INTERVIEW
デジタルブラスト|代表取締役 堀口 真吾

宇宙での植物生育実験も!? 宇宙ビジネスの開拓者「デジタルブラスト」の野望

掲載日:2022/07/25更新日:2023/04/07

宇宙で植物を育てる、人工衛星データを解析し政策提言する…今までにない宇宙空間の活用コンサルティング、また新規事業開発を行うベンチャーとして、2018年に創業したデジタルブラスト。JAXA、大手コンサルファーム、シンクタンクなどの出身者で構成され躍進を続ける。「民間のアイデアで宇宙産業を盛り上げたい。人が宇宙で生活し、経済活動を回す未来を作りたい」と語ってくれた代表の堀口さん。その志を追った。

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2024年、宇宙×植物生育プロジェクト始動

「2年後にはもう、宇宙での植物生育実験がはじまっている。やっとここまで来ました」

目を輝かせながらこう語ってくれたのが、デジタルブラスト代表の堀口 真吾さんだ。

「今後、人が月面に住むことを前提とした実験をしていきます。最終的なゴールは宇宙での自給自足。その第一歩が植物生育実験です。たとえば重力が弱い月では、植物は違う動きをすると言われている。仮説では「茎・根はそれほど伸びず、その分成分や味が凝縮されるのでは?」と。本当かどうか確かめるため、月の重力を人工的に作り出す「重力発生装置」を開発しています。この装置を打ち上げ、国際宇宙ステーション(ISS)に設置、装置内で植物を育てモニタリングしていく」

すでにJAXAに申請を出し受理もされている。現在は製品の安全審査に向けて装置のアップデートを進める最中だ。

彼らは何のためにこういった実験を仕掛けていくのか。

「宇宙に経済を作りたい。今は人工衛星やロケット、惑星探査がメインです。ただ2025年頃からは有人探査、短期滞在、居住環境の構築が始まると言われています。月や火星に人が住む。モノを作り、売買する。今後地上で求められる多くのことが宇宙でも求められるはず。そこで大きなビジネスチャンスが生まれるでしょう。宇宙産業全体が盛り上がることをやっていきたい」

その志を追った。

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重力発生装置AMAZ(アマツ)
明治大学農学部との共同研究で開発を進める。月面と同じ重力(地球の6分の1)を再現し、宇宙環境と月面重力における植物生理の研究を実現することが目的だ。現在プロトタイプが完成し、地上での実験を進める。2024年に国際宇宙ステーション(ISS)への設置・運用を目指す。

「宇宙のビジネス活用」に注がれる熱視線

デジタルブラストの社内には、野村総合研究所、日本IBM、A.T.カーニーなど出身のメンバーが集っている。

具体的にはどのような事業を展開しているのか。基幹となっているのが、人工衛星データを使ったコンサルティング事業だ。

「人工衛星データの活用や、それに向けた政策提言。また一部JAXAの受託業務などを行なっています。特に通信、エネルギー、デベロッパーなど社会インフラ領域をメインに、宇宙に参画したいと考える法人へのリサーチ・コンサルティングが私達のコア事業です」

続けて、人工衛星データが今どう注目されているのか教えてくれた。

「たとえば災害時、その場所の「今の」状況が分からなければ適切な対応ができません。人工衛星なら撮影時に人を危険にさらすことなく、24時間体制で緊急観測にも対応できる。地球を周回しながら広域的に写真を撮り、データ取得できるので、広域の観測と相性が良いんです」

防災や安全保障を考える際に重要性が高まる人工衛星だが、さらにニーズも広がっているという。一例を教えてくれた。

「金融業界では、損害保険会社に導入される事例もあります。また、東南アジアでは衛星から人口を捉えて不動産価値を算出したり、GDPなど経済指標をマッピングさせることで経済予測にも活用されています。私が宇宙領域に関わりはじめた2015年当時と比べれば、格段に興味関心は高まっている。もちろん、まだ誰しもが宇宙の利活用を自分事として捉えられているわけではありません。だからこそ、私達の存在意義がある。宇宙に関する知見と分析能力を使って、あらゆる産業を支援する。そこが一番評価されている部分です。」

    デジタルブラスト

代表取締役│堀口 真吾
野村総合研究所、日本総合研究所などで金融系システムエンジニア、コンサルタントとして宇宙産業などを中心に担当。デジタルテクノロジーを活用した新規事業開発、マーケティング戦略の立案・実行に携わる。2018年、株式会社デジタルブラストを創業。

宇宙での実験データで、事業開発せよ

デジタルブラストで働く魅力について堀口さんはこう語る。

実験装置を作り、保有していることは私達の強みです。たとえば重力発生装置AMAZ(アマツ)を活用したユニークなプロジェクトも進み始めていて。1つが「宇宙ビールプロジェクト」です。ビール酵母は微生物の一種。宇宙で作った酵母を地球に持ち帰り、「宇宙発のビール」を製造、販売していく。世界初の取り組みです」

さらにその先、事業展開も構想についても伺えた。

「宇宙で得た実験データは地上にも転用できると考えています。例えば、「植物が育ちづらい」と言われる宇宙環境下で植物生育データが取れれば、地上の農作業にも転用できるかもしれない。アイディア次第で事業を生み出せる。そこに惹かれて仲間になってくれるメンバーも少なくありません

宇宙産業と共に歩む覚悟

最後に伺えたのが、堀口さんの事業にかける想いだ。

「これまで宇宙領域は長年官が主体となってきました。ここに民間の力を発揮することで、大きいインパクトを生み出せると思います」

初めて仕事を通じて宇宙と関わったのは、新卒で入社した野村総合研究所時代。宇宙政策関連のコンサルティングやリサーチをする中で、その魅力にのめり込んでいった。

「地上では当たり前のことでも、宇宙にはまだないものばかり。なぜないんだろう?と思ったのが最初でした。たとえば実験装置も、大手メーカー各社が昔から開発しています。ただ、なぜか「宇宙で使う装置」に限定するとほぼありませんでした」

小さな疑問が、起業への想いにつながっていく。

「民間企業だからこそできる発想があるんじゃないか。システムエンジニア、コンサルタントとしてJAXAに入り込み仕事をさせてもらう中で、JAXAの仕組みを理解できました。次は民間の入る余地を探し、自分の手で事業化を実現したい

AMAZ(アマツ)打上げ予定はそこまで迫る。そして3年以内には宇宙領域のスタートアップとして初のIPOを狙うという。

「今はとても面白い状況だと思います。世界初のプロジェクトも多いですし、やっている側も楽しい事業ばかり。毎日慌ただしく過ぎますが、どこか「仕事」と感じていない自分もいて。今後どこまで爪痕を残せるか。人生をかけて楽しんでいきたいと思っています」

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