INTERVIEW
神戸市「イノベーション専門官」公募

2023年度、神戸市が「イノベーション専門官」公募へ。神戸から世界へ羽ばたくスタートアップを創出せよ

2016年、全国に先駆けて「スタートアップ支援事業」を開始し、そのエコシステム形成を推進してきた神戸市。2023年以降もスタートアップ・エコシステムグローバル拠点都市として支援強化を図る。特に力を入れているのが、起業家の創業支援をはじめとする、多様な“挑戦者”たちの機動力向上。今回はその中核を担う「イノベーション専門官」の公募となる。一体どういった人材が求められているのか。そして神戸市でのスタートアップ支援でこそ得られる働きがいとは。同ポジションで活躍する高見直矢さん(30)を取材した。 

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2025年までにスタートアップ支援社数1000社へ

2016年、全国に先駆け、スタートアップ支援事業を開始し、スタートアップ・エコシステム形成を推し進めてきた神戸市。2025年までの目標として支援社数1000社を掲げ、スタートアップ・エコシステムグローバル拠点都市としてさらなる飛躍を目指す。

外国人起業家の創業支援をはじめ、千差万別なスタートアップの実情にあう支援、イノベーションが生まれやすい環境をつくり、革新的な課題解決に取り組んでいく。

その中核を担うのが「イノベーション専門官」だ。どういったバックグラウンド、仕事価値観を持つ人材が働いているのか。そこで得られる働きがいとは。同ポジションにて活躍する高見直矢さん(30)の転職ストーリーを伺うと共に「活躍する人材像」に迫っていこう。

神戸市によるスタートアップ支援事業例
・官民連携の地域・行政課題解決プロジェクト「Urban Innovation KOBE」実施(2018)
・京都・大阪とともに「グローバル拠点都市」選定(2020)
・官民連携ファンド「ひょうご神戸スタートアップファンド」立ち上げ(2021)
・スタートアップの海外展開を支援する「SDGs CHALLENGE」実施(2021)
・ビジネススクエア『ANCHOR KOBE』開設(2021)
・エンジニア創出事業実施(2021)
・スタートアップの立ち上げ、成長支援の公式情報サイト「Life-Tech KOBE」開設(2022)
・オープンイノベーションプログラム『KOBE OPEN INNOVATION「Flag」』始動(2022)
※( )内は開始年

行政の仕事は、より「課題」に近い場所にある

前職では、急成長を続けてきた産業のDX推進事業企業にてキャリアを築いてきた高見さん。組織の急拡大、を20代で任されるなど活躍してきた。なぜ転職を考えたのか。そして「行政」を次なるフィールドに選んだ理由とは。

前職も「ビジネスを通じて社会課題にインパクトが与えられる環境」として大きなやりがいはありました。ただ、家庭の事情もあり、神戸への移住を考えることに。そういったタイミングで、たまたまAMBIを通じて知ったのが、神戸市の公募でした。じつはもともと行政で働くことはあまり想定していなかったのですが、やりたいことに非常にマッチしていた。これは持論ですが、あらゆる仕事は「課題」を解決すること。そういった意味で、行政ならばよりで働くことができるはずだと考えました。さまざまな産業を横断しますし、全世代の方々を対象にサービスを提供していく。生活の「全て」に密接につながる細かい問題の集積を含め、知ることができる。どんな課題が "今” 生まれているのかがわかる。このあたりが行政を転職先に選んだ理由です。

とはいえ、キャリアとしても決してメジャーとはいえない選択。最先端をいくテクノロジー企業で築いてきたキャリアから、ある意味「外れる」ことも意味する。そこに迷いや懸念はなかったのだろうか。

