INTERVIEW
神戸市役所 | 新産業課 イノベーション専門

神戸市を、世界有数の「スタートアップ都市」に。神戸市が「イノベーション専門官」を募集

掲載日:2021/02/25更新日:2021/11/17

2020年、内閣府のスタートアップ・エコシステム・グローバル拠点に選定された神戸市。同市が目指すのは、世界で戦える起業家、スタートアップの輩出を目指す「起業都市」だ。今回は、そのスタートアップ支援に特化する「イノベーション専門官」の募集。大手自動車メーカーから入庁し、同ポジションを担う西川嘉紀さん(31)に、そのミッションとやりがい、転職ストーリーを伺った。

※既に応募受付は終了しました。

ミッションは、スタートアップ・起業家支援

神戸市を世界有数の「スタートアップ都市」にーー。

アクセラレータープログラム「500 KOBE ACCELERATOR*」をはじめ、イノベーションのエコシステムの構築を加速させているのが、神戸市だ。

その中心的役割を担う「イノベーション専門官」を募集する。今回、まさに同じポジションで活躍する西川嘉紀さん(31)にお話を伺うことができた。もともと彼は大手自動車メーカーで海外営業を主軸に、マーケティングを手がけてきた。

具体的な仕事内容とミッション、大手時代には感じられなかったやりがい、そしてそもそも「なぜ神戸市」だったのかーー詳しく伺った。

500 KOBE ACCELERATOR*…2016年よりシリコンバレー発の世界的なベンチャーキャピタル『500startups』と連携した短期集中型起業家支援プログラム。5年間で88社が参加。半数以上が海外から起業家が参加した。合計約120億円の資金調達に成功している。

神戸市のイノベーション専門官・西川嘉紀さんがソファで話す画像

西川嘉紀さん(31)
2012年4月、大手電子部品・電気機器メーカーに入社し、海外営業を担当。その後、2016年10月、大手自動車メーカーにて、海外営業・マーケティングに従事。2020年4月より神戸市へ。現在、イノベーション専門官として活躍する。

スタートアップ輩出の「土壌構築」を任されるやりがい

まず伺ったのが、イノベーション専門官の仕事内容について。「スタートアップ支援」と言ってもアプローチは多様だ。そのひとつとして、2021年3月に創設予定の県市協調による『官民連携ファンド』がある。

「今まさに立ち上げの真っ最中なのですが、兵庫県、神戸市、VCと連携したファンドの創設を予定しています。飛躍的な成長が期待できるスタートアップを中心に、公的資金と民間資金による資金調達がスムーズに行えるスキームを構築していく、というもの。ひいては地域経済の活性化、市内産業の競争力の向上にもつなげたい。ファンド規模は10億円規模。まだまだスタートラインですが、実績を積み重ねていければと考えています」

そのなかでイノベーション専門官は、VCにも積極的にスタートアップの情報提供を行ない、起業家とファンドの橋渡しとしての役割を担う。

さらに西川さんは、2021年4月開設予定のオープンイノベーション施設『ANCHOR神戸*』の立ち上げも並行する。

「イノベーションの創出を促進する、これが『ANCHOR神戸』の狙い。スタートアップはもちろん、医療産業都市進出企業、ものづくり企業、大学などさまざま「知」が集結・交流していくハブにしていければと考えています。アンカーは「錨」を意味します。時代の変化に臆せず、ぶれない意志でチャレンジする人に、勇気を添える存在でありたい、そんな思いが込められています」

『ANCHOR神戸*』…神戸・三宮に2021年4月完成予定の神戸三宮阪急ビル内に開設予定。会員のイノベーション創出を実現していくため、5種類のプログラムを提供していく。たとえば、社会、企業が抱える課題への解決策に対してビジネス創出を支援する内容や、起業家に必要なスキルを磨く講座、プレスリリース作成の相談などに応じる情報発信支援など。

ANCHOR神戸の説明画像

先にあげた『官民連携ファンド』や『ANCHOR神戸』以外にも、スタートアップと行政が協働する「Urban Innovation Kobe」や、国連プロジェクトサービス機関(UNOPS)のスタートアップインキュベーション施設「UNOPS GIC JAPAN」などにも携わっていく可能性がある。まさに「イノベーション」を専門とするポジションだ。

そういったなか、西川さんが入庁1年目に携わったプロジェクトで感じた、大きなやりがいについて伺えた。

「私が入庁したのは2020年4月。入庁すぐにコロナ禍になり、与えられたミッションは、スタートアップと連携し、新型コロナ対策を講じることでした」

プロジェクトは「ストップCOVID-19×テクノロジー」と銘打たれた。

「同プロジェクトを、入庁間もない私と、もう一人の専門官、2名で担当することになりました。新型コロナウィルスの引き起こす諸問題をテクノロジーの力で解決する。そういったスタートアップ企業を神戸市としてバックアップしていく、という取り組みです」

神戸市にとっても、スタートアップにとっても、さらに西川さんにとっても、大きな意義のあるプロジェクトだったと振り返る。

「まずコロナ禍によって、スタートアップが直面した最大の問題は、事業を採用してくれるところが圧倒的に減ってしまったこと。彼らのためにも事業機会・営業機会を創出する必要がありました。また、神戸市としてもテクノロジーを活用した新型コロナ対策は重要な課題。具体的には、スタートアップからアイデアを募集し、神戸市役所内における所管課と一緒に解決していくことになりました」

