小嶋陽菜氏が代表取締役CCOを務める株式会社heart relation。今回は、同社が展開するライフスタイルブランド『Her lip to』のビューティライン『Her lip to BEAUTY』で商品開発を担う神之田有紗さんに取材した。大手消費財メーカーでのキャリアを捨て、彼女はなぜ転職を決意したのか。そこには、「必死に自分を育ててくれた母のように毎日を懸命に生きる女性たちに、“自分を労わる時間”や“癒し”を届けたい」という、幼い頃からの変わらぬ想いがあった。
株式会社heart relation
2020年に設立された、小嶋陽菜氏がCCOを務めるライフスタイルブランドカンパニー。アパレルブランド『Her lip to』を主軸に、2022年にはボディケア・フレグランス等を取り扱うビューティライン『Her lip to BEAUTY』を始動。デザイン、EC、SNS運用、顧客体験まで一貫した世界観を構築しているのが特徴だ。SNSとECを融合させ、共感と憧れを軸にしたマーケティング戦略により、Z世代・ミレニアル世代の女性たちから高い支持を獲得している。2024年にはSNSマーケティングを強みに複数のアパレルブランドを展開する株式会社yutoriと資本業務提携を締結。2026年4月には同社の100%子会社となり、グループ経営のスピードを加速させるとともに、クリエイティブとブランド価値の両立を追求しながらさらなる成長を目指す。
組織について
社員のバックグラウンドは、メーカー、メディア、IT、アパレルなど様々。小嶋陽菜氏とメンバーとの距離は非常に近く、『Her lip to BEAUTY』をはじめとする各プロジェクトにおいて、小嶋氏とメンバーが常に直接対話を重ねながらブランドを作り上げている。


小嶋陽菜さんがブランドを立ち上げたことは知っていたものの、自身ではアイテムを手に取った経験はなく、「自分はメインターゲットではないかなと、少し遠くから眺めていました」と話す神之田さん。そこから一転、heart relationへの入社に至った背景には何があったのか。
アンビ(AMBI)経由でのスカウトをきっかけに興味を持ち、会社やサービスについて調べるなかで、『Her lip to BEAUTY』が掲げる「Self Care=Self Love」というコンセプトを知りました。触れていたくなる肌、そして好きな香りを纏うことを大切にする姿勢に強く共感し、まさに自分がやりたいことを体現しているブランドだと感じたんです。
そう感じた背景には、母の存在があります。小さい頃から、自分のことは後回しにして懸命に私たちを育ててくれる母の姿を見てきました。尊敬を抱く一方で、疲れた様子を見るたびに「もっと自分を大切にして欲しい」という複雑な気持ちを抱いていたんです。そんな経験から、家庭でも社会でも頑張り続ける女性たちに、“自分を労わる時間”や“癒し”を届け、心を前向きにするような仕事に就くことが、私の軸になりました。
加えて、私自身の経験も大きいですね。社会に出て働き始めると、多忙な日々に追われ、自分を疎かにしてしまうことがありました。そんなとき、ハンドクリームや香水などを纏いフワッといい香りがすると、気持ちがリフレッシュして、前向きな気持ちになれたんです。母への想いや、そうした自身の体験があったからこそ、『Her lip to BEAUTY』のコンセプトが何の違和感もなく、スッと腑に落ちたのだと思います。
前職の大手消費財メーカーでは、マスクの商品開発を4年、最後の1年は新規事業開発に携わり、やりがいも感じていました。一方で、入社当初から希望していた、「“自分を労わる時間”や“癒し”を届けるような商品に関わる機会には恵まれませんでした。そういった意味で、今回の転職は改めて「本当にやりたかったこと」と真っ直ぐに向き合う大事な時間でもあったと思います。
大手消費財メーカーでのキャリアを捨てることに、迷いや躊躇はなかったのか。当時の心境を率直に語ってくれた。
正直、迷いはありました。商品開発の基礎を叩き込んでくれた会社ですし、商品やサービスへの愛着もあります。大手ゆえ「このまま行けば安泰だろうな」とも思っていました。
一方、転職を意識するようになった背景には、当時の環境への葛藤がありました。いわゆる古き良き日本企業なので、物事を進める上では何段階もの社内調整に追われ、もどかしく感じることも少なくありませんでした。特に新規事業を担った最後の1年は、社内の決裁を待つ間に、競合他社に先を越され、類似商品を出されてしまうという悔しい経験もして。「もっとクイックに意思決定ができる環境で働いてみたい」という思いが、次第に強くなっていったんです。
その点、heart relationは勢いのあるベンチャーで、スピード感があります。また、前職は低価格帯の生活必需品だったのに対し、ここでは機能的価値に加え情緒的価値を重視した高価格帯の商品を展開しています。会社の環境、商品の性質、その全てが真逆でした。調べれば調べるほど「ここなら商品企画として新しい挑戦ができる。前職を辞めてでも飛び込む価値がある」と思えたことで、ようやく決心がつきました。