迷いや懸念は一切なかったですね。もちろん最先端のテクノロジー企業にいれば、先端をいく技術が扱えますし、情報も入ってきます。そういった環境の差はあるかもしれませんが、テクノロジーやスキームは、課題に対する手段でしかありません。民間であろうと、行政であろうと、仕事の本質はやはり課題を解決すること。どういった課題が生まれているのか。課題設定をどうするのか。その設定と解決さえできれば、少なくとも労働集約に陥らず、仕事はなくならない。そう考えると、むしろまだ誰も手をつけていない領域の課題設定と解決により多く取り組める環境で経験値を得ることも重要。キャリアの視点で見ても、民間企業から行政に行くケースは稀ですし希少。どうせなら誰も経験していないようなことをしたほうがと考えました」

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2022年に入職した高見さん。どういった選考・面接だったのか伺うと「あまり堅苦しい選考といった感じではなかったです」と語ってくれた。「こちらから気になることを質問しつつ、どういった課題があるのか、そこをどう解決していくか、自分がやるべきこと、やれることは何か。むしろディスカッションに近かった気がします」

手掛けていくのは「唯一無二」の仕事

こうして神戸市のイノベーション専門官として2022年11月より働きはじめた高見さん。実際に働いたからこそ感じる、行政だからこそ得られる経験について語ってくれた。

一般的な企業にはいわゆる「競合」が存在しますが、行政には「競合」という概念はありません。神戸市役所でいえば、唯一、神戸市全体における幅広く課題に対し、あらゆるアプローチできる機関と言えます。もっと言えば民業圧迫につながらないよう、企業が既にやっていることは基本的に行政としては行いません。つまり、事業会社ができないことをやるのが一つのミッションです。そう考えると、誰も手掛けることができない「唯一無二の仕事」を担うことができる。誰もやったことないことを、自ら考えて実行できるわけです。世の中に必要でありながら、まだ誰も手をつけていない、やり切れていない領域に対してアプローチする。ここは行政ならではの経験だと捉えています」

一見すると、そういった行政ならではの事業は“ビジネス的な収益性よりも、公共性が求められる”と捉えられがち。だが、必ずしもそうではないと高見さんは補足する。

もちろん行政による事業は公共性が重要です。ただ、解決すべき課題が山積するなか、全てを行政だけで解決するのは不可能ですよね。人員リソースの問題もありますし、常に予算を割けるわけでもありません。誰かに渡せなければ、誰もやらない状態が永遠に続いてしまう。では、どうするか。行政として民間に事業を委託し、社会サービスをアップデートしていく必要があります。そこで重要になるのが、やはり収益性です。誰もやっていない領域を誰かにやってもらうのであれば、儲かる仕組み、モデルを行政がつくる。そしてできる会社に渡していく。民間を巻き込んで課題解決を推し進めていく上で、収益性の観点は行政でもますます重要になっていくと私自身は捉えていますし、ここは民間出身者の強みが発揮できる部分だと考えています」

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スタートアップ支援の本質的な価値を創り出していく

続いて伺えたのが、高見さんが現在担当している業務について。大きく3領域を手掛けており、そのミッションは「スタートアップ支援の本質的な価値を創出」だと言える。

チーム全体として広く「神戸市内のスタートアップ支援」を手掛けており、その中でも私は3領域を担っています。まずは市役所の課題を集め、スタートアップとのマッチングによる課題解決プロジェクトとして「Urban Innovation KOBE*」があります。そこでは、庁内から課題ベースで問い合わせが来て、行政的な事情も踏まえた上で、将来的なゴールや具体的な解決策を議論しながら、マイルストーンを設定し、スタートアップと協力して課題解決を進めています。

Urban Innovation KOBE *…スタートアップと市職員が協働で、地域・行政課題の解決に取り組むプロジェクト。2018年に神戸で始まり、今では全国の自治体に同じ取り組みが広がっている。

次に行っているのが、「ひょうご神戸スタートアップファンド*」の担当として、市内のスタートアップ各社の相談に乗っていくというもの。例えば、事業におけるターゲット設定や成長プラン、事業計画をヒアリングし、ファンド責任者にトスアップをしていきます。その会社の成長に伴走するコンサルタントのような立ち位置がイメージしやすいかもしれません。

ひょうご神戸スタートアップファンド*…兵庫県や民間企業などと連携し、スタートアップ企業への投資を行なうファンド。2021年、地域産業の競争力を高め、経済の活性化を目的に設立された。出資総額約11億円。すでにスタートアップ11社に対し、投資を行なっている。

