世界で4億人以上が使用する、ARカメラアプリ『SNOW』。運営元SNOW社は、他にも『SODA』『Foodie』『ZEPETO』など約20のプロダクトを展開し、ダウンロード総数は全世界で10億以上にのぼる。そして、韓国本社で開発したシステムをもとに、日本にフィットするコンテンツを企画していくのが、日本法人「SNOW Japan株式会社」だ。今回お話を伺ったのはコンテンツ企画を担う李 香蓮(リ カレン)さん。彼女の転職ストーリーを追った。
「盛れてるおしゃれな写真をSNSにアップしたい」
そんな10代、20代の女性たちから支持されるカメラアプリを提供するのが、SNOW社だ。
2015年にリリース、顔認識スタンプを使って動物に変身したり、フィルターで日常をおしゃれに加工できるアプリ『SNOW(スノー)』は、いわば「ARカメラ」の原点とも言える存在。ティーンを中心に瞬く間に広まり、今や世界中で4億人が使うアプリとなった。
同社は、『SNOW』の他にも、約20のアプリを展開。2019年に全米1位を獲得した、AIで顔の特徴を抽出して全身を加工できるアバターアプリ『ZEPETO』をはじめ、最近ではナチュラルに盛れるアプリ『SODA』、『Foodie』、『LINE Camera』など。いずれもAppStoreのカメラアプリの上位にランクインする人気ぶりだ。
さらに、これまで10代、20代前半の「若者向け」のイメージが強かった『SNOW』だが、コロナ禍ではユーザーの裾野も広がりつつある。
「コロナ禍で一番大きく変わったと感じているのが、自宅で写真を撮る方々が増えていること。例えば、『SNOW』では父の日、母の日のスタンプなどもリリースしているんですが、親子で撮ってSNSに投稿してくれる方も多くて。他にも、SNOWのフレームを使って、おしゃれにご飯の写真を載せてたり。おうち時間をアプリで楽しんでもらえていますね」
こう語ってくれたのが、「SNOW Japan」にてコンテンツ企画を担う李 香蓮さんだ。彼女の転職ストーリーとともに、その仕事の醍醐味についてみていこう。
李 香蓮(リ カレン)
美容学校を卒業後、2015年新卒で百貨店にて外資系ブランドの化粧品・香水の販売を経験。その後、美容雑誌の編集アシスタント、モデル・インフルエンサーのキャスティングの仕事を経て、2019年1月にSNOW Japanへ。現在、『SNOW』、『SODA』などのスタンプやフィルターなどのコンテンツ企画に携わる。
前職はアプリとは異なる業界にいたと伺いました。なぜ転職を考えるようになったのでしょう?
自分の年齢を考えると、「楽しい」だけではなくて、自分の好きなこと・得意なことを活かしてビジネスサイドから積み上げていけるような仕事をしていきたいと思ったからです。
そう思うようなったのは、前職時代に感じた違和感がきっかけでした。
前職では、ハイブランドのファッションイベントなどモデルさんのキャスティングなどの仕事をしていて。
まさにファッション業界の最先端に触れられる仕事。芸能人とかインフルエンサーが来るようなパーティーの現場に行く毎日は、とても楽しくやりがいがありました。
ただ、キャスティングの仕事はファッション・美容というものとの関わり方が間接的でもある。自分の得意なことを本当にビジネスに活かせているのか、と考えた時、少し違うかなと。転職を考えるようになりました。
転職活動をする上では、どういったことを大切にしていたんですか?
原点に立ち返ることですね。改めて私はやっぱり「美容」が好きだ、と。高校生の頃から化粧品が好きで、趣味を仕事にしたくて美容学校に通い、美容師免許も取得しました。その知見を、より直接的に活かせる仕事につきたいと思ったんです。
色々な業界、サービスがあるなかで、なぜ「カメラアプリ」だったのでしょうか?
