INTERVIEW
ナンバーナイン

オリジナルWEBTOONが国内1位に。デジタルコミックエージェンシー「ナンバーナイン」の勝算

掲載日:2024/03/12更新日:2024/03/12
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デジタルコミックエージェンシー「ナンバーナイン」が躍進を続ける。2000名超の漫画家が利用する漫画デジタル配信サービスに加え、新たに手掛けたオリジナルWEBTOONが国内ランキング1位を記録(※)。そのヒットの裏側、事業成長におけるキーファクターとは。ナンバーナイン代表である小林琢磨さんに、その志と共に伺った――。

(※)『神血の救世主~0.00000001%を引き当て最強へ~』が2024年1月のLINEマンガにおける国内の月間販売額が1.2億円を突破。LINEマンガにおいて2024年1月度の国産WEBTOON1位となった。

目指すは、漫画の総合商社

まずはナンバーナインの会社概要について伺ってもよろしいでしょうか。

僕らナンバーナインは「すべての漫画を、すべての人に。」をミッションに掲げ、漫画に関わるさまざまな事業を展開するデジタルコミックエージェンシーです。

わかりやすいところで、まずは「漫画のデジタル配信サービス」を主軸に展開してきました。具体的には、漫画家さんから作品をお預かりし、最大135以上の漫画ストアに一括配信していくデジタル配信サービス「ナンバーナイン」を運営しています。現在、2000名以上の漫画家さんが利用しており、1万作品以上が配信されるプラットフォームにまで成長をし、今もまだまだ伸びているところです。

さらにそこでつながった漫画家さん、クリエイターさんとオリジナル作品を作っていこうとWEBTOON制作スタジオ「Studio No.9」を立ち上げました。すでにここから生まれたオリジナル作品『神血の救世主~0.00000001%を引き当て最強へ~』がLINEマンガにて国内月間販売額が1.2億円を突破し、国産WEBTOON1位となりました(2024年1月度)。

今後は、この作品を育てていくことはもちろん、同作に続くヒットを狙うなど、本格的にオリジナルのIP(知的財産/Intellectual Property)を生み出したい考えです。僕らは「漫画の総合商社」を目指すと表現しているのですが、これまで「流通」は手掛けてきて、WEBTOONで「制作」を。そして「出版」、さらにはアニメやゲームといった「メディアミックス」など漫画に関わるあらゆる事業を手掛けていく。そのためにも今まさに新たな仲間の募集を行っているところです。

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継続率96%!漫画のデジタル配信サービス「ナンバーナイン」成功のキーファクター

2016年に創業し、漫画のデジタル配信・スマホで読む体験が主流となる以前から、漫画家向けに「あらゆる漫画ストアへの作品一括配信」を先駆けて提供してきた「ナンバーナイン」。デジタル配信プラットフォームのパイオニアとしてその地位を確立した。

漫画家自身が権利を持つ作品において「発表・販売する場がない」「自力でのストア配信が手間」「配信後のプロモーションに手が回らない」などの漫画家がデジタル時代に抱える課題を解決。画期的なプラットフォームとして2000名以上の漫画家が利用し、1万作品以上が配信されるプラットフォームに成長を遂げた。

特に売上80%を漫画家へと還元する“漫画家ファースト”なモデルを構築し、継続率96%という圧倒的支持を獲得。ナンバーナインが打ち出した「売上の80%還元」はデジタル配信における業界のデファクトスタンダードに。さらに確定申告サポート、SNS代行、受託支援などのサービスを通じ、漫画家の認知拡大と信頼構築を実現している。

狙って生み出した、オリジナルWEBTOONの大ヒット

WEBTOONスタジオ立ち上げから約2年と伺いました。ナンバーナインとして新規事業だと思うのですが、なぜ、オリジナル作品でヒットを出すことができたのでしょうか。

そういった意味でいうと、デジタル配信サービスを運営してきた部分はすごく大きかったと思います。というのも、さまざまな作品を扱い、ストア配信していくなかで、どのような作品が売れるか、データを活用したマーケティング主導の作り方ができているからです。言ってしまえば、作品を「売る力」がある。何より売れっ子の漫画家さん、力のあるクリエイターさんとのつながりがあり、はじめから一流の制作陣とハイクオリティな作品づくりに挑戦ができました。つまり「売る力」と「作る力」両方を備えているのが僕らの強みだと思います。

同時に、WEBTOONに限らず、コンテンツ制作は「10本に1本ヒットが出ればいい」といった世界でもあります。どれだけ「これは確実にヒットする」と思っても不発に終わることもある。誤解を恐れずにいえば、ギャンブルに近い。だからこそ、たくさん打席に立ってバットを振り続ける。その点、今も伸び続けているデジタル配信サービスでの収益基盤があり、そこで得た利益をWEBTOON制作に投資していける。ここもナンバーナインならでは強みですし、思い切った挑戦ができるおもしろさにもつながると思います。

