトや社会的意義は非常に大きいもの。課題の壁が高ければ高いほど、超えた先に綺麗な景色が見えるものだと思っています。自身の生み出したプロダクトが、世の中の人々の健康や生活に価値を生み出す瞬間が見られるのはプロダクトマネージャーとしての冥利に尽きるんじゃないかと思います。」
そして伺えたのが、同社で活躍していくために求められる資質や能力について。
「毎回の意思決定はやってみないと分からないことだらけです。だからこそ、目的に対して今の最善はこれだ、と自分の中で意思を持てるかが重要だと考えています。リンクウェルでは、事業・顧客・開発のトライアングルに、医療従事者や医師法、医療法、薬機法、医療の現状などの要素も入ってくる。事業と顧客と開発の間に挟まれながら、プロダクト価値の最大化に責任を持つこと。自分に意思がないと、各々のステークホルダーの御用聞きになり、誰からも否定はされないけど支持もされないような意思決定をしてしまうことになります。それでは最高の医療体験を患者さんに届けることはできない。しっかりと自分の中で軸を持ち、周りに伝播させていってほしいと思っています。少数精鋭で非常にフラットな組織。各々が自律的に動いていくスタイルを取っています。新しく1歩踏み出す上で、経営陣をはじめ、上司からの指示を待つ必要はありません。ぜひ課題に向き合う当事者として意思と覚悟を持ち、周囲を巻き込みながら自らの手で世の中に価値を生み出していってほしいと思います。」
支援しているクリニックフォアグループは2023年2月末時点で、20診療科(低用量ピル、AGA、メディカルダイエット、美容皮膚、アレルギー内科、STD等)と幅広い診療科のオンライン診療を扱っている。「病気や怪我の治療は「-」を「0」にする医療もありますが、「0」の状態を「1」や「10」にしていく領域もあると思うんです」と原さん。「AGAや美容皮膚などはまさにそう。「こうありたい」という自己実現に近づく領域も広くカバーしていく。そうすることで、世の中すべての人が、自分の心身を最善にコントロールできる仕組みをつくっていけると考えています。」
子どもたち世代に、胸を張れる仕事を。
そして取材の最後に伺えたのが、原さん自身の仕事観について。
「元々これだ!というやりたいことがあったわけではなくて。それがずっとコンプレックスだったんです。故に自分の可能性を広げるチャレンジができることを求めて仕事を選んできました。ただ、共通しているのは「誰かの負を解消すること」だと思います。使命感に駆られるというよりは、解決した先の景色を想像するとワクワクするというか。もちろん実際にやるのは大変で、泥臭いことばかり(笑)だからこそ前向きなメンタリティーを持って、楽しく臨みたいなと思っています。付け加えるとここ最近、仕事に対する考え方にも少し変化があって。まだ小さい娘がいるのですが、子どもが生まれてからは以前に比べると「ああ、次の世代がいるんだな」ということを意識するようになった気がします。この子どもたちの世代に何が残せるだろうと。何よりも胸を張れる仕事がしたいなとは思っています。世の中に対してもそうですし、一個人としてもいつか娘が学校で「私のお父さんは、世の中にこれを生み出した人なんだ」と言えて、まわりから「かっこいいね!」と言われる姿を木の陰から見ているみたいな(笑)そんな未来が実現できたら最高ですし、そんな価値あるプロダクトやサービスをこれからもつくっていきたいと思っています。」