これまでとはまた違った角度から美容に関われるのは面白そうだなと思ったからです。
カメラアプリって、人に直接手を触れてメイクするわけではないですけど、AIやARとして美容・ビューティー機能などの加工がありますよね。ITの領域は全く違う業種なんですけど、楽しそうだなと興味があったんです。
とくに先駆けは『SNOW』。実際、私自身アプリを使っていて馴染みがありましたし、それをつくる側に行ってみたいなと。
【SNOW社の強みについて】
AppStoreのカメラアプリの上位にランクインしている。カメラアプリを開発する企業の中でも、1つの代表作がある企業は数あれど、1社で複数のヒットアプリを立て続けに生み出している企業は珍しい。ヒットを連発できる理由は、開発を手がける韓国本社のAR技術の高さ、韓国の流行をキャッチアップし開発に反映していくスピード感にある。刻一刻と状況が変化する中で、高い技術力を武器に常に新たなトレンドを取り入れて開発していくことが同社の最大の強みとなっている。
とくに、10代、20代の女性の心をつかむSNOWだが、単なる「盛れるカメラアプリ」ではなく、ビジネスにおける期待も高まっている。2021年1月より、『SNOW』、『B612』、『SODA』、『Foodie』における広告メニューの提供を本格的に開始。視認性の高いSPLASH(動画)、効率的な誘導を促すPOPUP BANNER(静止画)を実施した企業の平均CTRは10.8%と驚異的な効果が出ているという。
高齢化が進み、未来の消費の主役となっていくZ世代をターゲットとしたマーケティングの重要性が叫ばれるようになっている昨今、企業・ブランドのマーケターの間で同社への注目は高まっていくとみていいだろう。
SNOW社に入社されてからはどんな仕事を担当されてきたのでしょうか?
主に、『SNOW』、『SODA』のスタンプをデザイン・企画を担当しています。
『SNOW』には、様々なスタンプがあります。たとえば、犬のように耳がついたり、友達同士で顔を交換できたりする「顔認識スタンプ」。現実の空間にキャラクターがいるように見える「ARスタンプ」など。それらの新しいデザイン・企画をしていくのがメインです。常に、自社のアプリが話題になるように日々トレンドを意識していますね。
とくにSNSでトレンドをいちはやくキャッチして、それらのトレンドを真似るだけではなくて、SNOWオリジナルの要素を加えて制作を進行していきます。
トレンドをおさえるうえではTwitterやInstagramはマスト。日本の有名人やインフルエンサーはもちろん、アメリカや中国、韓国、台湾など海外のトレンドもチェックしますし、マーケティングチームと連携してトレンドをいち早くキャッチしていく。新しく流行りそうなものを競合SNSより先にリリースできるように動いています。
スタンプは毎日のように新しいものをアップデートしていて、今ではもう数えきれないほどありますね。
そのなかでも、特にやりがいを感じるのはどんな時ですか?
やはり、実際に自分が企画したスタンプを有名人をはじめみなさんが使ってくれているのをSNSでみつけたとき。この時が一番嬉しいです。
キレイになれるアプリは色々あると思うんですけど、私はその中でも「新しいトレンド」を拡散していくことが好き。
例えば、『SODA』は、「目を丸くする」とか「口角をあげる」とか、顔のパーツ単位で加工できる機能もあって、より自分でカスタマイズしていける。過度ではなく、「ナチュラルに盛れる」のが特徴です。そもそも、「加工してるのにナチュラル」っていうこと自体、新鮮なことですよね。そういった「新しいトレンド」を広めていきたい。それが、「写真を撮るなら、可愛く撮りたい」というユーザーの気持ちに寄り添うことにつながると思うんです。
現在、営業、コンテンツ企画、マーケターなどのポジションで採用を行っているSNOW Japan。求める人材の資質としてあげているのが、幅広いジャンルのトレンドをキャッチアップしていること。「様々なシーンで利用されていくアプリを提供していく上では、サブカルだけ好きとかではなくて、かわいい系から面白系などまでまんべんなくインプットしていく必要がある。それを息を吸うようにできる方は向いていると思います」と李さん。ちなみに、選考ではSNSで日頃どういったアカウントをフォローしているのかといった点も注目されるという。
最後に、李さんにとっての仕事観についても伺わせてください。ずばり「仕事」とは?
もちろん、仕事は収入のためにもなくてはならないもの。ただ、そのなかでも私は、「自分の好きなこと」をいかにビジネスとしてうまく融合させていけるか、を重点的に考えています。
自分の好きなことをみんなも好きかっていったら、そうではない。新しいものを世間的に広めて話題になるようにしていく上では、自分の好きなことだけに執着していては難しい。世の中のトレンドを把握して、その上で、自分の好きな要素をうまく活用していく必要があると思うんです。
トレンドに敏感でただミーハーで流行ってるものだけを知ってるのでなくて突出して好きなことがある人。例えば趣味で動画編集をしている、絵を描くのが好き、デザインをしているなど。そういった、トレンドと合わせて一緒に生かせそうな得意なものを持っている方は、それらを掛け合わせて新たなものを生み出していける。自分の強みをクリエイティブ的に最大限に生かせる環境だと思います。