INTERVIEW
Craif

挑む「がん医療」の民主化。予防を医療の中心に。コンサル出身者が「がん早期発見」ベンチャーで抱く志

掲載日:2025/06/12更新日:2025/06/12
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「がんという困難な社会課題の解決に本気で取り組みたい」こう話してくれたのが、佐藤純也さん(30)。自宅で簡単に実施でき、がんの早期発見を支援する尿がん検査「マイシグナル」を提供する名古屋大学発スタートアップ「Craif(クライフ)」で、事業開発として働く人物だ。2025年1月には、自社の販売サイト来訪者向けに尿がん検査を直接提案していく「カスタマーセールス組織」も立ち上げた。もともと外資系コンサルティングファームで働いていた佐藤さんは、なぜ次のステージにCraifを選んだのかーー。

▼Craifについて
2018年に誕生した、名古屋大学発スタートアップ。「人々が天寿を全うする社会の実現」というビジョンのもと、疾患の早期発見と治療の最適化に取り組む。 2024年のノーベル生理学・医学賞の受賞テーマとなった「マイクロRNA」の実用化にいち早く着手し、尿中マイクロRNAをAIで解析する技術を開発。 これにより、尿がん検査「マイシグナル・スキャン」を提供している。販路はいくつかあるが、売上として最も大きな割合を占めるのが、自社Webサイト(toC)経由の購入。最近では、法人向けに「福利厚生」として導入してもらい、所属従業員は数万円の負担もしくは無償で検査を受けられるようにするスキームを開発。順調にシェアを伸ばしている。そのほか、ドラッグストアに卸し店頭で提供、医療機関向けに卸し患者向けに提供する、BtoBtoCでも展開。実際に「肺がんのステージ0を早期発見できた」という事例も報告されており、同社の技術が持つ可能性に大きな注目が集まっている。また、Craifは、マイクロRNAをリスク検査に活用する分野のパイオニアとして、自社の研究成果を社内にとどめることなく、積極的に学会や研究会で発表している。これにより、医療関係者の研究活動に貢献し、医療分野全体の発展に寄与する姿勢を大切にしている。

▼「マイシグナル・スキャン」について
「早く・手軽に・部位別に」がんのリスクを調べられることが最大の特徴。医療機関で受ける全身のがん検査には10万~15万円はかかるのに対し、マイシグナルは6万円台と、費用面でも大きなメリットがある。従来の検査では、全身のがんリスクを調べようと思うと何回もの通院や採血を行なう必要があり、受診者にとって身体的・精神的負担が大きい傾向があった。これに対し、マイシグナルは尿を1回提出するだけで、全身のがんリスクを部位ごとに細かく確認できる。特にがんの場合、検査時間が長くなればなるほど、完治する確率が下がることが知られている。進行の早いがんでは、3ヵ月ほどでステージが急速に進行してしまうことも珍しくない。こうした背景から、最も早期発見に適した検査として、優位性の高いサービスであると言える。さらに、マイシグナルは、がんの中でも特に治療が難しいとされる“すい臓がん”を、ステージ1から検知することが可能である。すい臓がんは、自覚症状が少なく、早期発見が非常に困難であるため、従来のがん健診ではカバーされていなかったがん種。そのため、家族がすい臓がんを患った経験があるなどの理由で不安を抱える人々にとって、マイシグナルは大きなニーズを満たす検査となっている。

外資系コンサルから、「がん早期発見」スタートアップへ

外資系コンサルを経て、Craifへ入社した佐藤さん。その入社の決め手から伺った。

「がんの早期発見」という社会課題に対して、本気で取り組んでいる会社だと思えたことが決め手でした。「絶対にここしかない」と、運命的なものを感じて決めきった転職でした。

特に印象に残っているのが、選考でのCTOの言葉です。「僕らはこのままやっていけば、絶対にがんの早期発見の領域で一番になれる」と。話し方こそ落ち着いたトーンながらも、確かな自信、パッションが伝わってきました。その言葉に触れたことで、非常に心地よく、楽しく面談ができたんです。サイエンス領域を専門とする企業であるため、てっきりロジカルで、ある種ドライな感じの雰囲気を想像していたのですが、良い意味で期待を裏切られました。

実はたまたま私自身は薬学部の出身でもあったのですが、そんな私から見ても、Craifの技術力はサイエンスの観点で十分に信頼できると思えた。これも大きなポイントでした。入社後も全社会議などでR&Dチームが提供するデータを見る機会があります。その際に目の当たりにするデータは非常に貴重かつ興味深いものであり、「このようなデータを保有しているのは、世界で我々だけでは…!」と思わず心が高ぶってしまいます。このようなクオリティのデータを量産しているR&Dチームを心から尊敬していますし、本当に誇らしい気持ちになります。

