INTERVIEW
JICA|独立行政法人国際協力機構

JICAで活かす、ビジネスで培った課題解決力。銀行員、コンサルタントを経て選んだ「開発途上国支援」の道

掲載日:2021/07/26更新日:2021/11/17

新卒でメガバンクに入行、その後、経営コンサルティングファームにてキャリアを積んできた城戸武洋さん。当時32歳、次なるキャリアに選んだのが、独立行政法人国際協力機構「JICA」(以下:JICA)だ。民間からJICAへ。「自身の知識や経験を活かし、開発途上国の支援に貢献していきたかった」と語る城戸さん。彼のキャリア選択の裏側に迫った。

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その国の「未来」を創る、開発途上国支援

アジア・アフリカ・中東等、開発途上国への支援、総合的な政府開発援助(ODA)を行なう実施機関が「JICA」だ。

教育、保健医療、運輸交通、都市開発、環境、エネルギー等、開発途上国における多様な課題解決を通じ、「国創り」に取り組んでいく。

その協力支援は、技術協力、無償資金協力、有償資金協力(円借款)、海外投融資(融資による民間セクター発展支援)等、多岐に亘り、「金融」と「コンサルティング」を掛け合わせた総合的なメニューを駆使する。

いわば、その国の“未来”を創る仕事だ。

今回お話を伺えたのは、海外投融資における審査業務を担う「審査部投融資審査課」課長の城戸武洋さん。 

JICAでのミッション、仕事の醍醐味とは。キャリア選択の裏側、そこに込められた思いに迫った。

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銀行、経営コンサルティングファームを経て、2012年にJICAに入構した城戸武洋さん。入構後は、地域部の中東第一課(東京勤務)に配属。その後、モロッコ事務所での駐在を経て審査部へ。

JICAならではの「チャレンジング」なフィールド

審査部にて課長を務めているという城戸さん。現在、どのようなミッションを担っているのだろうか。

「JICAは、コーポレートファイナンス、プロジェクトファイナンス、ベンチャー投資、ファンド投資などさまざまなスキームを用いて開発途上国において民間企業が行う事業への出資や融資を行っています。審査部では、融資先国のマクロ経済動向、融資先企業の信用力の審査・モニタリング等を担っています。」

その業務における醍醐味について、こう解説してくれた。

「時には先進国の民間金融機関が全く参入できない、いわゆるフロンティアに位置する国の案件もあり、途上国ならではのリスクを考慮しながら審査を行ないます。その国の成長を見通し、為替・金利動向といったマクロ経済的側面に加え、同じ国における類似案件の動向や、過去の教訓を考慮するべく、頭をフル回転させていくため、学ぶ機会が多いことが特徴です。複数の国を見ながら、途上国特有の規制、リスクを分析し、対応する。そしてその国の未来を築くような融資につながっていく。グローバル且つ、チャレンジングな舞台があり、非常にやりがいのある仕事です。」

過去には、JICAならではの世界をまたにかける業務経験も積んできた。

「ウズベキスタン、バングラデシュ、米国と、一度の出張で世界一周したこともありました。各地のIMF、世界銀行の関係者等と経済・金融動向、さらに産業政策を含めたその国の課題・成長見通し等について協議し、各地の経済状況のモニタリングを実施していきました。途上国の経済・金融状況はやはり現地に行って学ぶことが多く、パブリックセクター・民間セクターにおけるさまざまな専門家と対話し、政治・経済・社会・文化…複眼的な視点から状況を理解することが重要です。専門性の高い議論を多種多様なステークホルダーと実施し、スケールの大きな意思決定の一助を担っていけることも、JICAで働く醍醐味のひとつだと思います。また、拠点を日本に置きながら、日々、こうした業務に向き合えるのもJICAならではだと思います。」

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 民間から中途で入構したメンバーが広く活躍するJICA。商社、メーカー、コンサルティング会社、金融機関・銀行等、働くメンバーのバックグラウンドは多様だ。入構後に感じた、良い点のギャップについて「非常にフラットな組織だと感じました」と城戸さん。「公的な機関なので、組織・制度としては非常にしっかりしていますが、カルチャーとしては、総合職の3人に1人が中途採用で入構しているということもあり(契約社員なども含めると半数以上が中途採用)、それぞれの主張を伝える、受け入れる風土があり、上司にも相談しやすい雰囲気があります。」(画像提供:JICA)

