INTERVIEW
まちづくり会社|FoundingBase

都会のベンチャーを辞め、福井県美浜町へ移住。“まちの一員”として地域の未来をつくる、27歳の挑戦

掲載日:2026/09/29NEW更新日:2026/09/29
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全国30の自治体と連携し、まちづくりに関する事業を展開するFoundingBase。今回は、2021年に入社し、福井県美浜町に移住して働く安重春奈さん(取材当時27歳)を取材した。もともと都内のベンチャーで働いていた彼女は、なぜFoundingBaseへの入社を決めたのか。そこには、「地域の現場に身を置き、現地の人々と直接関わりながら地域創生に関わりたい」という思いがあった。

株式会社FoundingBaseについて

「地域の豊かさをUPDATEする」をミッションに掲げる会社。2014年の創業以来、自らを「まちづくり会社」と定義し、自治体や地域住民、地域事業者と地域価値の共創に取り組む。社員自らが地域へ移住し、土地の課題を「自分ごと」として捉えながら価値を共創していく――。この姿勢を創業時から大切にしてきた。まちづくりの方針は「地域資源の価値化」。すでにその地にある地域資源の魅力を高め、その魅力を価値と感じる人々に届けることだ。価値づくりと情報流通によって、人々の中に「地域に訪れる」「地域と関わる」「地域で暮らす」という選択肢を生み出していく。2026年9月現在、全国30の地域で合計49の各種事業を展開している。

<主な事業>

・シティプロモーション
愛着形成 / 住民一人ひとりが主体的にまちと関わることを通じて、まちへの愛着を育み、まちが“ワンチーム”となることを目指す。

・スペース運営事業
地域の課題を資源と捉え、新たな機会としてまちの内外へ周知。機会提供を積み重ねることにより、まちへの期待値を高める。

・教育事業
行政、社会教育、学校教育支援を通じ、主体性や課題解決力などを育む地域の教育システムを共創。次世代の人材育成を推進する。

・観光事業
地域資源を活かした施設運営を行います。その地ならではの魅力を軸に、地域と共に持続可能な事業運営を実現する。

・道の駅事業
地域産品の流通拡大を目的とし、道の駅を軸に加工品開発やふるさと納税で販路を拡大。産品流通のハブとして地域経済の循環を創出する。

・採用支援事業
自治体採用を募集から定着まで一貫支援。戦略的スカウトと現場目線のフォローで、地域を動かす人材基盤を構築する。

「地域の人々と向き合い、課題の根本に迫りたかった」

山口県で生まれ育ち、学生時代から「地域創生」への関心が強かった安重さん。1社目は、都内のベンチャー企業の地域創生関連部署にて、地域の宿泊事業者に向けた採用支援を担当していた。まずは、転職を考えたきっかけから伺った。

前職は、全国の求職者と地域の宿泊施設とつなぐ採用支援の仕事に携わっていました。人手不足に悩む施設と、働く場所を探す方の双方に価値を届けられる仕事でした。一方で、求職者の方に「ここで働きたい」と思ってもらうためには、職場そのものの魅力を高めたり、その背景にある課題に目を向けたりすることが大切だと考えるようになったんです。

そのためには、地域に足を運び、そこで働く方々と対話をしながら、同じ目線で向き合いたい。そうした思いから退職し、その後5ヶ月間、旅をしたり友人と話をしたりしながら、これからの自分について見つめ直しました。そして、「東京から地方に関わるやり方には限界があるから移住をしたい」「教育を通じて地域に貢献したい」という、2つの軸に辿り着きました。

私が「教育」に関心を持った原点は、高校2年生のときの経験にあります。初めて東京に訪れ、学生イベントに参加した際、地方と東京では、学びや挑戦の機会に差があることを痛感したんです。同じことに興味を持っていても、都会の高校生は大人のサポートを受けながら、学生団体を立ち上げたり、フィールドワークに取り組んだりしていました。机に向かって勉強をしていただけだった当時の私は、「高校生ってここまでやっていいんだ」と衝撃を受けると同時に、「そんな方法があると、もっと早く知りたかった」という悔しさも感じたんです。

