INTERVIEW
鎌倉市役所 | 市長

鎌倉市が「DX担当」「大河ドラマ担当」職を公募へ。求めるのは、「共創」を実践していく次世代人材

掲載日:2020/12/07更新日:2023/04/07

「誰もがその人らしく生きられる「共生社会」を。そのための障壁はテクノロジーによって解消したい」と語ってくれた鎌倉市の松尾市長。今回、「DX担当」「大河ドラマ担当」職の公募を鎌倉市として行う。市の現状と課題、そして求める人物像について伺った。

※既に応募受付は終了しました。

「観光するまち」から「働くまち」へ

人口172,948人*。東京から電車で1時間圏内、海や山などの豊かな自然が広がるまち、鎌倉市。

数多くの歴史的建造物が立ち並び、年間約2,000万人の観光客を集める観光地として知られてきた。

さらに近年、産業・暮らし・教育・福祉のエコシステムが高いレベルで調和する、「地方創生」の成功例として注目を集める。

「観光するまち」から「働くまち」へ。近年はITベンチャー・スタートアップが集積。加えて、全国各地の企業と連携し、新たなプロジェクトを次々と仕掛けている。連携するのは、NEC、ソフトバンク、LINE、メルカリをはじめ、東工大発ベンチャー「GoMA」など幅広い。取り組むテーマも、高齢化、災害、教育など多様だ。

「私たちが目指すのは、誰もがその人らしく生きられる「共生社会」です。市民一人ひとりが社会に壁を感じていること、自分にはできないと諦めてしまっていること、こうした障壁をテクノロジーの力で取り除いていきたい」

こう語ってくれたのが、鎌倉市長の松尾 崇氏だ。市の現状と課題、そして今回公募する職員に期待するミッションについて伺った。

松尾崇氏・鎌倉市長の横顔

松尾 崇 | 鎌倉市長
1973年生まれ。神奈川県鎌倉市出身。大学卒業後、日本通運にて航空貨物の輸出入の通関業務に従事。同社を退社後、2001年に鎌倉市議会議員に初当選。2期6年務めた後、2007年に神奈川県議会議員に出馬し、当選。2009年に第21代鎌倉市長に就任。現在3期目。

今回の募集職種について

今回、鎌倉市は「DX担当」「大河ドラマ担当」の2ポジションで職員の公募を実施する(※)。その概要について見ていこう。

(※)「DX担当」「大河ドラマ担当」ともに、“一般任期付職員”としての採用となる。一般任期付職員とは、公務に有用な専門的な知識経験等を有する者を、行政機関が任期を定め、登用する制度。民間をはじめとした外部人材の活用により、複雑・高度化する行政課題の解決を目的とする。

DX担当|市民の声を直接聞き、テクノロジーで真に役立つサービスを

「SDGs共生みらい都市」の実現、これが鎌倉市が目指す姿だ。「誰もが生涯にわたって安心して、自分らしく暮らせるまち」へ。

ここで鎌倉市がキーワードに掲げるのが、「パブリテック」だ。パブリテックは、公共(Public)と技術(Technology)を掛け合わせた造語。AIやIoT、ブロックチェーンなどの最先端技術を用いて、社会課題を解決することを指す。

組織としても、2020年に行政経営課の担当を「行政経営・DX担当」と「ICT基盤整備担当」に変更するなど、テクノロジーによる新たな公共サービスの創出・まちづくりを強力に推し進めている。

今回募集する「DX担当」はこうしたテクノロジーの活用により、市民目線での課題解決を図る「まちのDX」推進を担う。

「DX担当」の募集背景、期待する役割について松尾市長に伺った。

「現在、市役所としてもDX担当として優秀な職員を配置していますが、この分野は日々変化していきます。より高度な知識、スキルを有する方の力も必要。ぜひ積み重ねてきた経験や知見、スキルを活かし、まちづくりにおける課題、本質を見極めて最適解を求めていけるような方に、ご応募いただきたい」

政府としてもデジタル庁の新設をはじめ、行政のDX化に大きく旗を振っているところだ。日本全体がこうした方向に進んでいく中で、地方自治体のDXによる変革を先導していく。

「他の自治体のモデルとなる取り組みを、鎌倉市が先んじて実現していく。ここを担ってもらいます。また市役所は、市民にとって一番近くで仕事をする行政機関です。エンドユーザーである市民の声を直接聞き、実際に自身の手がけたサービス・システムがどのように活かされているのか、反映されている場面を見る。そして市民の方に直接役立つ技術やサービスの提供に、自身の経験・スキルを活かしていただく。厳しいご意見をいただくこともありますが、非常に大きなやりがいがあると考えています」

松尾崇氏・鎌倉市長の解説する姿

鎌倉市役所では、2028年度に庁舎移転を予定。どのような市役所をつくっていくか、いま議論が進められている。「"市民の方が市役所に行く必要がない"市役所を、一つ大きな方向性として考えています。市民の皆さんの時間を奪うようなことが一切ないかたちで、できる限りわかりやすく簡便な手続きで済む市役所を目指していく」と松尾市長。

大河ドラマ担当|オーバーツーリズムの課題を解決し、持続可能な「観光」と「暮らし」のあり方をつくる

2022年、鎌倉幕府・第2代執権「北条義時」を主人公とした、NHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人(脚本:三谷幸喜氏)」の放送が予定される。

この放送に先立ち、鎌倉市役所では、観光課に「大河ドラマ・オーバーツーリズム担当」を設置。ドラマの世界観を体感する施設「大河ドラマ館」の開設も予定する。今回募集する「大河ドラマ担当」は、2人目の職員として、施設の企画・運営、NHKをはじめとした関係者との調整などを担う。

