INTERVIEW
リンクタイズ

Forbes JAPAN発「新規事業」始動へ――編集長・藤吉 雅春の志

Forbes JAPAN運営、リンクタイズ社が新規事業を立ち上げへ。キーワードとなるのが、地域活性化にとどまらない「日本全体の活性化」だ。その概要、立ち上げに携わるやりがいについてForbes JAPAN編集長の藤吉 雅春さんに伺った。

リンクタイズ社について
世界45ヶ国版、合計27言語を全世界76ヶ国で発行するビジネス誌「Forbes」(2023年7月時点)。その日本版「Forbes JAPAN」を運営するのが、リンクタイズ社だ。同社が掲げるのは「新結合で豊かな社会を実現する」こと。メディア事業を核に培ってきた知見とネットワークをもとに、新しい価値を創出していく。

Forbes JAPANについて
『Forbes』の日本版として2014年6月に新創刊。グローバルな視点を持つ読者たちに向け、『Forbes』US版、各国版の記事をキュレーションし、日本オリジナル記事と共に構成。毎号ライフスタイル記事を同載し、読者へオンとオフの情報を発信している。Forbes JAPANが掲げるのが「ポジティブ・ジャーナリズム」。ステレオタイプの皮相な批判に陥ることなく洞察によって本質を見抜き、多くの人が気づかずにいる、隠された真価を発見することに注力している。

日本全国の中小企業や地域に、『Forbes JAPAN SALON』で活気を。

まずは、新規事業について、概要を教えてください。

私たちは、2021年に『Forbes JAPAN SALON』を立ち上げました。これは、未来を切り拓くリーダーのための会員制コミュニティです。Forbesというグローバルメディアブランドならではの求心力を活用し、能動的に出会いを求める経営者たちを繋ぐ「場」と「機会」を提供しています。ネットワーキングをメインに、有名企業のリーダーのトークセッション等のコンテンツを通して、日々の経営や業務に活きるノウハウ提供を行なうような機会も設けています。

そして2023年、さらに事業を拡大させていきます。我々のプロジェクト『SMALL GIANTS*』では、各地のリーダー・イノベーターを取り上げているのですが、そうした地域活性化の取り組みに共鳴いただいていたSBIホールディングス、東京理科大学とタッグを組みました。今後、『Forbes JAPAN SALON』の会員数を拡大し、全国の中小企業や地域を盛り上げるコミュニティとして進化させていきます。

 *『SMALL GIANTS』
「Forbes JAPAN」が展開する、地域に根差す小さくても偉大な企業や、各地のリーダー・イノベーターを取り上げるプロジェクト。規模や知名度は"スモール"だが、価値は"ジャイアンツ"なリーダーたちにとっての、道標となるコンテンツを発信し、"小さな巨人"にスポットライトを当てている。

Forbes(スモールジャイアンツ)

『Forbes JAPAN SALON』設立のきっかけはなんだったのでしょう?

きっかけは、2019年に行なった創刊5周年パーティーでした。優秀なリーダーたちが、地域、世代、ジャンルを超えて一堂に会すると、彼ら/彼女らのアイデアや知性、感性がスパークしていく光景を目の当たりにしたんです。

これまで誌面に登場した大企業やスタートアップの経営者、若きクリエイターたちを招き、都内はもちろん全国各地から参加いただきました。その日、私は壇上で会場の皆さんに向けて話していたのですが、誰も私の話なんて聞いていなかったんです(笑)。会場のあちこちで全国のスタートアップの若いリーダーと大企業の社長が立ち話をしていて、どのグループも話に花が咲いている状態。マイクを通しても私の声など届かないほどに盛り上がっており、パーティー終了まで誰も帰ることなく大盛況のうちに終わりました。

その時、凝った出し物などがなくとも、「社会を変えたい、よくしたい」という思いを持つ人同士が出会う場さえ提供できれば自ずと新結合が生まれていくことに気づいたんです。ただ、意外と優秀なリーダーたちが、地域、世代、ジャンルを超えて一堂に会する場はありませんでした。ならばForbes JAPANが、リーダーたち全員が同志・メンバーとして刺激しあえる場をつくろう。そう思ったのが事業の始まりです。