地域に住む子どもたちの多くが、私のように、新たな可能性や機会に気づけない状態のまま、大人になっていくのだとすれば、それは大きな課題なのではないか。この課題に取り組まずに人生を終えたら、きっと後悔する。そう思いました。

そうした中、たまたま大学時代の先輩のSNS投稿をきっかけに、FoundingBaseを知りました。山口県美祢市の公設塾※の立ち上げメンバーを募集しているという内容でした。興味を持ち調べてみると、FoundingBaseは、まちづくりの一環として「教育」にも取り組んでいることがわかり、自分の挑戦したいことと重なっていたんです。選考でも、自分の考え方とフィットしている感覚があり、現場で地域の方々と直接関わり仕事を進めていける環境にも惹かれ、ご縁があって入社しました。

※公設塾…地域を舞台にした実践的な探究活動や課外活動の場。

インタビューカット07

安重春奈さん
都内のベンチャーを経て、2021年10月にFoundingBaseに入社。入社後、地元でもある山口県美祢市に移住し、公設塾運営プロジェクトに従事。2024年11月より、福井県美浜町へ移住。地域デザイン部 リーダーとして、福井県美浜町のプロジェクトと、京都府宮津市のプロジェクトを兼務。2026年4月より、地域デザイン部 マネージャーに。

福井県美浜町のプロジェクトについて
福井県美浜町では、少子高齢化や若者流出により、約35年後には総人口は半減すると推定されている。この課題に対し、2022年度より「人づくり」「空間づくり」「コンテンツづくり」の3本柱の施策を中心とした、「みはまシナプスプロジェクト」が始動。脳のシナプスのように、人と人が繋がり、ひらめきの連鎖によってまちのにぎわいが広がっていく姿を目指している。FoundingBaseは、主に「人づくり」の領域を担当し、2023年に小中学生向けの公設塾「放課後教室サン」と、2024年に高校生向けの「学びコミュニティKai」を設立。学校教育と連携しながら、探究型の学びを通じて、まちの担い手を育むコンテンツを展開する。現在は、約100名の子どもたちが通っている。

まちへの愛着を育み、関係人口を増やす

入社以来、3つの自治体での「公設塾」運営に関わってきた安重さん。特に働くうえで感じる「仕事のやりがい」を尋ねると、福島県美浜町で出会った、ある高校生のエピソードを交えて話してくれた。

学校では生徒会長を務めるなど課外活動に力を入れながら、毎日のように「学びコミュニティKai」に通い、様々な活動に取り組んでいた高校生がいました。彼女が、高校を卒業するとき、こう話してくれたんです。

「Kaiでの経験があったから、もっと美浜町が好きになった。絶対に、将来もこのまちに関わる大人になりたい」と。

2026年に弊社として大学生も関われる仕組みをつくったのですが、彼女は実際大学生になった今も、週3~4回のペースで通ってくれています。美浜町が目指してきたことを体現してくれている彼女の姿を見ると、「自分たちが信じてやってきたことが間違っていなかった」と感じます。それが、大きなやりがいにつながっていますね。

彼女をそこまで動かしたものは何だったのか考えてみると、おそらく「学ぶ側」から「地域を支える側」になる経験だったのではないかと考えています。

それまで彼女が経験してきた課外活動は、同じ世代の中にある、限られた社会での活動でした。一方、「学びコミュニティKai」では、私たちスタッフや自治体の方々、地域の子どもたちやその保護者など、さまざまな人と接点を持つことができます。

学校の外にある、生活圏全体としての社会、つまり地域の中で、自分が誰かに必要とされ、感謝される経験。実際に物事が進んでいく中で感じる、「まちを動かしている」という手応え。それが、彼女にとって1番面白かったのではないかと考えています。