面接で役員たちの熱意に触れたことも、志望度が高まった理由の1つだったと話してくれた。「選考では経営陣2人とお話ししたのですが、一様にブランドへの深い愛が伝わってきたんです。そして、『まだできることはたくさんある。もっと良くしたい。ビューティ事業をもっと広げていきたい』と、同じ方向を見据えていたんです。この方々が言うなら進むべき道に間違いはないと確信し、ぜひ私もその一員になりたいと思いました」


こうして2025年4月に入社した神之田さん。heart relationで働く魅力とは?
ビューティ事業のメンバーとして入社した当時は、商品開発を専任で担当していたのは私一人という状況でした。現在は商品企画は2名で進めていますが、少人数の組織だからこそ、年間販売計画の立案から実際の生産まで、プロジェクトの全行程を一気通貫で任されています。
大手企業であれば役員レベルやマネージャークラスにならないと経験できない販売計画の策定や、チームでの分業が当たり前だった生産工程を丸ごと見渡せることは、非常に貴重な経験です。前職のような承認待ちの時間はなく、自分自身のスピード感で動ける環境は、忙しさのなかにも楽しさがあり、性格的にも合っていると感じています。
※2026年5月現在、ビューティ事業部全体としては9名体制。
働く上で感じるやりがいについては、こう続ける。
商品開発担当もポップアップイベントで店頭に立ち、直接お客様の声を聞く機会があります。自分が開発した商品を手にとり「ずっと憧れていたんです、やっと買えました」といった言葉をいただいた時は、何より嬉しくやりがいを感じます。「この仕事をしていてよかった」と一番感じる瞬間でもありますね。
前職で扱っていた生活必需品は、安価なものを求めるお客様が多く、「この商品でなくてはならない」という動機を生み出しにくい側面がありました。だからこそ、「目的買い」をしてくださる商品に関わる喜びを身に染みて感じるんです。これこそが、情緒的価値を重視するブランドの魅力であり、目指していた「女性のマインドを向上させる仕事」が実現できていると感じます。
「情緒的価値を重視した商品を扱う」とは、具体的にどういうことなのか。商品開発の目線から解説してくれた。
小嶋さんの明確なビジョンから生まれたこのブランドでは、色味や質感、成分、香り……どこを切り取ってもブランドの世界観から外れないよう、徹底的にこだわり抜きます。それが情緒的な価値につながっていると思います。
例えば、2025年10月に発売したヘアミルク。「シルクのような自然なツヤと柔らかい髪」というコンセプトを、ボトルでも表現しようと考えました。ブランドとして全体的にピンクを基調としているためボトルもピンクを採用し、ふわっとした軽やかなつけ心地なので、ツヤツヤしすぎず、マットと艶の間の質感にして、自然な艶とやわらかさを表現しています。また、ブランドが得意とするニュアンスカラーを活かし、パッケージのブランドロゴには、パントン(色見本)にもないような、絶妙なニュアンスカラーを使っています。
成分選びにおいても、「らしさ」を大切にしています。例で言えば、キノコ由来と花由来、どちらも同じ機能を持つ成分なら、迷わず「花」を選びます。実際植物オイルを3種使用していますが、ツバキオイルやシアバターなど、ブランドの世界観に違和感のない成分を選定しました。
常にチームで「これって『Her lip to BEAUTY』らしいかな?」と対話を重ねながら進めています。「世界観を統一する」といった視点自体は前職から知識としては持っていましたが、それを徹底して体現できているのは、今の環境だからこそだと思います。