「北条義時公は、実はこれまで鎌倉の中でも大きく取り上げてこなかった方です。今回こういう素晴らしい英雄が鎌倉で政治を行っていたんだと、鎌倉の子どもたち、さらに次世代につないでいける、非常に大きなチャンスだと捉えています。大河ドラマ館の運営、情報発信、さらにはレガシーとしてどう残していくか、その企画・推進に関わっていただきたい」

もう一つ、大河ドラマの放送に伴い、短期・集中的な観光客の増加が見込まれ、これまで以上に観光ごみや交通渋滞といった市民生活への影響(オーバーツーリズム)も想定される。その解消に向けた取り組みも、重要なミッションとして担っていく。

重要なのは「共創」による、まちづくり

まちのさまざまな社会課題を、市役所だけでなく民間企業や住民との共創によって解決する。これが鎌倉市役所のスタンスだ。

「行政だけの取り組みでは、さまざまな難しい課題を解決できない。だからこそ私たちは、民間企業や市民の方々との「共創」を大切にしています。たとえば、企業様からご提案をいただければ、お話を伺って、一緒にできるか、できないか、考える。お互いにとってワクワクすること、市民の皆さんにとって良い取組はどんどんやっていきたい」

さらに鎌倉の特徴が、市民が自発的にまちづくりに参加する文化があること。たとえば、地域型異業種ネットワーク「KAMACON(カマコン)」、まちの社員食堂・まちの保育園などを企画する「まちのシリーズ」、産官学民の共創で、市民の暮らしを豊かにするモノ・サービス創出を目指す「リビングラボ」など、ここ数年でも新たな取組が数多く立ち上がっている。

「鎌倉はどんな人でも受け入れる包容力があり、非常に多様な方々が集まるまちです。そしてここに住む多くの方が、このまちを愛している。鎌倉のまちで、自分たちの信念や哲学を体現していく、時代の最先端を自分たちがつくっていく、こうした気概を持って取り組んでいただけているのだと思います」

鎌倉の歴史の中で根付いてきた文化も無関係ではない。

「自分たちのまちを自分たちでつくっていく、自主自立の精神が鎌倉には流れています。たとえば、昭和中期には御谷(おやつ)騒動という、日本初のナショナルトラスト運動と言われるものがありました。鶴岡八幡宮の裏山が開発されることになったとき、市民が立ち上がり、保全のためにお金を集め、山を守った。市民活動をされる方々は、先人たちの取り組みを誇りに思っている方も多くいらっしゃいます」

松尾崇氏・鎌倉市長の眼差し

市役所の役割は、こういった市民に寄り添い、共にまちづくりを担っていくことだと続けてくれた。

「市民の方々が、どういう想いでこのまちを選び、そして幸せを感じて生活をしているか。私たち行政として皆さんの活動の中に飛び込み、こうした価値観を共有しながら、良いところを引き出し、サポートしていきたい。そうすることで、お互いの強みを生かした共創が生まれていくと考えています」

ここには、松尾市長自身の信念がある。

「市の政策すべてに言えることですが、なにかを前に進めるときには、どうしてもそれによって不幸になる方が出てしまうこともある。必ず光と影があります。ただ私は誰一人取り残すことなく、全ての皆さんの幸せを共につくりたい。だからこそ、私がトップダウンで推し進めていくのではなく、市民と共にまちづくりを行っていく。本当に皆さんの幸せにつながっているのか、近くでしっかりと見ていきたいと思っています」

誰もがその人らしく生きられる、「共生社会」の実現へ

取材終盤、松尾市長から伺えたのが、鎌倉市の目指すまちづくり、さらにその先に見据える「未来」について。キーワードに掲げるのは、「共生社会」だ。

「子どもも高齢者も、社会との関わりの中で何らかの障壁がある方も、誰もがその人らしく生きることができる。鎌倉をそうしたまちにしていきたいと思っています。テクノロジーを使い、実現したいのは、リアルのつながりを生み出していくことなんですよね。データで見える化することで、誰もが困りごとに対して、助けてほしいときに助けてもらえる、逆に助けたいと思うことで誰かの力になれる。こうした関係性をつくるきっかけをつくっていきたいと思っています」

松尾崇氏・鎌倉市長の正面画像

鎌倉市では、認知症の方が迷子になったときに捜索依頼ができる「みまもりあいアプリ」の普及、地域の中でスマホなどの使い方について、いつでも相談し、教え合える体制づくりなどに取り組んでいる。これにより新しい人と人のつながり、コミュニケーションも生まれているという。

さらにその先に見据えるのは、鎌倉ならではの新たな価値、豊かさの追求だ。

「特にいま、資本主義のあり方も見直されつつあり、「価値の意味」は大きな転換点にあると思っています。その中で私たちは「地域資本主義」として、新しい資本主義のかたちをつくっていきたい。これは地域にある企業が利益だけではなくまちとともに育っていく仕組みをつくること、人と人のつながりを広げていくこと、環境を破壊せずに自然と共生したまちづくりを手掛けていくこと、SDGsの理念でもある経済・社会・環境の三側面で、鎌倉ならではの価値をつくりだしていきたいと思っています」

そして松尾市長は最後にこう締めくくってくれた。

「鎌倉は源頼朝公が鎌倉幕府を開き、日本の新しい時代を切り開いた、とても大きなパワーを持ったまちだと考えています。その800年の歴史の中で育んできた文化や思想を投影し、最先端のテクノロジーを活用しながら、新しい価値観、人々が幸せになる方向性を打ち出していく。そして日本をはじめ世界に範を示し、影響を与えていく。そういう鎌倉のまちづくりを、高い志を持った方々と一緒に目指していきたいですね」

*2020年10月1日時点

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