INTERVIEW
ワールド・ビジョン・ジャパン(WVJ)|コミュニケーション課 課長 德永美能里

国際NGO「ワールド・ビジョン」が求めるプロ人材。その経験を、貧困、紛争、災害…厳しい環境に生きる“すべて子どもたち”のために――。

掲載日:2021/12/09更新日:2022/01/06

国際NGOとして世界最大級の規模を誇る「ワールド・ビジョン」。宗教、人種、民族、性別にかかわらず、すべての子どもたちが健やかに成長できる世界を目指し、約100カ国で活動する。その日本事務所「ワールド・ビジョン・ジャパン」がプロフェッショナル人材を募集する。求められる人物像、そして働くことで得られる経験、感じられる意義とはーー。

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すべての子どもたちが健やかに成長できる世界を目指して。

世界 約3億5600万人*

この数字は、貧困から抜け出せず、今、この瞬間にも厳しい環境に生きる子どもたちの人数だ。そして「5歳の誕生日を迎えることが出来ていない子どもたち」は、年間520万人*におよぶ。

*ユニセフ・世界銀行/2020参照

こういった現実、世界における社会課題に取り組む国際NGOが「ワールド・ビジョン」だ。

アメリカ生まれのキリスト教宣教師、ボブ・ピアスによって1950年に設立され、宗教、人種、民族、性別にかかわらず、すべての子どもたちが健やかに成長できる世界を目指し、約100カ国で活動する。継続支援プログラム「チャイルド・スポンサーシップ」では、世界340万人の子どもたちがスポンサーに紹介され、支援を受けている。

「“ すべての人々に何もかもはできなくとも、誰かに何かはできる” という創設者 ボブ・ピアスによる言葉があるのですが、今でもワールド・ビジョン全体に受け継がれている精神だと思います」

こう語ってくれたのが「ワールド・ビジョン・ジャパン(WVJ)」コミュニケーション課 課長の德永美能里さんだ。

WVJの活動概要、そして働くことで得られる経験、感じられる意義とは。民間企業を経て、WVJに入団した徳永さんに伺った――。

ワールドビジョン(ステートメント)

キリスト教精神に基づき「開発援助」「緊急人道支援」「アドボカシー(市民社会や政府への働きかけ)」を行う「ワールド・ビジョン」。そのビジョン・ステートメントには「すべての子どもに豊かないのちを」を掲げ、実現を目指す。「すべての子どもたちが愛されるべき、かけがえのない価値ある存在である、というキリスト教の人間観が根底にあります」と徳永さん。

新型コロナにおける、最も弱い立場にある子どもたちへの影響

まずこの世界的なコロナ禍は、厳しい環境に生きる子どもたちに、どのような影響があったのでしょうか?

健康リスクに留まらない深刻な影響がありました。飢餓や紛争の影響で、かねてより支援でいのちを繋いでいた子どもたちは、「人」や「モノ」の移動が止まったことで、より危機的な状況に陥りました。気候変動や紛争とあいまって世界の飢餓人口は増加しています。また、発展に向けて歩みを進めていた国や地域でも、ここ数年来の前進が失われかねない状況に。

たとえば、ようやく学校に通えるようになった子どもたちが、休校をきっかけに再び働かされるようになってしまったり。子どもに対する暴力や児童婚の増加も報告されています。

そういったなか、強い危機感を持ち、ワールド・ビジョンは培ってきた活動の経験と基盤をフル稼働して、パンデミック発生直後から支援活動を展開しました。弱い立場にある子どもたちの未来を守るために、チャイルド・スポンサーシップを含めこれまで以上の継続的な支援を届けていく、その重要性はさらに高まったと思います。

ただ、強い危機感の一方で、希望も目にしました。それは、日本の皆さまのあたたかいお気持ちです。大変な中にあっても、これまで支援くださった方が支援を続けてくださり、また、多くの方が新たに支援の輪に加わってくださいました。特別定額給付金からご寄付くださった方も、大勢いらっしゃいました。2021年度(2020年10月~2021年9月)WVJは個人・法人の皆さまから、40億円を超えるご寄付をお預かりしています。

このコロナ禍において、日本に住む私たちも、不自由や未来への不安を自分ゴトとして経験しました。その痛みを通して、最も弱い立場にある人々へ共感し、苦しみの中で奮闘する子どもたちをサポートしようと、ご寄付を託してくださった方が多くいらっしゃったと思います。

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子どもたちにマスクを配布し、着用方法を教えるワールド・ビジョン・ハイチのスタッフ。彼自身もかつてチャイルド・スポンサーシップによる支援を受けていた。2020年3月11日にWHO(世界保健機関)が新型コロナウイルス感染症のパンデミックを宣言し、その数時間後にはワールド・ビジョンは史上最大規模での緊急支援を決定。従前より実施していた地域プログラム(チャイルド・スポンサーシップ等)の支援地域に加えて、医療体制がぜい弱な国や難民・避難民が多い地域等、世界70カ国以上で新型コロナに対応するための緊急活動を進め、2020年度は、約5,100万人に支援を届けた。

