三井物産と英国データ解析大手・ダンハンビーの合弁会社として設立された「ダンハンビー・三井物産カスタマーサイエンス(以下、dmcs)」。日本の小売市場を熟知する総合商社との強みと、25ヵ国以上で展開しカスタマーデータの分析サービスを提供してきた強みを掛け合わせることで、日本のデータビジネスの変革に挑む。今回は、2023年4月に入社しコンサルタントとして働く廣瀬 優さん(25)を取材。彼女のストーリーを通し同社で働く魅力に迫る。
ダンハンビーと三井物産の関係性
ダンハンビーは1989年に英国で創業。25 ヵ国以上の世界有数の小売業者および日用品メーカーにデータサイエンスを提供している。ダンハンビー本国のクライアント群には、マクドナルド、ネスレ、ダノン、コカ・コーラ、ロレアル、レッドブルなど。日本進出にあたり、日本市場に精通する三井物産とタッグを組み、ダンハンビー・三井物産カスタマーサイエンスを設立。まずは、主に大手小売企業や消費材メーカーに向けてサービス展開を行い、中小の小売企業や他業種にも広げていく戦略だ。現在、日本国内においては大手飲料、食品メーカーなどとの取引実績がある。
※2018年、三井物産は小売店向けにビッグデータを活用した顧客の購買分析サービスを開始。それに伴い、カスタマーデータサイエンスの分野において世界をリードしてきたダンハンビーのノウハウを国内で独占的に提供できる契約を締結した。
販売員を経て芽生えた「カスタマーデータ」への興味
まずは、入社動機から伺ってよろしいでしょうか?
ものが売れる仕組みをデータから見ることができる。それも、30年以上も小売りに特化したデータ分析を行うダンハンビーと、日本を代表する三井物産のネットワークを活用できるdmcsであれば、私自身、成長できる環境なのではないかと思いました。
もともと前職では、百貨店の食料品専門店で販売員として働いていました。商品の発注・仕入れなどを行うなかでは、経験や勘に頼る部分が多かったように思います。ただ、ある時インバウンド需要などを読み切れずに欠品を発生させてしまったことがあり、店頭での肌感覚だけではわからないことがあると痛感しました。そして、どの商品がどのようなお客様に買われているのか、データから見てみたい。そしてデータで見ることができれば、来店したお客様により良い購買体験につなげられるはずだと思いました。私自身はもともとデータ分析などの知見は全くなかったのですが、挑戦してみたいと思いました。
また、あらゆる国籍のスタッフと働ける点も魅力的でした。dmcsには、イギリス、ドイツ、アメリカ、フィリピン、中国、ロシアなど多様な国の出身者が在籍しており、日常的に英語が飛び交う環境。実際入社してから、多様なカルチャーや考え方にふれることができ、視野が広がっていると感じています。
廣瀬 優
1998年生まれ。2021年、新卒で株式会社明治屋に入社。小売事業本部にて、商品発注、品出し等管理全般、顧客対応などに従事。2023年4月にダンハンビー・三井物産カスタマーサイエンスに中途入社。コンサルティング部にてコンサルタントとして働く。
ロイヤルカスタマーの離脱防止、値上げの意思決定支援も
コンサルタントとして働かれていると伺いました。具体的には、どういった役割を担っているのでしょうか?
dmcsでは、三井物産のネットワークを活用しながらダンハンビーの解析ツールを日本国内のマーケットに展開していこうとしています。
組織としては、大きく「データ分析部門」と「コンサルティング部門」があり、私は後者に所属しています。特に小売の大手クライアントを中心に担当しています。
より具体的に言えば、ツールでの分析方法のレクチャーはもちろん、小売店のマーチャンダイザーさんから相談を受けた内容に対して分析してご提案していく。販促の検証、新商品の分析、品揃えの分析などを行うことが多いです。
また、それらの小売店のデータをメーカーさんに対して販売もしています。メーカーさんに新商品の売れ行き、新規顧客の獲得率、販促キャンペーンからの反響などをお伝えすることもあります。
働かれるなかで、どんな部分にやりがいを感じられますか?
エンドユーザーの購買体験向上につながるような提案ができたときですね。
たとえば、小売店のマーチャンダイザーさんから、「メーカーA社のあるカテゴリーの売上が振るわないため商品カットを検討している」といったご相談があったとき。
データで見てみると、確かにその商品は他商品と比べると売上総額は高くはありませんでした。ただ、来店頻度が高い、且つ一定額を使っているお客様=ロイヤルカスタマーからのリピート率は高い商品だとわかりました。つまり、もし商品をカットしてしまったら、ロイヤルカスタマーは離れてしまう可能性がある。そうした懸念をマーチャンダイザーさんにお伝えしたところ、クライアントは商品を残す判断をされました。
ほかにも、最近では値上げの意思決定支援を行うことも多いです。
直近の物価高の影響をうけ、多くの店で、値上げはせず容量を減らす“ステルス値上げ”を行うケースが増えています。同時に、エンドユーザーにとっては「買ったけどガッカリした」という体験も増え、客離れにつながっています。クライアントのなかには、容量はそのままに潔く値上げしたことで客足が戻った例もあり、そういった成功事例をお伝えすることもあります。
私自身、お買い物をすることが大好きなので、エンドユーザーとしての視点を率直にお伝えすることは意識していますね。どの企業様も若年層の顧客獲得は課題としてあられるので、Z世代の一人としてクライアントからのご質問にお答えすることも多いです。提案だけでなく、普段のコミュニケーションの1つひとつが、結果的にお客様の体験向上、ひいては小売店やメーカーの売上向上につながればという思いですね。
未経験からデータマーケティングの世界に飛び込んだ廣瀬さん。入社後は、実践を重ねダンハンビーのツールを用いた分析を身につけ、入社3ヵ月目には三井物産の社員に向けたツール研修を1人で担当。「入社から間もなく、人に教える側になる機会をいただけたことが、私のデータ分析スキル向上にかなり大きな影響を与えたと思います。私自身も任せてもらえたことが自信につながりました。少数精鋭の組織でベンチャーに近い部分もあるので、裁量をもって進められる点も働く魅力の1つだと思います」
普段の買い物を、少し体温が上がるような体験に
入社されてから現在までを振り返ったとき、ご自身としてどういったときに成長や変化を実感されますか?
dmcsに入社して数ヵ月ですが、毎日が発見と勉強の連続です。購買データを見ることができるようになって、世の中の動き、トレンドなどこれまで漠然としていたモノに対しての解像度が高まってきたように思います。また、お客様とお話するなかでは商品開発のこだわりなどにも触れることができ、新たな知識が得られる。非常に刺激的で、自分の世界が広がったような感覚がありますね。
最後に、今後の目標があれば教えてください。
より多くのお客様の購買体験の質の向上に貢献していきたいと思っています。
どうなれば購買体験の質が上がるのかは人によって異なると思うので一概には言えませんが、ひも解いていくと「いつも購入する商品が当たり前にある」「種類が豊富に揃っている」「適正な価格で販売されている」「見たことのない面白い商品がある」といった1つひとつの要素が大事になってくると思います。
それらの要素を揃える支援をしていくことで、「豚肉がお買い得になっている」「初めての商品だけど試してみようかな」といったワクワクを日常に生み出したい。普段のお買い物が少し体温が上がるような体験にできたら嬉しいですね。