「圧倒的な技術力を持つ会社でコンサルができたら、最高に面白そう」Mujinを知ったときの感想についてこう語ってくれたのがI.Mさん(35)。同社でシニアコンサルタントとして活躍する彼女は国内大手完成車メーカー、大手外資系コンサルファーム出身。なぜ彼女は名だたる大手でのキャリアを捨て、次のステージにMujinを選んだのか。そこには「自ら成長できる環境に身を置き、重労働から人々を解放するというビジョンに貢献したい」といった志があった。
Mujinとは
▶「過酷な労働から人々を解放し、人類が創造性、技術革新、そして世界をより良くする活動に集中できる世界を実現する」というビジョンを掲げるロボットベンチャー。
▶主要メーカーの産業用ロボットを知能化するMujinのコアプロダクト「Mujinコントローラ」を開発・販売し、工場・倉庫などの現場の自動化を推進する。
▶トヨタ、花王、ファーストリテイリングなどの大手企業との取引実績がある。
▶中国、北米に子会社を設立するなど、グローバル進出も積極的に進めている。
▶2023年9月にはシリーズCラウンドで総額123億円を調達し累計調達額は205億円に。さらなる拡大に向け採用を強化するタイミング。
▶今後、物流・製造業におけるシェア拡大に注力していく。大手企業の工場においても、組み立てなどの製造ラインは自動化できていても、部品を供給するなど「工場・倉庫内の物流」における自動化は未着手なことも多い。Mujinはここに目を付け、グロースさせていく狙い。
決め手は、戦略を社会実装につなげていく手触り感のあるコンサル
国内大手完成車メーカー、大手外資系コンサルファームを経て、Mujinへ。ユニークなキャリアだと思いました。そもそもなぜ完成車メーカーからコンサルへ?
完成車メーカーで生産技術として働くなかでは、もともと大学時代は材料工学を学んでいたこともあり、やりがいを感じていました。一方で、完成車メーカーの組織内では活躍できていたとしても、社外に出たら通用するのだろうか、という漠然とした不安も感じていたんです。1つの組織に依存することなく、どこにいっても活躍していけるスキルを身につけたいと思うようになりました。そう考えたとき、コンサル業界であれば、仕事を通じて様々な企業と関わり、幅広い経営課題にふれることができる。ビジネスパーソンとして、より成長できるのではないかと考えました。そこで、大手外資系コンサルファームに入社し、モビリティ業界の戦略コンサルティングを経験しました。
その後、なぜコンサルからMujinへ?
コンサルファームでは、多様な企業と関わり戦略を練っていく経験をつむことができた一方で、技術、生産の最前線にいた私としては、実行まで支援できないことにもどかしさや物足りなさを感じていました。そのため、今度は「もっと手触りを感じられる仕事をしたい」という思いが湧いてきて。そんなときに、転職活動を通して出会ったのがMujinでした。
当初、Mujinのことを全く知らなかったのですが、調べていくなかで、自社で持つ技術を基にコンサルティングを行っている点に惹かれました。「ここなら私の技術的な知見を活かし、現場感がある仕事ができる。まさにやりたいことが実現できる」と思ったんです。
また、面接を通じ、優秀な人たちが世界中から集まっていると知り、そういった方々と働ける環境にも魅力を感じました。それまで大手で働いた経験しかありませんでしたが、不安よりワクワクが勝り、入社を決めました。
シニアコンサルタントとして働くI.Mさん。
人間で言う「知能」を、ロボットに
仕事内容について伺う前に、Mujinはどういったソリューションやサービスを提供しているのか、そこから伺ってもよろしいでしょうか?
少し専門的になってしまうのですが、私たちの主要プロダクトの1つが「Mujinコントローラ」という製品です。
これは、世界で唯一の汎用的知能ロボットコントローラであり、人間で言えば脳にあたる部分になります。これを主要メーカーのロボットアームに接続することで、自律的にロボットをリアルタイムで動作させることができ、革新的な技術として期待を集めています。
たとえば、「箱の中に様々な状態で置かれている部品が混在し、乱雑に積み重なった状態」は現場ではよくあることですが、すぐに目的の部品を取り出すことができるようになります。こうした動作を実現するには、従来であれば人間がロボットに1つ1つのロボット関節の動作を何千パターンも教え込む“ティーチング”を行わなければならなかったのですが、それが不要になります。
つまり、「Mujinコントローラ」を使った独自のソリューションを導入することによって、工場や倉庫などの作業者の方々の業務負荷を軽減し、より創造性が求められる業務に時間を使える状態を実現できるわけです。
今後、労働人口の減少によって人件費はさらに上がっていく。それを考えると、Mujinが提供するサービス、ソリューションはますます求められていくはずです。特に、物流業界においては、2024年問題といわれますが、ドライバーの労働時間の規制が厳しくなっていく。「自動化」は喫緊の課題です。現場の緊迫感は非常に高まっていると感じています。
自動化の未来に向け、実現可能なロードマップの構築を
コンサルタントの担う役割とは、どういったものなのでしょうか?