ちなみに補足として今回の募集について言及すると、出身学部、経験業界などは一切不問です。8~9割は文系出身のメンバー。全く医療に関する知識がない方でも押さえておくべきポイントなどは体系的なオンボーディング計画や様々な学習コンテンツがあるので、ご安心いただければと思います。

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富山大学薬学部を卒業後、北海道大学大学院でがん研究に従事し、新卒でPwCコンサルティングに入社した佐藤さん。研究者の道ではなくビジネスの世界を選んだ理由を「大学院時代に出会ったコンサル出身の起業家の影響で、研究とビジネスのプロセスに共通点を見出した」と語る。「自身のスキルがビジネスでも活かせると感じ、まずはコンサルで課題解決能力を磨きましたが、次第に自ら価値を届け、適切に顧客からフィードバックを得られる環境に行きたいと思うようになりました。特にスタートアップへの転職を視野に企業を探していた矢先、アンビ経由でCraifからスカウトを受けとりました。実はCraifの存在は学生時代から知っており、『あのベンチャーがプロダクトを完成させ、事業化を果たしていたんだ…!』と感動したことを覚えています」

「がん検査」の第一歩につなげる、型破りなアプローチ

続いて、佐藤さんのミッションと、そのやりがいについて伺った。

Craifは、今まさに10→100にグロースさせていくフェーズにあります。ここを、手触り感をもって体験できることは大きなやりがいです。特にCraifでは、事業拡大というゴールを達成するためであれば、手段は自由。これまでに試したことのないアプローチであっても、そこに意志や論理が備わっていれば「それ、やってみよう」と採用される風土があります。自分の役割をどんどん拡張させていくことができる。これも面白いポイントだと思います。

私の場合、ECサイト等を通じて一般消費者向けにサービスを提案していくD2C領域を担当しているのですが、サイト内に「がん検査の相談窓口※」を設置する施策を実施しました。これにより、マイシグナルに興味はあるけれども購入を迷われている方々と直接電話でコミュニケーションをとり、がん検査の第一歩を踏み出していただくまでのサポートができるスキームを構築しました。

一般的に、私たちのような「D2C」事業者におけるWebサイト来訪者向けのマーケティング施策といえば、サイト改善や広告運用が主流。直接コミュニケーションをとっていくアプローチは、比較的珍しい手法だと思います。ただ、がんという病気は、命に関わる重要テーマであるにも関わらず、なかなか周りに気軽に相談できる人がいないケースが多いのではないかと考えました。また、誰にも相談せず購入するのは不安を感じる人も少なくないだろう、と。医療に関する専門的な知見がない場合、検査の良し悪しの見極めが難しいという問題もあります。こうした仮説に基づき、完全にオンラインで完結させるのではなく、相談窓口を設け、あえて人を介在させる仕組みで試してみたいと思ったんです。お客様との会話を通じて課題を咀嚼し、適切な提案を行なうことで、「検査を受けてみよう」とお客様の背中を押せるのではないか、と。

実際にお客様と話ししてみると、「今こういった持病を抱えていて…」「先日、医師にこう言われて…」「こんな不調があり調べたら辿り着きました」などの声が寄せられて。思っていた以上に、みなさん不安を抱えられてることがわかりました。その不安に対して、「それならば、まずはこの検査から始めてみると良いかもしれません」といった形で応えることで、オンラインの経路と比較して数倍もの購買転換率を実現できました。

この取り組みは、最初は私一人で始めたものでしたが、2025年3月からは組織化し「カスタマーセールス組織」として運営を開始しました。現在、私はマネジメントをしながら、3人のメンバーと一緒に取り組んでいます。まだ立ち上げフェーズではありますが、チームの成熟が進むにつれて、購入数も急速に伸びています。

購入いただいたお客様のアンケートでは「検査の結果、低リスクだったので安心できた」「お陰様でがん対策に前向きに取り組むことができた」という声が寄せられています。こうした声を通じて、私たちのサービスが1人のお客様≒社会に貢献できている手応えを感じられる。この事業に携わっていて本当に良かったと思える瞬間ですね。

※【免責事項】
本電話相談サービスは、がん検査に関する情報提供およびお客様のご相談に応じるものであり、医師による診断行為や医療行為に該当するものではありません。あくまで参考情報としてご利用いただき、正式な診断や治療が必要な場合は、必ず医療機関にご相談ください。なお、医師その他の専門家からの指導がある際には、当該指導に従っていただくようお願いいたします。

