日系グローバルコンサルティングファームで、ITコンサルタントとして働いていた松田 卓也さん(30)。彼が転職先に選んだのは統合型経営プラットフォーム構築を進める「freee」。企業規模で言えば1/5以下、そして職種もコンサルタントからカスタマーサクセスへ。なぜ、freeeに転職し、職種転換をしたのか。そこに求めたのは「経営の伴走者」として手触り感が得られる環境だった――。
はじめに前職の仕事内容から伺ってもよろしいでしょうか。
コンサルティングファームで、大企業向けのITコンサルティングに従事していました。主に担当していたのは、Salesforce製品の導入提案を通じた、営業業務効率化のプロジェクトでした。
いずれも大規模なプロジェクトで、関係者が多かったため、全国に出張して、実際に営業現場の方に話を聞くことも。現場の声を聞きつつ、ディスカッションを進めながらシステムの要件に落としていくなど、今振り返ってもやりがいはあったと思います。
そこからなぜ転職を考えるようになったのでしょうか。
当時の仕事でいえば、ほとんどがプロジェクトベースのため「お客様のその後」が見えづらい環境でもありました。自分が介在した結果、どのように現場が良くなったのか、経営にどういったインパクトが与えられたのか。「お客様のその後」を感じることができる環境で働きたいと考えるようになりました。
また、働くマインドとしても「ここまで頑張ろう」「ここまで頑張った」とプロジェクト単位で区切りがあったため、長期的にキャリアやスキルのつながりを感じづらい部分もあったように思います。
松田 卓也(30)セルフサクセス企画
上智大学経済学部卒。2016年4月新卒でグローバルコンサルティングファームに入社し、コンサルタントとして大企業向けのITコンサルティングプロジェクトに携わる。2021年2月よりfreeeでカスタマーサクセスに従事。認定アドバイザー(税理士)とユーザーの接点を増やす施策やユーザーインタビュー等を通じて、ユーザーが「安心してfreeeを活用できる状態」を構築する。
その中でも、なぜ「freee」だったのでしょうか。
きっかけは転職エージェントからの紹介でしたが、話を聞くなかで、社内のコミュニケーション、そして意思決定が本質的だと感じました。
例えば、freeeには「マジ価値」という社内独自の言葉があって。これがまさに体現されているのですが、お金、時間、人員…あらゆる制約を一回全て取り払った上で「本当に届けるべき価値」を考え、追求していく。freeeの社員全員が「マジ価値」を前提に持っており、自分事として動く。これは本当に素晴らしいことであり、同じ熱量で自分も働きたいと思いました。
前職では、契約に基づきプロジェクトを成功させることを最優先とし、その中でより価値を届ける方法を常に考えていました。しかし、どうしてもリソースや納期に制約があり、自分自身やり切れないもどかしさを感じていました。難易度が高いプロジェクトを成功させることにやりがいを感じる一方で、freeeの一員として「マジ価値」を追及してみたいと感じ入社を決めました。実際、入社後もその熱量にギャップはないですね。
「スモールビジネスを、世界の主役に。」を掲げるfreee。「freee会計」に始まり、給与計算や勤怠管理などを行う「freee人事労務」や、会社設立・開業時に必要な書類を一括作成する「freee会社設立」「freee開業」などを提供。統合型経営プラットフォーム提供へと舵を切り、さらなる飛躍を目指す。2019年12月東証マザーズ市場に上場。
職種としてはITコンサルタントからカスタマーサクセスに転換されたと伺いました。そこに抵抗はなかったですか?