一人でも多くの子どもたちに、より大きなインパクトを

コロナ禍に関して先行きは不透明ですが、今後もより大きな課題と向き合っていくなかで、WVJとして目指していく部分があれば教えてください。

2030年のビジョンとして、この年は持続可能な開発目標:SDGsの達成期限でもありますが、「最も弱い立場にある子どもがいない世界を目指して、日本の皆さまとともにインパクトをもたらす」ことを掲げ、そこに至るための前半5カ年の中期計画をスタートしたところです。

まずは広くより多くの方に活動を知っていただき、社会での信頼を得ていく。より多くの資金をお預かりし、一人でも多くの子どもたちに、大きなインパクトを届けていきたいと考えています。

また、最も弱い立場にある子どもたちは、支援を届けることが難しい存在でもあるため、より効率的・効果的に動いていく必要があります。そのためには、恐れず、よりアジリティを持って、ビジョン達成に向けて取り組む。一人ひとりが「基本理念」を自分のものとして体現し、コミットしていくことが大切だと思います。

ワールド・ビジョン・ジャパン|基本理念

私たちはキリスト教精神に基づいて活動します
私たちは貧しい人々のために献身します
私たちはすべての人を価値あるものとします
私たちは仕えるものです
私たちはパートナーです
私たちはすぐに対応します

子どもが健康を享受し、教育を受け、守られ、愛されていることを感じ、様々な機会に参加して成長できるよう目標を立て、その達成度を確認しながら活動しています。

バトンをつなぎ続け、ともに生きていく

実際、徳永さんご自身、マーケティング、政策提言、企業連携、広報など、さまざまな業務を経験されてきたと伺いました。そういったなかで感じられた「やりがい」があれば教えて下さい。

最もうれしい瞬間は、活動が成果をもたらし、子どもたちの笑顔や地域の喜びにつながった時、そして、その喜びが支援者の方にも伝わって、一緒に喜べる時です。

リーダーとして活躍する女の子、安全な環境で無事出産できたお母さん、豊かな収穫を手にしたお父さん…そういった活動地域の笑顔や喜びの声に触れられる。一人ひとりの変化とともに、就学率や健康指標の向上などにより地域全体が底上げされている事実を目の当たりにする時、託していただいた寄付と様々なスタッフの働きが確かな成果につながった、と手ごたえを感じます。

また、子どもの健やかな成長を支援するということは、未来につながる。そのこともやりがいです。ワールド・ビジョンは70年の歴史があり、かつて子どもの時に支援を受け、今は医師や教師、また地域のリーダー等として活躍している方々に会う機会も多くあります。ワールド・ビジョンのスタッフとなり、仲間として働いている人もいます。

私には、インドのワールド・ビジョン事務所で働く友人がいます。チャイルド・スポンサーシップの支援がなければ学校に行くこともままならなかった。今は14人のスタッフを束ね、8万人の人々を対象としたプロジェクトの責任者として、かつての自分のような立場にある子どもたちのために奔走しています。

彼女は私にこう言いました。「チャイルド・スポンサーとワールド・ビジョンは、川底に沈んでいた原石の私を、明るい陽光の下に掬い上げ、輝くチャンスをくれた」と。彼女の人生は、これからを生きる子ども達に支援や励ましを届ける「価値」の力強い証言です。

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もちろん、手ごたえを感じられることばかりではありません。私には忘れられない出会いがあります。数年前、カンボジアで、非常に厳しい環境で暮らす若いお母さんと出会ったことがありました。ひとりで5人のお子さんを育て、今にも崩れそうな家の裏で虫を採って生計をたてていました。その時、同行していた支援者の医師の方は、彼女のふくらんだお腹を触診し、心配していました。彼女はワールド・ビジョンの活動地域ではない村に住んでいて、プログラムでは支援できない。その時、私は彼女の手を握ることしかできなかったのです。

ただ、私もスタッフも諦めきれなくて…。結果的に、正式なプログラムではないカタチですが、コミュニティの人々が家を修繕してくださり、彼女が病院を受診できる状況を作ることができたんです。

私たちの仕事は、厳しい現実や限界を思い知らされることばかりです。ですが、その悔しさのなかで、「何かはきっとできる」と、諦めずにバトンをつなぎ続けていく。そういった時にこそ、変化が起こる。カンボジアの彼女から私は大切なことを教えてもらいました。

