INTERVIEW
エアロセンス株式会社 取締役 COO 事業推進担当

アフリカの地。ドローンで命を救う!「エアロセンス」COOの使命

ドローンの活用で、空から血液検体・ワクチンを届けていくーーアフリカ・ザンビアでの試みを取材した。「ドローンの力で人類に少しでも貢献する。それが僕らの使命だと思っています」エアロセンス取締役・嶋田 悟さん(37)はこう語ってくれた。

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社会課題に、ドローンという解決策を

「長年変わってこなかった問題を、自分の手で変えたい。そのために僕はエアロセンスをやってきました」

こう語ってくれたのは、ドローンスタートアップ「エアロセンス」で取締役を務める嶋田 悟さんだ。

ソニーとZMPの共同出資によって生まれた同社。「ドローンの技術を社会に役立てる」という想いのもと、複数の官民共同プロジェクトで課題解決に取り組んできた。

福島県・南相馬市の汚染土壌点検の写真

福島県・南相馬市では、ドローン空撮を使った「除染土壌」の点検管理を行った。シートで覆われた土壌は、1区画で約1万平方メートルいう大規模施設。ドローン点検を導入したことで、点検精度・効率性の向上を実現した。また、2019年にはドローンによる緊急医療用品搬送の実証実験(北海道当別町)にも成功している。

エアロセンス代表・嶋田さんの正面顔

嶋田 悟(37)
経営戦略コンサルティング会社「ベイン・アンド・カンパニー」出身。新規事業開発、事業再建等の経験を積んだ後、エアロセンス取締役に。現在、取締役COO・事業推進担当として「JICAザンビアプロジェクト」を牽引する。

アフリカの空に航路を創る挑戦

さらに、実証実験が進む「JICAザンビアプロジェクト」も、同社を代表するプロジェクトの一つだ。

・ANAホールディングス
・国立国際医療研究センター
・JICA

との共同プロジェクトであることにも話題が集まる、この取り組み。ザンビアにおける保健医療の水準を上げることがミッションになっているという。

ドローンで都心の中央病院と農村を結ぶんです。ドローンなら、10キロという距離も15分で移動できる。それだけスピーディーに血液検体やワクチンの受け渡しができれば、助けられる命を増やせるはずなんです」

現地でも、早期の実用化が待ち望まれているプロジェクト。その発端にあったのは、嶋田さん自身が感じた「やり場のない想い」だった。

エアロセンスのドローンの写真

ザンビア共和国の地上交通インフラが未発達な地域において、ドローン物流を活用。検体回収から診断、治療も含めた保健医療サービスを提供する。所要期間の短縮や、輸送品質の向上により検査の質の向上を図る。

エアロセンス代表・嶋田さんの横顔

「物資はあるのに、届けられない」

「学生の頃、ボランティアでアフリカに滞在した時期がありました。現地の人はもちろん、国連やNGOもアフリカのために頑張っている。だから物資やお金はあるんです。ただ、求めている人に届かない。届ける術がないためです

アフリカには、インフラ未整備な土地が多く残る。舗装されていない道を走った結果、タイヤがパンクすることも少なくない。

現状を知れば知るほど、もどかしい気持ちが生まれていったという。

さらに、インフラがないことで深刻な問題が生まれている。その一つが医療の問題だ。

「たとえばエイズの蔓延は深刻ですよね。ですから、以前から検査や治療の需要は大きいんです。一方で道路や橋がないために、血液検体やワクチンの輸送が難しい。本来ならもっと多くの命を助けられたのかもしれないのに、それができない現状がありました」

「JICAザンビアプロジェクト」の構想は、そういった苦い想いから生まれたという。

それなら、僕らが空に航路を作れないか。ドローンなら最短距離で目的地まで行ける。僕らなりのやり方でこの現状を変えなければ。そう強く思うようになりました」

「どうか早く実現を」。現地の声に突き動かされた

そして2017年、「JICAザンビアプロジェクト」が始動。実証実験を通じて、すでに仕組み自体は完成しつつあるという。

その中で、忘れられないエピソードを教えてくれた。

「チョマという区で保健責任者をしている女性と出会いました。彼女の言葉がずっと頭に残っていて。 "どうか早くドローンの航路を実現してくれないか" と僕たちに訴えかけてきたんです」

彼女に連れられて、村の診療所へ向かった嶋田さんら。山中を数時間突き進み、診療所の目前まで来た時、川が立ちはだかった。

エアロセンス・ザンビア川

          

「雨季のザンビアでは、河川の氾濫や洪水が起こることも珍しくない。通り道だった場所が川になっていたんです。もちろん橋はない。四駆でツルツル滑りながら、少しずつ進んでいきました。正直に言えば、ものすごく怖かった」

「ただ同時に、この場所で医療を提供することがどれだけハードルの高いものになっているのか、身をもって知ったのです。こんなに危ない思いをして物資を届けるくらいなら、ドローンで行った方がいい。彼女はこの現状を必死に伝えようとしてくれたのだと」

2020年からは、ドローン輸送の実用化に向けいよいよオペレーション構築に入る。

「一日でも早くこのプロジェクトを成功させなければいけない。彼女との約束が、原動力になっているのかもしれません」

エアロセンス・ザンビアプロジェクト

社会課題はいたるところにある

ザンビアでの取り組みはあくまで一例にすぎないと、嶋田さんは語ってくれた。

「日本国内でも、様々な業界で変革が求められていますよね。たとえば高速道路や橋といったインフラ点検もその一つ。建設現場でも、高齢化や人手不足という問題がある。今後、誰がどう担うのか。そう考えたとき、ロボットはソリューションになるはずなのです

ドローンをはじめとしたロボットの活用は、まだはじまったばかりと言えるのかもしれない。

「決まった正解がまだない領域。だからこそ、僕たちに何ができるか見つけ価値を生み出していくことが大事だと考えています。最近では金融業界・医療業界をはじめ、異業界の経験者が集まってくれ、新しい価値も生まれ始めている。できることは今後無限に広がるはずです」

エアロセンス代表・嶋田さんの右横顔

人類の歴史をアップデートしたい

そして取材は終盤へ。伺えたのは嶋田さん自身の話だ。今の仕事の原点には、学生時代の経験がベースにあるという。

「10代の頃、自分が生まれた意味を考えていて。それを知るために、哲学を専攻しました」

スコットランド・セントアンドリュース大学へ。アフリカでのボランティア活動にも携わった。

そこから出た答えとは。

「世界で暮らす人の生き方をたくさん見たけれど、結局自分が生まれた意味を知ることはできませんでした。ただ、自分の本質は見えた。生まれたのだから、"自分がいたから良くなった" という何かを残したい。誰かの暮らしを変え、世の中が良くなる。そういった形で、生きた証を残したいと強く思うようになりました」

最後に語られた、嶋田さん自身の目標。それは、人生をかけた挑戦とも言えるものだ。

身近にあって手つかずな領域、それが空です。ビジネスの可能性も大きい部分。まずは空に集中したい。その先の個人的な最終目的は宇宙で、いつか人を宇宙に導くのが夢なんです。まだ誰もやっていないこと。だからこそ、やる意味があると思っています」

嶋田さんの瞳は、未来を見据えていた。

エアロセンス・ドローンを持つ嶋田さんの笑顔
お疲れ様でした!
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