米国で過ごした少年期。国際問題の解決に貢献できる人へ

銀行員、コンサルタントというキャリアを歩んできた城戸さん。どういったきっかけ、思いでJICAへの入構を決めたのか。

「今振り返ると、子どもの頃から世界の平和に何かしら貢献していきたいという漠然とした関心があったように思います。小・中学時代をアメリカで過ごしたのですが、冷戦が終わり、世界が変わっていった時代、社会の授業を通じて、ソマリア、カンボジア等、紛争問題を知っていくなかで、自分にも何かできることがないかと自然と考えるようになっていました。」

同時に、社会人経験、問題解決のスキルがなければ、出来ることが限られてしまう、という思いもあったと振り返る。

「学生時代から国際協力には関心があったのですが、社会人経験を通じ、強みとなる知識・経験がなければ何も貢献できないと考えていました。グローバルな仕事にも興味があったので、新卒ではメガバンクに入り、法人営業を通じて一連の銀行業務の経験を積みました。その後、青年海外協力隊にてマイクロファイナンスの活動、大学院進学を経て、経営コンサルティングファームへ。クライアント企業の経営課題を解決していくための非金融的なアプローチを学ぶことができました。」

そういった中でも、常に持ち続けたのが「世界の平和に貢献する国際的な仕事に携わりたい」という思いだった。

「当時、32歳だったのですが、コンサルタントの仕事もやりがいはありましたし、まだまだ学ぶこともありました。ただ、JICAが中途採用を実施していることを知り、この機会を逃したくない、と応募しました。当時、JICAとJBICが統合して数年経過していた段階だったのですが、技術協力・無償資金協力に加えて、円借款*も加えて事業の拡大を遂げていたタイミングだったので、金融のバックグラウンドも活かせると考えました。」

*円借款…有償資金協力のひとつ。開発途上国政府に対して低利で長期の緩やかな条件で開発資金を貸し付けることにより、開発途上国の発展への取組みを支援するもの。

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城戸さんが駐在していたモロッコの市場風景。イスラムとアフリカが交差するエキゾチックな文化が魅力的な国で3年半駐在した。(画像提供:JICA)

開発途上国が持つ可能性を、さらに広げていくために

そして伺えたのが、モロッコ事務所駐在時に体験した、ある現地の中学校でのエピソードだ。

「JICAが過去にモロッコに建設した現地の公立中学校があり、ある日『ぜひ、中学校に来てくれないか』と要請がありました。何があったのだろう?と思ったのですが、別の出張の予定に組み込む形で訪問しました。」

そこで待ち受けていたのが、町をあげてのとある女子生徒への祝賀会だった。

「聞いてみると、アラブ・アラビア語圏の読書コンクールにて、そのJICAが建てた中学校の女子生徒が入賞したらしいのです。現地を含め全中東地域ではかなり有名なコンクールで、まさに快挙。町全体での祝賀会に参加してほしい、ということだったのです。当然、私自身が建設に携わったわけではないのですが、この学校がなかったら、この女性生徒の潜在能力を開花することも出来なかったのかと思うと、長い時間を経て、過去の先輩たちの仕事がこうしてつながっていく。あらためて、その国の発展に貢献していく、仕事の意義が感じられました。」

民間企業との違いについて「プロジェクトのサイクルが長く、自身が携わったものの完成を最後まで見届けずに異動してしまうこともある」と話をしてくれた城戸さん。同時に、数年先の、その国の未来を築いていく。そのやりがいは計り知れない。

「公的機関として手続き・プロセスの透明性や公平性を担保する必要があるため、意思決定には慎重さ、正確性が求められます。民間企業に比べ、スピード感も違うかもしれません。ただ、それだけインパクトを出すことに優先度を高く置いた大きな仕事ができる、ということでもあります。」

教育でいえば、学校という「箱」だけでは成り立たない。いかに質の高い教育を持続的にしていけるか。制度、教員、カリキュラム、教材…「ハード」と併せて「ソフト」の支援も行なっていく。教育に限らず、多様な側面から技術協力ができるのも、JICAの特徴だ。

そして最後に伺えたのは「仕事で叶えていきたいこと」について。

「中期的には現在、私が携わっている海外投融資(途上国の民間セクター・アクターへの支援)を、さらに強化していくこと。民間企業出身の方で、そういった知見がある方ともぜひ協力していきたいです。さらに長い目で見た時に実現していきたいのは、より多くの開発途上国が持つ潜在能力を開花する取り組みです。途上国の開発においては民間セクターが大きな成長の担い手なので、JICAもそうしたアクターと連携すべく、自分のノウハウ、知見を活かし、さらに貢献していければと思います。」

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