ネットワーキングの先には、どういったことを実現していきたいとお考えですか。

「運」がいいリーダーの共通点は、行動量が多い。行動すれば失敗もありますが、それ以上に失敗を糧にしてラッキーな出会いも多い。運をもたらすのは学びのある行動しかないと思っています。そして、これにより中小企業の、ひいては日本のプレゼンスを高めていくことにつなげていきたいと考えています。

過去の事例でいえば、『SMALL GIANTS*』で取り上げた他県の企業同士がコラボし、シナジーを生み出しています。コロナ禍、マスク生活でメガネがくもるというお悩みに対し、大阪の「釜焚き」製法で有名な老舗石鹸メーカー「木村石鹸工業」と、福井県鯖江市の人気メガネブランド「BROS JAPAN」の2社の共同で、メガネの汚れ落としからくもり止めまでカバーできるクリーナーを開発し大成功したんです。

通常であればおよそ結びつくことのなかったであろう2社のタッグは非常に注目され、他のメディアにも取り上げ話題になりました。これはあくまで氷山の一角で、私が認識していないところでたくさんの新結合が生まれている。今後は、こうした事例をより増やしていくためにネットワーキングから支援していきます。

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Forbes JAPAN SALONでは経営者とのトークセッションも行なっている。「先日、ポーラの社長・及川 美紀さんとトークセッションを行ないました。彼女はたたき上げで社長に昇りつめ、日本初の化粧品業界の女性社長となった方。全国で2万数千人ものビューティーディレクターのモチベーションをどのように高め事業成長につなげてきたかについてお話しいただきました。会場は非常に盛り上がり、参加者からの質問が止まりませんでした。「感銘を受けた」「こういう人の話を毎日でも聞きたい」という感想をたくさんいただきました」

「中央」と「地方」が溶け合う歴史的瞬間を、この目で

新規事業を拡大していくにあたり、今後入社するメンバーに求められる役割について教えてください。

現状、Forbes JAPAN SALON事業は、営業、クライアントサクセスを含めてまだ3名の組織です。さらなるコミュニティの拡大に向けて増員していきます。

特に、これから本格的に進めていくのが、地方のアントレプレナーの会員獲得です。

既に地方のネットワークは豊富にあります。元々、私はずっと日本中をノンフィクションライターとして取材して回ってきたこともあり地方の企業・スタートアップの経営者との知り合いが多く、その経営者の方々からの紹介で地銀、信金などの金融機関とはつながりがあります。ほかにも、地方創生を専門とされている大学教授、私の仲間が立ち上げた事業継承問題に挑む一般社団法人など、ハブとなるような組織は一定おさえられている状況です。

会員獲得に当たっては、そういった組織・企業にアプローチをしていくことになります。また、現在関西エリアを中心に、ESG経営や社会課題の解決に取り組む企業に与えられる「S認証*」を獲得する会社が増えています。こうした企業を束ねる組織などにも働きかけていければと思っています。

*S認証
ソーシャル企業認証制度(通称、S認証)は、ESG経営や社会課題の解決を目指す企業に対し、経営方針や事業内容、社会的インパクトなどを基準に、評価・認証を行う制度。2023年10月時点で934件が登録されている。引用:https://besocial.jp/

今のタイミングで入社すると、どういった経験が得られると思いますか?

1つは、「中央」と「地方」が溶け合っていく瞬間や、イノベーションが起こるプロセスに伴走できること。2023年、2024年という「今」を体験できるライブ感があり、次世代をつくっていく醍醐味を感じられると思います。

もともと「中央」と「地方」という考え方は、約150年前の明治維新の時に作られた概念です。江戸時代は各藩にリーダーがいて自治をしていていたところに、中央集権国家をつくらなければならなくなり「中央」と「地方」という上下関係が生まれました。

ただ、現代はインターネットが発達し、様々な便利なツールが登場しています。どんどん距離や時間の制約を受けない形に変わってきている。事実、『SMALL GIANTS』を企画するなかで、東京の企業が上で地方が下ということはありません。