非営利であり、お金を託されるからこその「重み」

やりがいの一方で感じられた厳しさや、ギャップを感じないために、事前に知っておいたほうがいい部分があれば教えて下さい。

私たちは非営利団体ですので、利益はあげません。しかし、「社会課題の解決」という「価値」を生み出していくことが求められます。活動の成果はどの分野においても、しっかり数字で確認します。営利企業に比べると、むしろ余剰資金がないため、限られた資金の最適配分、そして効果的かつ効率的な活用は高いレベルで求められますね。

寄付には対価性はありません。商品やサービスの提供とは違う。でも、説明責任があります。寄付者の方から信頼だけで託していただいた寄付に、成果をご報告できるよう最善を尽くす。取り組みがいと同時に緊張感をともないます。

緊張感ということでは、もうひとつ。人道支援を行う団体としてスタッフの安全は最優先事項ですが、危険はゼロではありません。私自身、WVJに入るときに面接で聞かれたのは「いのちに関わる仕事をしていく覚悟はありますか? ご家族にも理解は得られますか?」ということです。スタッフ全員が相応の覚悟を持って働いていく。その覚悟を面接で問うてもらえたことで、背筋が伸びたことを覚えています。

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チャイルド・スポンサーシップにおいて「地域の子どもたち自身」が写真を見てスポンサーを選ぶユニークな取り組みも実施しているという。途上国では、「自分で何かを選ぶ」という経験がない子どもたちが多く存在する。子どもたち自身が「自ら選ぶ」という喜びを実感するだけでなく、支援者も「自分が選ばれる」という喜びを得られる。「あるスポンサーの方が、自分を選んでくれた子どもの夢が法律家だと知って涙を流されたそうです。その方は弁護士でいらしたのです。そんな感動も生まれています」と徳永さん。

「よく生きる」を体現していくために

もし、WVJへの応募を迷っている方に届けたいメッセージがあればお願いします。

手掛けていくのは「世界で最も弱い立場にある子どもたちの健やかな成長のための仕事」です。組織として挑むフィールドは“世界”であり、課題は複雑です。それだけに求められる専門性は多岐にわたるため、可能性も広い。ですので、少しでも気になる方はまずはご応募いただけると嬉しいなと思います。

また、なんというか、人としての知情意をフル稼働することが求められます。専門性・強み、あらゆる経験、そして、これからの「人生」、全てを活かしていただける、そんな職場だと思います。どの職種であっても、子どもたち・ご支援者の方々・パートナーをつなぐ、どこかに位置付けられます。出会いや別れ、得ること・失うこと、喜び・悲しみ、成功と失敗。私自身、人生の様々な経験が仕事につながり活きてきましたし、活かすことのできる仕事です。

もうひとつ、世界最大級の国際NGOならではの、組織基盤とリソースも職場として魅力だと思います。豊富な知見や情報、また、支援事業・マーケティング・イノベーション・ファイナンス・リーダーシップなどの専門家からサポートを得たり、逆に成功事例の共有や協力をする機会もあります。貢献と成長の機会は無限にあると思います。

最後に、ご自身の仕事観についても伺いたいのですが、徳永さんにとって仕事とは、一体どのようなものなのでしょうか。

私にとって仕事とは、「よく生きること」を求め続け、実践していくことかなと思います。善い人になりたいとはあまり思わないのですが、「よく生きたい」というのは、すごく思うこと。たいへん悲しいことですが、世界では、年間520万人の子どもたちが5歳の誕生日を迎える前に命を落としています。そう考えると、この瞬間、この世界に今、生きていること自体が奇跡であり、特権と言っても過言ではありません。そうあるからには「よく生き」、その具体的な実践のひとつとして「価値を生む仕事をする」ことは、私にとってとても大切なことです。私のWVJでの仕事の責任は、世界の最も弱い立場にある子どもたちのために一緒に歩んでくださる仲間を増やすこと。ですので、日々「よく生きよう」とする先に、だれかが「よく生きられるようになる」ことがつながっていくならば、これほどうれしいことはないですね。

ワールド・ビジョン・ジャパン|求める人物像・資質

・自律性、自主性
「この世界から弱い立場にある子どもを無くす」という大きな課題に対し、一人ひとりが自律し、向き合っていきます。ご自身の仕事のなかで最も良いソリューションを考え、アクションに移すことが求められます。また、「やり抜く」ところまで含めた自主性に期待しています。

・ともに働く力
一方で、さまざまな国のパートナーと仕事を進めていくなかで成すべきことを説得力をもって提案し、相手を尊重しながら巻き込んでいく。全体として良い結果につなげていくための「ともに働く力」が求められます。

・コミットメント
すぐに結果が出る仕事ばかりではありません。仕事をしていくなか、心が折れてしまいそうな局面に直面することも。そういった時ほど、ご自身の根っこにある生き方、志とともに、自分の決断を持ってミッションにコミットし続けていくことが大切な向き合い方になるはずです。

 

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