2022年10月東証グロース市場上場を果たしたウェルプレイド・ライゼスト。22年10月期決算は売上高22%増、営業益64%増となり、更なるビジネス拡大が期待される。彼らはいかにeスポーツをビジネスとして成立させてきたのか、そして成長産業へと押し上げ牽引していくか。そんな同社で働くことで得られるキャリアとは。代表取締役の谷田優也さんに伺った。
次世代のエンターテイメント・成長産業としてのポテンシャルが期待されるeスポーツ。
・2022年10月のライブ配信視聴ランキング(*1)ではゲーム配信者がトップ5を独占
・2億人超(米国スーパーボウルに匹敵)がLeague of Legendsを視聴
・IOCの国際大会「オリンピックeスポーツウイーク」開催決定(*2)
・2021年7月、日清食品がeスポーツチーム「ZETA DIVISION」のスポンサーに
・コカ・コーラ協賛、高校生eスポーツ大会「STAGE:0」が定期化。2022年は2,000超の学校が参加(*3)
「業界全体に追い風が吹いている。eスポーツ事業に取り組むプレーヤーはまだ数えるほど。非常に大きなビジネスチャンスが広がっている」
こう語ってくれたのが「eスポーツ総合商社」を標ぼうする、ウェルプレイド・ライゼストの谷田優也さん。
「僕らはeスポーツの熱狂を0から創り、そして世界を変えていく。eスポーツが世界スポーツ大会で競技として認めてもらうためにも、より多くのスポンサーを獲得してあらゆるゲームのイベントを企画、インフルエンサーをキャスティングするなどして、ゲームを見ている人たちを増やしていく。ゲームを、メジャースポーツに匹敵するものにしていく。見ることが当たり前のカルチャーを根付かせていきます」
同社の強み、さらなるビジネス拡大の可能性、成長産業でキャリアを築く魅力に迫った。
(*1)配信技研
https://www.giken.tv/news?offset=1668063072087
(*2)初のオリンピックeスポーツウイークの開催地がシンガポールに決定、IOCが発表 2023年6月開催
https://olympics.com/ja/news/ioc-confirms-singapore-host-first-olympic-esports-week-june-2023
(*3)STAGE:0 2022年大会
https://stage0.jp/results/2022/
代表取締役 谷田優也
IPデジタルコンテンツのプロデューサーを務めた後、スマートフォン向けアプリのプロデュースを行う。「ゲームが上手い人を賞賛できる世界を創りたい」という思いから、日本初のeスポーツ専門会社としてウェルプレイド(現ウェルプレイド・ライゼスト)を設立。自身の幅広い人脈を活かし、eスポーツを軸に様々な人を招いて行うトークイベント「ゆるふわeスポーツ座談会」も主催。家庭では1児の父。「子どもとゲームの上手な付き合い方」などのテーマについてもWebメディアや書籍で記事執筆の実績がある。
eスポーツ領域では初といわれる上場。その狙いから伺うことができた。
「1つは、現在のeスポーツが獲得している可処分時間を考えれば、間違いなく次世代のエンタメの中心的存在になっていく。将来オリンピック・パラリンピックの正式種目にもなっていくはず。eスポーツがビジネスとして成立することを証明するためにも、まずは自分たちが上場しようと考えました。つまり、上場することが、eスポーツ市場の可能性を証明するうえでも、一番の近道だと思ったんです」
そして、現在収益の6割以上を占めるのが、ゲームメーカーからのイベント受託制作だ。
その強みとは。
「どのゲームに対してもクオリティの高い企画、適切なキャスティング、カメラワークなどの魅せ方、スロー・リプレイなどの舞台演出を担保できる。これが、当社に価値を感じていただいている最大のポイントです。ゲームメーカーや従来のイベント制作会社では難しいですが、当社には各ゲームに精通したゲーマー社員が在籍しており、まさに配信やイベント含め、eスポーツのプロフェッショナル集団と言えます」
メーカーサイドが「そのゲームをどう魅せて配信していくか」のみを考えるチームを社内で抱えるのは非効率。まして、ゲームはトレンドの変化が激しく、毎年20~30タイトルが入れ替わっていく世界。流行りのゲームを随時キャッチアップし各ゲームに合わせた演出や企画の品質を担保していくというところをやり抜けるイベント会社は少ないという。
同社には、「フォートナイト」で勝利数日本9位、「PUBG: BATTLEGROUNDS」世界大会16位、「荒野行動」日本1位、「ストリートファイターV」プロ選手ライセンス保持者など、各種ゲームのゲーマーが在籍している。そのため、たとえば、100人同時プレイするゲームなどもにおいても、同社の社員がゲーム内カメラマンとして潜入し、いつどのシーンを映せば視聴者として満足いくのか適切に見極めることが可能。また、ゲーマー社員を通じて、どんなゲームのコミュニティとも接点を持てることは、キャスティングにも活きてくる。「社員を通じて、新たな人材を発掘できることも多い。例えば対象のゲームにものすごく詳しくて、一部のコミュニティで信頼されているけど、まだ表舞台には出ていない方に実況や解説を任せてみたところ、ゲームメーカーの方からも非常に好評で「あの解説者、どうやって見つけて来たんですか?」と聞かれたことがあって。実はもともと当社の社員が普段から一緒にゲームしてる人だったり、知り合いだったりする(笑)いわゆるマイクロインフルエンサーに対して新しい活躍の場を提供していけるといった点も、私たちならではだと考えています」と谷田さん。
