掲載日:2021/09/04更新日:2021/11/26
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この50年間で生物多様性は3分の2が損失したーーこれは2020年9月、世界最大の環境保全NGO「WWF」が発表した研究結果だ(*1)。「生物多様性が低下すると、動物由来感染症のリスクが高まる」とも言われ、猛威をふるう新型コロナウイルス感染症も、動物由来の感染症の1つと考えられている(*2)。いま未曾有のパンデミックも契機に、改めて生物多様性、ひいては環境保全の重要性が見直されているといっていいだろう。こうした中、サステナビリティ、なかでも環境保全をテーマに、大手企業やスタートアップ、NGOであらゆる取り組みが行われている。求人と共に見ていこう。
100万種の生物が絶滅危機、求められる社会変革
いま環境保全問題は、世界的な優先課題の一つだといっていいだろう。
例えば、2010年に、世界179ヵ国が参加したCOP10で、生物多様性の損失を止めるための国際目標「愛知目標」を採択(*3)。今後数十年のうちに100万種の生物の絶滅の恐れがあるとも言われるなか、20項目の目標に取り組んでいく方針を示した。さらに2021年1月にオンラインで開かれたワンプラネット・サミットでは、日本政府を含む50ヵ国以上が「2030年までに陸と海の少なくとも30%を保全する」との目標に合意。さらなる解決に向けた強化に取り組んでいく方針だ。
世界各国においてさらなる課題解決に向け取り組み強化を図るなか、重要性が高まっているのが民間との連携だ。いま企業としてもこの問題にどう取り組んでいくか、社会的な要請も高まっているといえるだろう。
大手民間企業で進む、専門家・NGOを巻き込む「サステナビリティ経営」
こうしたなか、大手企業を中心に、サステナビリティへの取り組み強化の動きが活発となっている。同時に進められているのが、この取り組みを推進するポジションでの採用だ。どういった企業で採用が行われているのか。その動向とともに紹介していこう。
■クボタ
農機メーカーとして知られるクボタでは、気候変動への対応として2030年には国内クボタグループのCO2排出量を2014年度比で30%削減することを掲げている(*4)。付随して、環境配慮性の高い製品の開発にも積極的だ。2030年には環境配慮性の高い製品の売上高比率を80%以上にすること、2030年以降の新製品はすべて環境配慮性の高い製品にすることを掲げている(*4)。こうした中、エンジン(ディーゼル、ガソリン)の排ガス規制対応等を担っていくポジション等で募集が行われている。
■ヤマト運輸
ヤマトホールディングスは2020年1月、経営構造改革プランを発表。基盤構造改革の1つとして、サステナビリティの取り組み」をおいている。社内では「サステナビリティ推進部」を立ち上げ、内製化をして取り組んでいる。ここに新たな人材を採用することで、環境、社会のリスク低減や機会拡大を組み込んだ戦略を推し進めていくという。
■富士通
富士通グループでは、2020年4月、サステナビリティ経営委員会を設置。こうした中、中長期視点でのリスク・機会を見据えたサステナビリティ経営の企画・立案などを行っていく「経営企画」などを募集している。
もう一つ、こうした企業の取り組みを支援する。コンサルティングファームによる募集にも注目したい。「サステナビリティコンサルタント」の募集も見受けられる。
同ポジションが担うのは、経済価値と社会価値の両立を目指す「サステナビリティ経営」の実現にむけてクライアントのビジネスモデルの変革を支援していく役割だ。
とくに、製造業やエネルギー・インフラといった業界において、早急なサプライチェーン全体へのサステナビリティ対応が命題に。こうしたなか、事業ポートフォリオをどう組み替えていくか?変革を行うために自社のビジョンや目的をどう位置付けるのか?といったニーズに向き合っていくことが求められている。
新素材・エネルギーを生み出す、日本発ユニコーン企業も
また「環境保全」という課題に立ち向かう中で、抑えておきたいのが、エコ素材やクリーンエネルギーを研究開発する事業者だ。
例えば、推計企業価値は1218億円、日本で史上6番目のユニコーン企業となった、TBM社だ。同社では「石灰石」から紙・プラスチックの代替製品をつくれる新素材『LIMEX』を開発している。例えば、「メニュー表」「名刺」「レジ袋」「食品トレイ」など、様々な紙・プラスチック製品を代替する可能性を秘めており、紙・プラスチックに並ぶ第三極の素材にすることを見据えている。
また、想定時価総額1298億円、2020年9月発表の「国内スタートアップの想定時価総額ランキング」では2位(*5)の次世代ユニコーンとして期待を集めるのが、クリーンプラネット社だ。日本から世界初の「量子水素エネルギー(*)」の実用化を目指しており、今、世界中の開発者たちから脚光を浴びる。
(*)量子水素エネルギーとは
水素を燃料としながら、ガソリンの1,000倍以上という莫大なエネルギー密度をもたらす次世代のクリーンエネルギー技術で、二酸化炭素(CO2)や、生物に有害な放射線などを放出しない。原子力発電で懸念される暴走事故の危険性もなく、「再生可能エネルギー」の次代を担う「安全、安定、安価なクリーンエネルギー」として期待を集める。
もう一つ「環境保全」をテーマに求人を見ていく上で、世界最大の環境保全NGO「WWF」の求人も見受けられた。環境保全活動の資金を集めていく「ファンドレイジング担当」をはじめ、環境問題への感心を高める企画・PRを行っていく「キャンペーン担当」、「野生生物の保全プロジェクトオフィサー」「海外森林保全プロジェクトオフィサー」などの募集が行われている。
「環境保全」は、あらゆる社会課題の根本とも言える領域。そこに挑む選択肢としては、大手企業、NGO、コンサル、スタートアップ事業者など多様だが、いずれもチャレンジングなフィールドが広がっていると言えるだろう。ぜひ実際の求人をチェックしてみてほしい。
参考:
(*1)メディア勉強会シリーズ「コロナ後の国際動向~生物多様性とワンヘルス」|WWFジャパン
https://www.wwf.or.jp/activities/activity/4477.html
(*2)生物多様性は世界を救う!?豊かな生物多様性が動物由来感染症を防ぐメカニズムとは|WWFジャパン
https://www.wwf.or.jp/activities/opinion/4451.html
(*3)生物多様性条約第10回締約国会議の開催について(結果概要)|外務省
https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/kankyo/seibutsu_tayosei/cop10_gk.html
(*4)環境保全中長期目標|クボタHP
https://www.kubota.co.jp/sustainability/environment/active/index.html
(*5)国内スタートアップ想定時価総額ランキング最新版(2020年9月)
https://media.startup-db.com/research/marketcap-ranking-202009
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