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社会を支える頭脳集団「シンクタンク」

積極採用中「シンクタンク」で働く求人特集

掲載日:2023/12/14更新日:2023/12/14
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今回は、政治や社会を支える“頭脳集団”、シンクタンク業界に注目。シンクタンクが果たす役割、提供する価値とは。そして活躍する人材の特徴とは。AMBI編集部でセレクトした求人とあわせて見ていこう。 

社会を支える頭脳集団「シンクタンク」 

そもそもシンクタンクとは、政治・経済・科学技術など、特定分野を調査・研究し、その結果の公表や解決策の提言を行なう研究機関の呼称とされている。語源は英語の「Think Tank」。「think」には俗語で「頭脳」という意味があり、日本では「頭脳集団」とも訳される。

具体的には、下記のような特徴を持つ組織として知られている。 

・政策形成および社会問題の解決が組織の目的 
・幅広い分野の専門家によって構成される研究機関 
 例)政治、経済、科学技術… 
・高度な専門知識を用いて特定のテーマを調査/分析/研究する 
・結果に基づく政策立案と提言を行ない、報酬を得る 

研究機関としての組織形態のため、日本では、「○○研究所」という名前が付いているのも特徴的だ。政策の提言も手掛けることも多く、中立、客観的な情報提供が求められる。そのため、信頼度が高い独立機関として運営されている。 

「政府系シンクタンク」と「民間系シンクタンク」

続いて、シンクタンクにはどのような種類、分類があるのか見ていこう。一般的には「政府系」と「民間系」に分けて認識されることが多い。

まず「政府系シンクタンク」とは、各省庁など、行政組織に所属する組織として、政策に関する調査・提言を担う非営利組織を指す。政策決定過程における重要な役割であり、収集・分析した情報は、省庁が公開している白書・ロードマップなどの作成に用いられる。

自治体や官公庁といった行政組織は、資源利用や教育システム、保険制度など、範囲や規模が大きく、専門的な研究が必要になったとき、シンクタンクに調査・分析等を依頼。 例えば、内閣府は、政策決定の理論的な裏付けをとる目的で、所属の経済社会総合研究所に対し、GDP統計や消費者・企業の景気動向の統計などを依頼している。他にも、財務省に代わって図書館の運営、統計調査の実施、職員の研修等を担う財務総合政策研究所があるなど、シンクタンクと行政は、分析者とプレイヤーとしての役割が異なると言える。 

代表的な組織には経済社会総合研究所、経済産業研究所、日本国際問題研究所、防衛研究所などが挙げられる。優れた活動実績を残したシンクタンクに与えられる「シンクタンク・オブ・ザ・イヤー」の2020年版では、アジアで初めて日本国際問題研究所が選ばれた。英語等での対外発信が評価された。 

一方、民間系シンクタンクとは、政府系組織および民間企業からの依頼や資金提供で業務を行う営利組織を指す。政府系とは異なり、民間企業が運営している場合が多い。企業のプロダクトに対する消費者の評価を調査・分析する事例や、経営課題・社内課題に対するコンサルティング業務、システムの研究・開発・運用や、市場の見通し・データ分析といった調査研究資料の公開で利益を得ていくビジネスモデルが見受けられる。企業例では、みずほリサーチ&テクノロジーズ、三菱UFJリサーチ&コンサルティングといったメガバンク系のほか、野村総合研究所、大和総研などの証券系、浜銀総合研究所といった地銀系企業がある。金融機関が設立母体であるケースが多いことから、金融機関系として括られることもある。 

シンクタンクとコンサルティングファームとの違い

提言を行なう点ではコンサルティングの要素も含むが、シンクタンクとコンサルティングファームと両者には、どのような違いがあるのか、ここでは見ていこう。

▼役割の違い 
シンクタンクは、政策形成や社会問題の解決を目的に、ある特定の事柄に関する調査及びデータ分析を役割として担う。一方、コンサルティングファームは、企業や部門の経営課題の解決が目的で、そのために必要な戦略の提案及び実行をその役割として活動する。まとめると、シンクタンクはデータ収集と提供を、コンサルティングファームは企業の経営課題解決を担っていると言える。 