さらにウェルプレイド・ライゼストでは、eスポーツを起点とした新たな市場開拓を進めている。一つキーワードとなるのが「地方創生」だ。
eスポーツに注目し、新たなチャレンジをしたいと考える企業や自治体との連携を進めている。
「例えば京都府はお膝元に任天堂さんがあって、元々ゲームをすごくポジティブに捉えていて。何年も前から様々な取り組みを進めています。その一つが、『京都eスポーツサミット』。ゲームメーカーや大学の方も巻き込み、「eスポーツは本当に教育に悪いのか?」といったテーマで議論するセッションなどを行なっています」
さらに2022年6月より、「eスポーツ先進都市」の確立を目指す、大阪府泉佐野市とともに様々な施策を展開している。
「前提として泉佐野市は、関西空港が近く国内外からのアクセスが良いエリア。この地域になにかしら来る理由をつくりたいと、eスポーツに着目いただいていました。高校生をはじめ、若者が訪れる聖地にしたい。プロジェクトの第一弾として手掛けたのが、『eスポーツキャンプ』。高校生が最高の環境で『VALORANT』のスキルアップを図る、3泊4日の合宿です。夏休みや冬休みなど、自分の時間を使う時に、eスポーツで色んな人たちと知り合い、コミュニティをつくり、繋がっていく機会にもできればと考えました」
その先に見据える展開についても語ってくれた。
「あるゲームでその年に活躍した世界のプロチームと、日本代表チームが泉佐野市で対戦する。その試合を観戦するために、日本や世界から人々が泉佐野市に集まる、といったカルチャーを生み出したい。サッカーでは、シーズンオフになると日本代表が世界各国の代表チームと親善試合を行なう『キリンチャレンジカップ』が開催されており、ブラジル代表が日本に来るとなればファンはスタジアムまで観戦に出向きますよね。同じことをeスポーツにおいても実現する。毎年恒例のイベントにして、聖地で合宿したいと思う人も集まってくる。地域を盛り上げることにもつながっていくはずです」
そして、谷田さんがこの先実現していきたいことについて伺えた。
「オリンピックのような、競技として世界中から称賛される場所をつくっていきたい。例えばスケートボードは、もともとアンダーグラウンドなイメージもあったスポーツですが、オリンピックで堀米さんが金メダルを獲得したほか、日本人選手が活躍した。世界で賞賛される姿を目にしたことで、一気に世間からの注目のされ方が変わったように思います。eスポーツがオリンピックの正式種目に採用され、選手が活躍する姿を多くの方が目の当たりにすれば、一気にeスポーツが肯定される世界がくるはず。ゲームしていることがダメなことではなくて、ゲームを頑張ってきた、と胸をはって履歴書に書けるような世界にも近づけるのではないかと考えています」
そのためにも目先の目標となるのが、様々な人がeスポーツに触れる時間を増やしていくことだ。
その1つの打ち手となるのが、プロゲーマーだけでなく、人気タレントやアスリートのような影響力を持つ方を大会にキャスティングしていくこと。
「今後はいわゆるトップ・オブ・トップのプロの大会だけでなく、様々なインフルエンサーたちとのシナジーを生みながら、色んな人たちにリーチできる新しいコンテンツの企画に挑戦していきたいと考えています。実際に有名なタレントさんがポジティブにeスポーツ大会に出場いただくことで、ファンの方が知るきっかけになっています。タレントさんが一緒にプレイしているストリーマーの方を賞賛したりリスペクトをもって接している姿を見ることで、ファンも興味を持ってくれるだけでなく、その配信者の方々の価値を上げていくことにもつながっている。また、プロチームや配信者の方たちの価値を引き上げていくという観点では、多くのナショナル企業にスポンサーについていただくための営業活動も求めれる、今回入社いただく方と一緒につくっていければと思っています」
最後に、今入社することで得られる環境についても触れてくれた。
「私たちも着実に売上や利益をつくり、上場するところまできましたが、まだできていないことは多いですし、可能性は無限にある。そもそもこの領域には、まだなにをしたら正解かというベストプラクティスのようなもの自体、存在しない。こういうニーズがあるはず、こういうことをやった方がいい。そうした知的探究心をもって取り組んでほしいと考えています。そして、どういった領域が好きか、どういうことにチャレンジしたいのかどんどん発信してほしい。能動的に様々なことに挑戦したい方にとって、多くのチャレンジのフィールドがありますので、そういった方と一緒に働きたいですね」
谷田さんによれば、eスポーツ自体、新しい領域なだけに、異業界・異業種の出身者がほとんどだという。「メンバーのバックグラウンドはとにかく多様です。たとえばもともと裁判所で働いていたメンバー。あと何年間か働いたら裁判官になれるキャリアを歩んでいるなか、ゲームの大会に出場した時の感動が忘れられず、支える仕事をしたいと入社してくれました。選手の規約・ルールづくりの面で、大きく力を発揮してくれています。他にも、元々有名タレント事務所で働いていて、大手舞台の華やかさを知ると同時に裏方の大切さを知り、裏側で手伝いたいと入社したメンバーもいる。また、必ずしもゲームの腕前や知識は問いません。ゲームはしたことがないけど、ゲームを使ってコミュニティづくりをしたいと入社したメンバーや、ただただゲームがもたらすエネルギーに感銘を受けて入社した人もいる。皆バラバラですが、1つ共通していることがあるとすれば、なにかに感動したこと、強烈に心動かされる原体験を持っているということ。そういった経験を、ぜひ面接の場でも聞かせていただけるとうれしいですね」