今、大学発ベンチャーに注目が集まっている。たとえば、筑波大学 准教授・落合陽一氏がCEOを務めるピクシーダストテクノロジーズなどが知られたところだ。求人市場において、採用強化の動きも。その動向について見ていこう。
2001年、経済産業省が「大学発ベンチャー1000社計画」を発表。国家としても大学発ベンチャーの創出支援を打ち出した。
実際にその総数も右肩上がりに成長を遂げている。たとえば、2019年度は過去最高の2566社を記録。これは20年前と比較すると、9倍ほどの規模となった計算だ。さらにIPOを実施した企業も65社を数えるまでとなった(*)。
有名なところで見てみると、2014年12月、ミドリムシ研究・開発の「ユーグレナ」が東証一部に上場。AI開発「PKSHA Technology(パークシャテクノロジー)」は、2017年9月に創業5年で東証マザーズに上場した。
大学発ベンチャーの強みとしては、大学での研究成果をそのまま事業化できることが挙げられる。さらに近年では、大学自体が大学発ベンチャー支援を独自に行なうケースも。たとえば、最も多い大学発ベンチャーを創出している東京大学では、事業・研究スペースの提供をはじめ、法律面での相談窓口も設置する。連携も活発で、膨大な研究データや人的リソースを活用できるなども強みだといえるだろう。
大学発ベンチャーの定義(経済産業省の公開資料より引用)
下記の5つのうち1つ以上に当てはまるベンチャー企業を「⼤学発ベンチャー」と定義している。
研究成果ベンチャー:⼤学で達成された研究成果に基づく特許や新たな技術・ビジネス⼿法を事業化する⽬的で新規に設⽴されたベンチャー
共同研究ベンチャー:創業者の持つ技術やノウハウを事業化するために、設⽴5年以内に⼤学と共同研究等を⾏ったベンチャー
技術移転ベンチャー:既存事業を維持・発展させるため、設⽴5年以内に⼤学から技術移転等を受けたベンチャー
学⽣ベンチャー:⼤学と深い関連のある学⽣ベンチャー
関連ベンチャー:⼤学からの出資がある等その他、⼤学と深い関連のあるベンチャー
続けて、大学発ベンチャーの中でも採用を強化する企業を3社取り上げていこう。
筑波大学の准教授でもある、落合陽一氏がCEOを務める。
これまでに総額約45億円の資金調達に成功。オフィス移転、エンジニア採用、総建物面積約3,900平方メートルの研究拠点設立など、積極的に開発・事業を推進する。
2020年5月には、新型コロナ対策BCPソリューション『magickiri(マジキリ)』をリリース。アカデミア発技術を社会実装し、社会課題の解決を目指す。
2016年11月、東京大学における最先端のテキストマイニング/ディープラーニング研究をベースとして設立されたAIベンチャー。AIが個人・組織の関心事に合わせて、世界中のビジネスニュースから最適な情報をレコメンドする「Anews」を提供する。
日経225銘柄を中心とした大手企業が主要顧客となるようだ。
2014年、東京大学大学院の研究室メンバー3名により創業。ライフサイエンス領域の画像解析に強みを持ち、医療・製薬・農業分野における高精度のソフトウエアを開発する。
2019年10月には、脳MRI画像から「脳動脈瘤」の疑いがある箇所を検出する『EIRL aneurysm(エイル アニュリズム)』が、深層学習を活用した脳MRI分野のプログラム医療機器として国内初の薬事承認を取得し、販売を開始した。
研究・技術力を武器に固定観念を覆していく。大学発ベンチャーで勝負を仕掛けていく。一つ、キャリアの選択肢だと言えるだろう。ぜひ実際の求人をチェックしてみてほしい。
(*)令和元年度 産業技術調査事業(大学発ベンチャー実態等調査)ー株式会社日本総合研究所
https://www.meti.go.jp/press/2020/05/20200515003/20200515003-1.pdf