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佐藤さんの、転職前後の働きがいの変化を示すグラフ。

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最近はテレビCMや新聞チラシ、ドラッグストアでの広告など、認知度向上を目的とした露出拡大の取り組みにも注力。さらには、検査を贈り物として活用してもらうための施策も展開している。「母の日のギフトとして贈る、という項目にチェック入れていただくと、ギフトシールを付けギフトラッピングを施してお届けするキャンペーンを実施しました。『なかなか帰省はできないけど、遠方に住む両親のために何かしたい』という方に選ばれています。マイシグナルは、検査の敷居を下げる意味でも2万円台の商品もラインナップしており、ギフトとしてはこの価格帯の商品を選ばれるケースも多く見られます」

「予防」が医療の中心になる世界を

そして、今後の目標とは――。

Craifが全社的に掲げている目標は、日本国内で「がんの早期発見」を、より一般的なものにしていくこと。要は、予防が医療の中心になる世界を実現していくことを目指しています。代表の小野瀬がよく語るのですが、「歯医者に行くような感覚で、がんのリスク検査を受けるような世界をつくることが理想の姿だよね」と。そのための具体的な目標として、「シェア50%=3000万人の利用者の創出」を掲げており、この実現に向けて貢献していきたいと考えています。

さらに、中長期で言えばグローバル展開も視野に入れています。また、個人的な思いとしては、がんに限らず、たとえば「うつ病」などの現代病にも、いつか検査でアプローチできるようになればと考えています。

そのためにも、まず足元の課題として、カスタマーセールス組織の強化に取り組んでいきます。具体的には、マイシグナルの相談窓口の存在をより多くの方に認知していただくために、どのようなタッチポイントを構築すべきかを追求し、相談件数の増加を目指していく。同時に、相談窓口の受け皿となるセールスサポートメンバーの育成や、組織全体の強化にも注力していく。これらの取り組みを通じて、スケールアップに向けた土台をしっかりと固めていきたいと考えています。

医療・健康という社会課題に挑む佐藤さん。意外にも、大学進学で「医療」の道に足を踏み入れたきっかけについては「これといって劇的な原体験があったわけではない」と話してくれた。

なにか特別にやりたいことがあったわけではなく、割となりゆきなんです(笑)。高校時代に進路を決めるとき、父が医療業界で言語聴覚士をしていたことから、自然と「医療業界」が選択肢に入りました。そして、私自身は昔から何かを創作することが好きだったので、「ならば薬を創ってみようか」と考え、薬学部に進むことにしました。入学後は自分の専門を選ぶ際は、「せっかく取り組むなら最も困難な病を解決したい」という思いから「がん研究」の道を選びました。

入口こそ曖昧なものでしたが、実際に研究を始めてみるとどんどん研究にのめりこんでいって。いつしか「自分が心血を注ぐ道は、ここだ」と思うようになったんです。そして今、Craifという環境に出会い、会社の目指すビジョンと、自分の中の内発的な動機とが奇跡的なまでに一致している。そのため、迷うこともなく全力で取り組めているという感じですね。

特に働くなかで感じているのですが、Craifのカルチャーも自分の性に合っているんですよね。Craifはとてつもなく大きなスケールで物事を捉えるところがあって、「世界とは、こうあるべきでしょう?」と何食わぬ顔で理想を掲げ、壮大なToBe(在りたい姿)を描く。これは事業計画レベルだけではなく、現場の施策や企画単位においても根付いている思想です。全員が壮大なToBeから逆算し、全力で向き合っているのを日々感じます。

前職のコンサル時代も、企業の参謀としてToBe(在りたい姿)を描いた経験はありました。ただ、当時はクライアントの現状から考えて、まずは +2~3 ポイントの改善を目指すような、段階的な目標設定が一般的でした。そんな私にとって、Craifに来た当初は、内心「こんな壮大な目標を掲げるのか…?!」と、カルチャーショックを受けました。ただ、実際にこのスケール感で捉えてみると、取るべきアプローチは全く変わることに気づきました。自分一人ではどうにもならないことばかりなので、周囲を巻き込んだり、予算・リソースの調整を経営層に働きかけたり。コンサル時代に培った、複雑な課題を構造化して捉え、ソリューションを見出していく力をさらに高い次元で発揮しながら、自分自身、よりアグレッシブに動けるようになったと思います。

私は仕事を「社会に対して実質的な価値を生み出し、目に見える変化を起こす営み」と捉えているのですが、Craifでなら本当に大きなインパクトを起こせる、もっと遠くへ行ける。そういった確信に近い感覚があります。もちろん私たちが掲げる理想は高く、決して簡単な道のりではありません。だからこそ、仮説検証を重ねながら、一歩ずつ “がんを恐れない日常/社会の実現” を現実のものへ近づけていければと思います。

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