彼女は「こんな経験は、美浜やからできるんやで」と、口癖のように言っていました。他の地域で過ごした経験があるからこそ、「学びコミュニティKai」でできることの意味や価値を、より多角的に感じていたのではないかと思います。

学校の様子05

1つの拠点あたり、最大10名ほどのメンバーが在籍。他拠点のメンバーとも、オンラインでのナレッジ共有は盛んに行なわれている。「拠点横断でプロジェクトを進めて、共通している課題に関しては一緒に進めることもあります」と安重さん。

「移住」が生む、「運命を共にする」つながり

地方創生ベンチャーのなかには、都市部に拠点を置き、定期的に地域へ足を運びながら自治体や地域の方々と関係を築くスタイルもある。一方、FoundingBaseでは、社員の9割近くが地域に「移住し、暮らしながら地域づくりに関わっている。移住して働く魅力について聞いた。

やはり、知らない土地の自然や文化に触れられることは魅力だと思います。今住んでいる福井県美浜町は、海や里山の豊かな自然に囲まれた場所。もともと自然が好きなので、休みの日は仲間と山に登ったり、地域のマラソンに参加するなど、この土地ならではの経験を満喫しています。

また、“まちの一員”として地域で生活しているからこそ、役場の方々からも、「ゲスト・来訪者」ではなく、このまちで運命を共にする存在として受け入れていただいているように感じられることも、移住ならではです。

たとえば、地域で起きた出来事や課題について話すときも、背景や前提を一から説明する必要がありません。共通の体験や認識があるからこそ、すぐに本題に入れる。だからこそ役場の方々も、一緒に暮らしているこの町の未来をどうしていくか、腹を割って話してもらいやすいと感じています。

前職時代、外野から一方的にアドバイスをしているような違和感を抱いていた私にとって、ここでは課題や変化を身近に感じながら取り組める。非常に手触り感がありますし、まさにやりたかったことができています。

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まちの一員として暮らすからこそ、地域の人々との距離は近い。空き家を借りて住み、草刈り作業や地域内での飲み会に日常的に参加するメンバーもいるという。

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安重さんの転職前後での働きがいを示すグラフ。「嘘のようなグラフになってしまいましたが、本心です」と安重さん。

一つの地域で得た学びを、次の地域へ

取材終盤、安重さんの現在地と、今後実現したいことについて伺った。

入社後に担当した山口県美祢市のプロジェクトでは、公設塾を通じて生徒の成長を支える経験を積みました。現在担当する福井県美浜町では、その経験を活かし、生徒の成長の先にある、まちの未来までを見据えて取り組んでいます。

そうした経験を踏まえた今、次に挑戦したいのは、これまでの成功モデルを他の自治体のまちづくりにも活かせる形にし、実装・検証していくことです。京都府宮津市などの担当地域ではすでに取り組みを進めています。

さらに2026年4月からは、教育に加えて、スペース運営やシティプロモーションなどの領域も管轄することになりました。特定の手法に固執せず、地域に応じた幅広いアプローチで成果を生み出し、様々な地域へ展開・波及させていきたいです。

最後に、安重さんにとって「仕事」とはーー。

仕事とは、ここまでつないでもらった命を全うするための、1つの手段だと捉えています。前職時代までの私は、「自分の力で問題を解決したい」と意気込んでいました。今振り返ると、どこか上から目線で、おこがましい部分もあったと感じます。今は、自分の経験を、いかに社会へ還元していくかが大切だと考えています。全国の自治体を変えることできなくても、1つでも多くの地域に成功モデルを広げていきたいです。

私が「まちづくり」にこだわるのは、両親の影響も大きいと思います。両親は昔から地域活動に参加し、特に父は海外の方との交流を楽しんでいました。田舎の実家にも、世界中から人々が訪れていました。「田舎でも、自由にやりたいことを楽しみながら暮らせる」と教えてくれたのが両親です。

おかげさまで地元への愛着を強く持って育ち、今の仕事にもつながっている。両親から受け継いだ、「地域を楽しみながら生きる姿勢」は、これからも大切にしていきたいです。

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