物流業界、製造業界の企業様に対して、現状の課題を整理し、自動化の未来に向けたロードマップの構築、そして実際に現場で実行していくまでをご支援しています。
ご支援するなかで感じるのは、「自動化」の必要性や危機感はみなさん持たれているものの、実際問題「まず何をどうしていけばいいのかわからない」という企業様がほとんどだということです。
さらに、自動化に必要となる、そもそものデータを整備できていない企業様も多く、データベース構築からご支援することもしばしばです。これまで現場で勘・コツ・経験で行われてきた業務を、1つひとつ数値化していく。非常に地道ではありますが、それなしには自動化の未来は拓けない。そういった意味では、粘り強さは求められるかもしれません。
一方で、非常にダイナミズムを感じられる仕事もあります。経営層や工場長の方々とお話するなかでは、「現状のデータ量で自動化を進めていく場合、完全自動化までに必要な予算、年数、どれくらいで投資を回収できるかを見積もってほしい」とご依頼いただくケースも多いです。なかには、大手小売企業様とパートナーシップを組んで、中長期的な物流構造改革を手掛けていく大規模プロジェクトも。実現できれば、社会全体にとっても大きなインパクトをもたらすはずです。
とくに仕事でやりがいを感じることは何ですか?
ご依頼いただく企業様は「まだ見たことのないエッジの効いた提案」を求めていらっしゃるケースが多いのですが、実際に「Mujinさんの提案は今までになかった提案で面白いね、ワクワクした」と言ってもらえたときは嬉しいですね。
Mujinに求められているのは、絵にかいた餅で終わらせない、他社の一歩先をゆく提案。業界をリードするロボットベンチャーとしての使命感に似た気持ちも芽生えてきましたね。
また、日に日に知見が深まっていく成長の喜びがあります。Mujinに入社してから、これまで関わったことのなかった物流業界についてイチから学びました。社内には各領域のプロが在籍しているため、物流未経験でもキャッチアップできました。さらに、それらを生産技術出身の目線で見たとき、「物流業界でもこれをやってみるとよいのでは」というアイデアが湧いてくる。自らの強みも活かしながら、改善余地に気付けたときは、レベルアップできていると感じられますね。
私にとって仕事とは、成長すること。そして、自らが成長することに私自身は楽しさを見出しており、結果的に人生が豊かになっていると感じています。
「Mujinの社員はユニークな人ばかりなので、仲間から得る刺激も大きいです。特に自分の考えを持ち、ディスカッションをすることが好きな人が多いですね」とI.Mさん。
重労働からの解放に向けた、土壌をつくる
今後の目標があれば、教えてください。
Mujinは「過酷な労働から人々を解放し、人類が創造性、技術革新、そして世界をより良くする活動に集中できる世界を実現する。」をビジョンとして掲げています。そのため、仕事を通じて、作業者の方々を「重労働から解放すること」に貢献したいと思っています。
現状、コンサルタントとして手掛けているのは、「人ありき」のオペレーションからの脱却、持続可能なサプライチェーンの構築。決して直ぐに成果が出る仕事ではありませんが、地道にコンサルティングを続けた先には、きっとビジョンが現実になる未来があると信じています。
難易度の高い課題に立ち向かわれているなかで、走り続ける原動力となっているものがあれば伺いたいです。
チームで協力しあいながら進められる。このカルチャーには、かなり支えられていると思います。確かに難易度の高い課題に向き合っているのですが、一人で悩んで抱え込むことはほとんどありません。物流の自動化という領域は、まだ「こうやればうまくいく」といった成功法があるわけではない。だからこそ、メンバー同士、それぞれ異なるバックグラウンドのベストプラクティスを持ち合い、社歴、職階に関係なく対等にディスカッションしながら最適解を導き出しています。チームみんなで、これからも難題を乗り越えていければと思っています。