▼提供サービスの違い 
シンクタンクが提供するのは、顧客が求めた領域に関する専門性の高い研究・調査・分析の結果とそのレポートだ。特定の分野についての広範な知識とも言い換えられる。一方のコンサルティングファームは、企業の経営課題に対し、業務プロセスの改善や戦略の立案、実行支援などの具体的なアドバイスとサポートを行なう。まとめると、シンクタンクはある専門分野についての調査研究結果を、コンサルティングファームは実用的なビジネスソリューションの提供を主としていく。 

▼求められるスキルの違い
専門家の頭脳集団であり、中立的立場を重視するシンクタンクでは、専門性・客観性といった能力は必須。コンサルティングファームに必要なのは、発想力や課題発見力といった課題解決の力だ。ただ、どちらの業務にも分析や言語化が必要なため、論理的思考力が求められる点では共通しているが、解決していく課題の性質やレイヤーの違いがあると言えるだろう。行政組織自体が研究や分析を担うこともあるが、その行政を顧客とし、政策に対して提言を行なうのが政府系シンクタンクだ。 

日本のシンクタンクの歴史 

最後に、日本におけるシンクタンクの歴史について触れておこう。シンクタンクの語源は英語、つまり欧米で生まれた概念。日本では過去に6回シンクタンクの設立ブームがあり、高度経済成長の終盤である1970年が「シンクタンク元年」とされている。この頃、国内初の本格的なシンクタンクとして創設されたのが、現在も国内最大規模を誇る「野村総合研究所」だ。同所に続いて、社会工学研究所や三菱総合研究所、未来工学研究所なども設立された。 

当時の国内におけるシンクタンクの目的は、社会に新しいアイディアを提示することだったが、1990年代に突入し、政治改革の機運が高まったことで、政策の改変に連動した研究およびコンサルティングに領域が広がっていった。その後、金融・生保系、地銀系、自治体系、事業系、政党系の設立ブームがあったが、2010年代後半に入るとその流れは沈静化している。国内には現在200以上の機関が存在し、日々社会問題や政策改変に向き合っているのである。 

シンクタンクで求められる人材 

一般に、シンクタンクの仕事はプロジェクトベースで行われ、コンサルタント・リサーチャー(準研究員)・シニアコンサルタント(研究員)・シニアマネージャー・マネージャー(副主任研究員)・プリンシパル・ディレクター(主任研究員)といった役職でチームを組み、遂行していく。 一連の流れは以下の通りだ。 

(1)営業による案件獲得  

(2)プロジェクト計画営業で案件を獲得したら、プロジェクトの実施方法を計画する。計画においては、クライアントの課題解決のためには何を調査し、誰にヒアリングする必要があるかを適切に、丁寧に整理することが重要だ。 

(3)プロジェクト遂行・納品 プロジェクトを遂行する。計画に沿った調査やヒアリングなどを行い、データを精査・整理していく。調査方法は様々だが、政府系シンクタンクにおいては海外調査が多い。日本の政策は海外事例を参考にするケースが多いためだ。現地視察やヒアリングで、情報を収集する。 一般的に、シンクタンクの納品物は報告書だ。プロジェクトの実施結果は、最終的に報告書としてまとめる。繁忙期の文章量は毎週修士論文を執筆している程度になるため、高い文章能力が求められる。 

シンクタンクの組織に属するためには、専門的な知識・研究能力・文章力・論理的思考力といった多岐に渡るスキルが必要だ。同時に、経済学者、社会学者、国際関係の専門家、科学者、政治学者など、専門領域も広く、多様な人材に活躍の場があるとも言える。

専門性の高いスキルをはじめ、分析力や洞察力、論理的思考力なども求められるシンクタンク。日本を動かす各省庁の政策、そして企業経営やビジネスを支える存在として働く。これからの日本を支える“頭脳”として、キャリアの選択肢になるはずだ。

参考
NIKKEI COMPASS
https://www.nikkei.com/compass/industry_s/0949
シンクタンクとは? 国内外の興味深い調査実績を、過去記事を参考に紹介する(日経ビジネス)
https://business.nikkei.com/atcl/gen/19/00081/031700158/

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