緊急性を鑑みて、同審査はオンラインで2営業日以内に完了。実験に協力する部署との調整は約1週間以内、実装については最短で即日。圧倒的なスピード感で同プロジェクトは進められた。

「短期間で180社以上から応募をいただくことができました。毎日2人で10社ずつくらいスタートアップの方々と面談しました。かなり大変でしたが、私にとっても非常に貴重な経験になりました。スタートアップの方々と話すなか、短期間で数多くのビジネスモデルに触れることができました。また、素朴な疑問、直球の質問が喜ばれることがあるなど、コミュニケーションの仕方も見えてきて。同時に、自分たち行政が抱える課題も知ることができた。入庁したばかりの私にとって、スタートアップのことも、神戸市のことも、両方理解できる最短のルートでしたね」

▼「ストップCOVID-19×テクノロジー」からスタートした2つの施策、いずれも事業継続中となっている。

ストップCOVID-19×テクノロジーの説明画像1

街の回遊性をデータで分析する実証実験を進行中。スタートアップGroovenautsは、神戸市が公開している駅の利用など街でとったオープンデータと、企業の持つデータを掛け合わせて分析するサービスを提供している。例えば、クレジットカード会社が持つ購買統計データや、自動車メーカーが持つ車の移動履歴データと、神戸市のオープンデータとを掛け合わせることでエリア・時間ごとの混雑状況が見えてくる。市政としてどうすれば密を回避できるか施策が打てるようになる。

ストップCOVID-19×テクノロジーの説明画像2

日本のミドル~シニア層と、海外で日本語を学ぶ若者とをつなげるアプリ「Sail」。コロナ禍、外出自粛で休止した神戸の日本語教室の外国人受講者と、対面でのコミュニケーション機会を制限され孤立化する神戸のシニアとを「Sail」でつなぎ、日本語で交流する場を提供する実証実験が行われている。最初は3ヶ月限定で実証実験をしたところ、メディアでも取り上げられ、すでに8カ月ほど継続中。新産業課への問合せも絶えない。

大手自動車メーカーから神戸市へ。活かせた能力とぶつかった壁

続いて伺えたのが、そもそも西川さんは、なぜ「神戸市」を新たなステージとして選択したのか。前職は大手自動車メーカーのマーケター。しかもグローバル担当と花形のポジションとしても申し分なかったはずだ。

「前職も仕事自体は面白かったのですが、全体のサプライチェーンのなかで、自分が担っているのはラストワンマイル。事業全体を見られるような仕事にずっと興味がありました。また、大手メーカー2社を経験し、意思決定のスピードが遅い部分が気になっていて。スピード感のある環境に身を置きたかったので、スタートアップは候補としてありました。ただ、リスクも付きものだな…と思っていた、そんなときに神戸市の募集をみつけたんです。面接に行ってみると、面接官からは「市長と距離が近いのであなたがやりたいと思ったことは基本的に話を通す自信があります」と言われた。実際、話からもスピーディーに物事を進められているように見えた。これは面白いなと思いました」

こうして神戸市へと入庁した西川さん。前職時代から活かせた経験とは?

「ファシリテーション、調整能力は非常に活かせた部分だと思います。スタートアップと行政では、捉え方、理解、情報にギャップがあることも多い。その溝を埋めたり、相互理解を深めるために間に入ったり。まさにこういった調整役は、前職時代に経験した海外事業者との折衝、調整が活きていると思います。たとえば、コミュニケーションの上でもお互いが言わんとしていることを噛み砕き、翻訳して伝えていく。スタートアップのみなさんも、意外と自分たちの事業における価値など言語化ができていないことも多い。行政や市民のみなさんにとってわかりにくい場合もある。こうしたギャップを埋めるために仕立て直す場面など、マーケター時代の仕事と似ていると思います」

併せて民間出身であるがゆえに戸惑った部分、ぶつかった壁についても率直な部分が伺えた。

「前職は、ビジネス・事業としてやっていたので優先的に考えるのは収益や採算など。ただ、公的機関で働く、ということは「公平性・公益性」を優先して考えていく。ここが大きく異なる部分でした。たとえば、収益性だけでみれば可能性を感じるスタートアップがあったとしても、それは公益性に反していないか。また、特定の事業者に対して肩入れをしすぎていないか。こういった部分にはシビアさを感じましたね。特定の事業者と連携する場合にも、根拠を明示し、説明責任を果たす。そういった観点は、民間出身の私には欠けていた部分でした」

さらに磨いていきたい能力について伺うと「全体を俯瞰的にみて、効果的にPRしていくビジネスプロデューサーのような素養」と西川さん。

「新産業課として自身でも積極的に発信し、インパクトが出せるよう仕掛けたい。私の今後の課題でもあります」

神戸市のイノベーション専門官・西川嘉紀さんが絵の前で話す画像

若い人たちが、活躍できる「場」を創出したい

最後に伺えたのが、スタートアップ輩出の先にある「未来」、そして西川さんの思いについて。

「神戸市として、新たな産業が生まれれば、若者の活躍の場、雇用も生まれていく。その前例となるような都市を、私自身も目指したいと考えています」

いかに神戸というまちを活性化させていくか。スタートアップ輩出が、その未来へと直結していく。

「多くの自治体と同様、神戸市も若年層の人口流出は大きな課題のひとつ。若者が神戸市にいたいと思えるまちにしたい。そのために「おもしろい職」を増やしたい。私自身にしても数年後、さらに大きなミッション、スケールの大きな仕事に神戸市で携われるようになっていたいと思います」

神戸市のイノベーション専門官・西川嘉紀さんの右横顔
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