もう一つ重要な取り組みが、スタートアップ支援の本質的な価値を創り出し、そして認知を得ていくことです。民間で成長してきたスタートアップ・エコシステムの形成に、行政がどう貢献できるのか。そしていかに説明責任を果たせるか。いわゆるブランディングやプロモーションもそこに含まれています。

説明責任を果たすことは行政組織として最も重要な役割の一つですが、スタートアップ領域において現状でいえば、決して充分ではないと考えています。例えば行政として、様々な補助金制度などがありますが、あまり知られていない。特にスタートアップは「お金」に関する課題が大きい。創業後の資金調達はもちろん、創業時でも市役所や県庁、行政の外郭団体と言われる公益社団法人などが、様々な補助金を出していることもあまり知られていません。また、法人としての調達でなくても、国の銀行である日本政策金融公庫などの優遇制度を活用し、個人でお金を借りることもできます。ただ、それらを「知らない」というだけで挑戦の芽が摘まれてしまう。格差になってしまうわけです。そういった情報の「溝」があるなかで、何から埋めていくべきか。スタートアップ支援という領域において、考えながら進めていく。よりスムーズに、手間なく、情報にリーチし、取得できる仕組みづくりにも取り組んでいければと思います。

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入職後に感じた市役所内の組織風土・雰囲気について「非常にコミュニケーションを取りやすい環境だと感じます」と語ってくれた高見さん。「神戸市役所で働く職員の傾向として、本質的な価値や正しさを見分ける力に長けた方が多いと感じます。日々議論をしていても、正しく、価値があることであれば、スムーズに受け入れてもらえる。おおらかさ、寛容さ、素直さがある。ここは民間出身の方も馴染みやすいはずです。一方、戸惑う部分でいえば、庁内の誰に何を相談し、決裁を取るのか、非常に複雑であるという点。民間であれば、一つの事業の責任者は一人ですが、そもそも広く社会サービスを提供しているため、一人の責任者が複数の事業を管掌している、もしくは一つの事業を複数人が管掌しているケースもあります。スタートアップ領域でも事業が横断的であることも多く、共に動く部局もその都度変わります。ここは多くの職員の手も借り、情報を得ながら進める必要があると思います」

市民のみなさんが「スタートアップの成長」を応援する循環を

さらに高見さんが目指すのは、行政だからこそできるスタートアップ支援の新たな形・循環の創出だ。

「ユーザーに対して真正面からニーズを拾い上げ、どうあるべきか。どう機能すべきか。行政だからこそできるスタートアップ支援のあり方、形があるのではないかと考えています。日々課題が複雑化、深刻化していくなか、もはや新しいものでしか解決ができないものも多い。そういった難しい時代になってきていると感じています。そういった新しいソリューション、価値を世の中に提供してくれる存在こそ、スタートアップであるはず。まずはスタートアップがどれだけ自分たちの生活に価値を与えてくれるものか。市民の方にも広く知っていただきたい。そうすればより多くの方が、スタートアップを応援してくれるようになるはずですし、応援してくれる人が増え、成長する企業が増えてくるはず。そういった好循環を、神戸市に生み出していければと思います」

そして最後に伺えたのが高見さんご自身の仕事観について。彼にとって仕事とはどういったものなのだろう。

「読んで字のごとく「事に仕えること」だと思っています。好きか嫌いか、やりたいかやりたくないか、そういった個人の価値基準で判断すると、どうしてもなかなか解決されない課題がどんどん増えてしまう。そうではなく、やるべき「事」に「仕」え、課題を解決していく。ここに尽きるのではないでしょうか。ただ、そのためにも「価値ある事」を見極め、「正しく仕える」ことこそが大切。価値があり、正しいことであれば、皆さんから支持をされると思いますし、より重要な取り組みとして広まっていく。それが結果として社会をよりよい方向へと動かしていく。そう信じ、仕事に向き合っていければと思います」

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