私たちは、こうした無名だけど偉大な企業を掘り起こし、ネットワーキングしていくことによって、「中央」と「地方」の垣根をなくして日本を面白くしたいのです。歴史的に見ても、非常に面白いときに立ち会えるはずです。

特に私たちが向き合うのは、あらゆる社会課題に立ち向かい、日本を変えていこうという志を持つリーダー層、 あるいはリーダーになりたい若者。いわゆるアントレプレナーたちです。こうした志を持つ人たちと関わり、引き合わせる仕事を通じて共に歩んでいく。その経験は、入社する方にとっても、自身の成長を助け、財産になるのではないかと思います。

その上で、もう1つ働く魅力を挙げるなら、新規事業をつくっていく経験を積めることです。チームの立ち上げから携わっていくことになります。自らチーム、組織、売上をつくっていく、その全てに関わることが可能です。きっと、自らの成長が、事業、そして会社の成長につながっていく連動性をダイレクトに感じることができるはずです。そして、Forbes JAPANであれば、「社会に対してものすごく大きな影響を与えられるかもしれない」という希望を持ちながら取り組める。こうした環境は、日本中探してもそうないと思います。

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新結合を促進していく背景にある、藤吉さん個人の思いについても伺えた。「イノベーションという言葉が生まれる前から、日本にはもともと相反するものをくっつけるカルチャーがありました。江戸時代の俳人・松尾芭蕉は「不易流行」という概念をつくっています。「不易」は世の中が変わっても変わらないもの、「流行」とは世の中の変化とともに変わっていくもの。相反する言葉を組み合わせたんです。元々、相反するものをくっつけるDNAはあったのだけれども、戦後そうした考え方が薄れてしまったように思います。私はこのカルチャーを取り戻したい。偉大な先輩のリーダーの思想、考え方、哲学は受け継いでいくべきなのではないかと思っています」

Forbes JAPANは、日本企業のグローバルゲートに

最後に、藤吉さんご自身が今後実現していきたいことがあれば、教えてください。

そのまま新規事業の内容と重なりますが、地域、年代、ジャンルなどを超えてリーダーたちをかき混ぜていくということをやっていきたい。組む相手を変えていくことで、より快適でインパクトのあるものを生み出すことができると信じているからです。

たとえば、埼玉のとあるバス会社の事例。過疎化により赤字路線だったところから、自治体や地域の施設などと連携したり、ダイヤを見直し1箇所に賑わいを集中させる戦略により、路線の再生だけでなくまちづくりを牽引する企業になりました。地方創生のモデルケースとして、いまでは世界中から視察に訪れていたり、海外にスキームを輸出するような取り組みも行なっています。企業が1社で生き残る時代ではなくなっている。他社との連携・関わりが重要になる今、コミュニティの価値はますます高まっていくと考えています。

また、Forbesが保有する「海外とのつながり」という資産を、より活用していくところにも挑戦したいと考えています。

手前みそですが、私は自分の発信したものが国を超えて届き、世の中に影響を与えるという体験をしたことがあります。2015年に『福井モデル - 未来は地方から始まる』という本を出版したとき、2016年に韓国版が発売され、韓国オーマイニュースの書評委員が選ぶ「2016年の本」で第1位になりました。結果、当時のソウル市長をはじめ、大統領府、大学、起業家たちと拙著を通して出会い、地域活性化を議論することができました。正直、全く予想していない展開でした。ですが、国境を越えて人に影響を与え、ときには国の政策にも影響を及ぼす、というのは非常に面白いことだなと思ったんです。

そういった意味で、Forbesは45ヵ国で展開するグローバルメディアなので、グローバルに影響を与えるような発信ができるチャンスがある。実際、日本版で組んだ特集が翻訳されてヨーロッパ版で紹介されたり、日本版で取り上げたリーダーたちが韓国や中国で紹介されたりすることもあります。つまり、Forbes JAPANは日本企業が世界に羽ばたくうえでの「グローバルゲート」になりえる。このアセットを活用することで、ビジョンでもある「世界から日本に、日本を世界へ」の実現にこれからも挑んでいきたいですね。

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