そうですね。むしろ顧客折衝やソフトウェアを扱ってきた経験が、事業会社におけるカスタマーサクセスで活かせるとわかって、大きなチャンスだと感じました。
また、カスタマーサクセスと聞くと「顧客対応」のイメージがあるのかもしれませんが、特にfreeeで行うのはプロダクト改善の企画・検証などの上流フェーズです。私は、お客様自身が一人で立ち上がれる状態を目指す「セルフサクセス*」を担う部署に所属しており、できるだけ人が介在しなくても、お客様がバックオフィス業務の煩雑さから開放され、創造的な活動にフォーカスできるよう支援しています。
*freee社内のカスタマーサクセスは、有償導入支援を中心とした1:1での各種支援サービスの企画・提供を行う「ハイタッチサクセス」と、自力で導入工程を進めるユーザー向けの各種支援コンテンツ企画を担う「セルフサクセス」、ユーザーからの問い合わせ対応を中心としたサポート業務を行う「カスタマーサポート」の3つに分かれている。
「セルフサクセス」では、どのような仕事を行っているのでしょうか。
業務範囲は多岐に及びますが、大枠でいえば“よりfreee会計を長く、安心して利用していただける状態を作る”、ここがミッションです。お客様が「freee」を使い始めたものの、躓いてしまうポイントはどうしてもあるもの。実際、どういったことに困っているか、どういったところで躓くのか。整理した上で「こうすれば解決できるのでは」と道筋を立て、企画と検証をしていきます。
当然、初期設定画面の改善、チュートリアルの作成などプロダクト改修が必要となれば、エンジニアとも日々協力していきます。また、精緻な効果検証も行うため、データ分析チームとも連携していく。ユーザーインタビューも頻繁に行うなど、プロダクトを日々アップデートさせていく役割も担っています。
とくに仕事でやりがいを感じる場面があれば教えてください。
さまざまな指標がありますが、freee活用度を示す数値が、自分たちが考えた施策によって跳ね上がった時は大変嬉しかったのを覚えています。数値で結果が明確になるため「こんなにも多くのユーザーさんを救うことができた」と実感ができました。
また、そのプロセスでユニークであるのが、お客様それぞれの事業フェーズが異なることです。例えば、創業直後で「銀行口座ができたばかり」という方もいれば、「freeeは導入してしばらく経つがあまり活用できていない」という方もいる。お客様は年代、地域、業態もさまざま。それらを分析した上で、打ち手を自分たちで考え、プロダクトや支援コンテンツを日々作り込んでいけるのも、事業会社で自社プロダクトを育てる喜びかなと思います。
これも前職との違いですが、お客様の声を直接もらえるのも、やりがいにつながっています。ユーザーインタビューでは「大変助かってます」「毎日freeeを開いているよ」という言葉を頂けて。たとえば、あるユーザーさんは一人で事業をされている方で、会社設立時からバックオフィス業務全般までfreeeのプロダクトを使ってくださっていて「完全にfreeeのファンなんだよ」と。自分の夢、家族、社員の生活…みなさん、さまざまなものを背負って事業を手掛けていて、そのパートナーになれている実感を持てるのは嬉しいです。
やりがいに続き、freeeで活躍していくためにも知っておいた方がいい“厳しさ”についても語ってくれた松田さん。「数多くある課題に対し、自ら優先順位をつけて深堀っていくことが求められます。正直私もはじめの頃は「これは本当にいま取り組むべき課題なのか」「リソースをかけるべきなのか」と不安に感じる場面も。わかりやすいプロジェクトのゴールもありません。誰も正解を持っていないからこそ、考え抜く。この点はfreeeで活躍していくためには求められる部分だと思います」
特にfreeeに入社することで得られた経験、スキルがあれば教えてください。
もちろんカスタマーサクセスというメインの役割がありますが、自身の領域を超えた仕事も多く、データ分析にせよ、プロダクト開発にせよ、プラスアルファの部分での知見も多く得られていると思います。わかりやすいところで言えば、TableauやMarketoなどのBI、MAツールなどはかなり詳しくなった部分です。また、前職時代に扱っていたSalesforceも、ユーザーとして使う機会が多いですね。
抽象度の高いスキルでいえば、正解のない問いや課題に対し、仮説を立て、一個ずつ検証していく。この細かい課題解決のプロセスを素早く踏めるようになったと感じています。また、その時に重要になる「ユーザーの声を聞いた上で、より確度の高い仮説検証を行う」という部分もfreeeで得られた経験です。
成長フェーズの会社で働くことをどのように感じていますか。
一社員としての個人的な意見ですが、売上高は伸びており「数年先まで見据えた大きな投資をしていく」という分岐点、より大きなチャレンジのフェーズにあると捉えています。どんどん会社自体の規模も大きくなっており、役割もたくさん出来てきていて。今このタイミングに身を置くことができることに、すごくワクワクしています。こればかりは、仕組みが出来上がっている成熟した企業にはない環境かなと思っています。
最後に今後の目標や、目指すところがあれば教えてください。
抽象的になってしまって恐縮ですが、自分でやりたいことを実現するための道筋が立てられる状態が理想だと考えています。この先、「このテーマに取り組んでいきたい」となった時に多くの選択肢が持てているか。個としてのスキルアップももちろんですが、誰に頼めば、何ができるのか。その人にどう協力を得ていくか。どこまでができて、何ができないか。課題解決に向けて、こういった道筋が立てられる経験を積みたいですし、能力、考え方含めてさらにレベルアップしていきたいです。
仕事においてより影響範囲を広げ、介在する価値を高めていくということでもありますね。
そうですね。私自身、仕事を通して社会やコミュニティとつながっていると思っています。なので、やるからにはできるだけ社会に貢献し、ポジティブな影響を与えていくことが重要だと考えています。それができて初めて、その仕事が自分にとって「本当に価値がある」と思える状況になると思うので、これからもそういうマインドで、仕事を続けていきたいです。