Her lip to BEAUTYのシグニチャーパフューム『NUDE PEARL』の香りを纏ったヘアミルク。ブランドにとって、“毎日の中で自然と手に取っていただける存在”への広がりを感じられた商品でもあったという。「香水などの商品は、特別なタイミングで購入いただくことも多いカテゴリです。その中で、もっと日常的に“自分を労わる時間”や“癒し”を取り入れられるアイテムを届けたいという想いから、ヘアケア商品のリリースを決めました。実際に『ストック買いしています』『もう1本買いに来ました』といったお声をいただく機会も増えて。製品そのものを評価いただけたことはもちろん、お客様の日常に自然と溶け込めている実感が持てたことも、とても嬉しかったですね」と神之田さん。

神之田さんの転職前後での働きがいの変化を示すグラフ。社内外での健全な競争・活気に関して、「華やかなブランドイメージからすると意外かもしれませんが、実は泥臭くやり抜く根性を持ったメンバーが多い職場かもしれません」と語る。「私でいえば、小嶋さんへのプレゼンは毎回戦いだと思って挑んでいます。小嶋さんは多忙な方なので、端的に要点を伝えられるよう、入念な準備が不可欠です。また、商品開発だけでなく、ポップアップの店頭作業も自分たちで行います。役割の垣根を超えて、あらゆる業務を自分たちで完遂するという気概で日々の仕事に向き合っています」


2026年4月には商品開発リーダーとなった神之田さん。今後の目標について、こう語ってくれた。
ブランドのファンは着実に増えていますが、メジャーブランドと比べると認知率はまだまだ発展途上だと感じています。既存のお客様の期待に応えつつ、より多くの方にブランドを知ってもらうことが現在の大きな目標です。
heart relationには、アパレルやランジェリーなど複数のラインが存在しますが、中でもビューティ事業部は新規のお客様にリーチできるポテンシャルが最も高い事業部だと考えています。ボディケアからフレグランスまでアイテムの幅は広く、価格帯も手頃なものからプレミアムなものまで揃っており、様々なシーンで手にとっていただきやすいはずです。
そして、その先には、「小嶋陽菜のブランド」というイメージを超えていきたい。「小嶋さんのブランドだから」と手に取ってくださる方が多いと思うのですが、長く愛されるブランドになっていくためには、小嶋さん自身が築き上げたブランド力に甘んじているだけではダメだと思っていて。「たまたま見つけて気に入った商品が、実は小嶋さんのブランドだった」といったような、商品起点での出会いも創出していきたいと考えています。
今も新しい商品を開発中ですが、小嶋さんの鋭い感性を「ブランドの原液」としつつ、それをいかに幅広いお客様のライフスタイルに馴染む形へ昇華できるか。それを常に考えています。商品を開発する際は、日々ポップアップの店頭で耳にするお客様の声や、社内でメンバーに投票してもらった結果など客観的な視点を交えた提案を心掛けています。求められる高いクオリティを実現する道のりは平坦ではありませんが、商品開発リーダーとしてより良い製品を届けることで、一人でも多くブランドのファンを増やしていきたいです。
最後に、その圧倒的なバイタリティの源泉はどこにあるのか伺った。
仕事は人生の中で多くの時間を費やすものである以上、その時間を最も楽しいものにしたい。その思いが、根本にあるのかもしれません。楽しくあるためには、成功体験を積み重ねていくことが不可欠。そして、成功体験はただ待っているだけでは手に入らないので、自ら行動を起こすしかない。これからもそうやって仕事と向き合っていきたいです。