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小林琢磨|株式会社ナンバーナイン代表取締役社長 / コンテンツプロデューサー
1984年東京都生まれ。2007年に立教大学卒業後、株式会社USENに入社。新卒1年目からブロックMVPなどの営業成績を樹立し、2008年7月退社。同年同月、23歳でイラストに特化した制作代理店、株式会社サーチフィールドを設立し代表取締役社長に就任。2018年4月に退任するまで10年間代表を務める。2016年11月にホリエモンこと堀江貴文と一緒に株式会社ナンバーナインを創業。「すべての漫画を、すべての人に。」をMissionに掲げるデジタルコミックエージェンシーとして、現在は10,000冊以上の漫画作品を預かる。株式会社人狼、ミスティブ、アントレース創業メンバー。

印税率・制作費を公開。ルールは自分たちで作っていく

デジタル配信にしても、WEBTOONにしても、これまでにないアプローチからヒットにつながっていると言えそうですね。

そうですね。僕らはもともとインターネット業界中心のメンバーで創業したスタートアップでもあります。だからこそ、それまでの出版業界の常識に囚われないような新しい挑戦もできていて。その中でも特に大切にしてきたのが「とにかく漫画家さんに感謝されることをやる」という部分です。これからの時代、クリエイターさんに一番向き合える会社が勝っていくだろうと。

たとえば、デジタル配信にしても「売上80%を漫画家さんに還元するモデル」はそれまであり得ないことでしたし、WEBTOONにしても原作者さんや漫画家さんはもちろん、アシスタントさんはじめ、全工程に携わるクリエイターさんをクレジットに載せ、売上に応じた印税をお支払いするカタチにしています。

もっといえば、その印税比率も「全工程合計でナンバーナインに入金される金額の30~35%を支払う」とし、「1話あたりの原稿料(制作費)の目安」もオープンにしています。手前味噌ですが業界的にも革命だったと自負しています(笑)

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※Studio No.9におけるWEBTOON制作の印税率(左)と原稿料/制作費の目安(右)を公開している。
(Studio No.9公式 note「【Studio No.9】WEBTOON制作体制と原稿料・印税について」より引用

一般的には、制作費をできるだけ抑えたり、交渉したりしやすくするために表には出したくない情報ですよね?

僕らの考えはそうじゃないんですよね。アシスタントさんをはじめ、今まで日の目を浴びることがなかったクリエイターさんにもきちんと光を当てていく。「自分の名前が作品にクレジットされている」「売れれば売れるほど自分にも印税が入る」となれば、「いいものを作ろう」となるのが自然。制作に携わる全員が高いモチベーションで作業すれば、自ずと作品のクオリティも高くなります。僕らとしては通常より多くの印税をお支払いすることになりますが、ヒットすれば全く問題はありません。売れる可能性が1%でも上がればいい。実際「ナンバーナインと一緒に仕事したい」と400名以上のクリエイターさんに賛同いただき、これまで30作品以上の制作を行うことができています。

当然、自分たちでIPを作っていくとなれば、すぐに結果が出るとも思っていなくて。5年、10年というスパンで日本を代表するコンテンツを作っていきたい。そう考えた時、現時点では実力が足りない無名のクリエイターさんでも着色や背景制作から力をつけ、いずれ「一緒にやりましょう」と大きなプロジェクトに発展していく可能性もある。共にサービスをやっていく以上、創作で収益を得る「クリエイターエコノミー」から、クリエイターとして成功する「クリエイターサクセス」につなげていく。それが会社としての成長にもつながっていく。そういった良いスパイラルを作っていければと思います。

また、僕らは新しくWEBTOONをやるので、自分たちでルールを決めていきたい。印税率にせよ、制作費にせよ、明確に「この金額で発注します」とすれば、それが業界全体の基準になっていきますよね。そうすることで漫画家さん、クリエイターさんたちがいろんな会社から発注をもらう時の目安になります。もし、安く買い叩こうとすると悪い会社が出てきても回避できるし、僕らは同類扱いされずに済む。WEBTOON全体がダメな業界と思われないためにも、僕らが率先して印税や原稿料などの基準やルールをつくっていく。ひいてはそれが業界や文化の成熟につながっていくはず。これも業界をリードしていく存在となる上で、すごく大事なことだと考えています。

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現在では順調な成長を続けるデジタル配信サービスについて「2年ぐらいは赤字だった」と振り返る小林さん。「変則的なストックビジネスだったので2年以上は赤字を掘ったように思います。今でこそ知名度も出てきましたが、そもそも前例のないサービスだったので当時は怪しまれたりもして(笑)少しずつたくさんの漫画家さんに使ってもらえるようになり、“売上の80%還元”が業界基準になっていった。漫画家さんたちに利益を還元していけるようにもなり、よかったなと思っています。」

漫画の主人公たちは「壁」を乗り越え、レベルアップしていく

最後に小林さんにとっての「仕事」とはどういったものか、伺わせてください。

かなり難しい質問ですね(笑)そうですね、僕にとっての仕事はもう人生そのものかもしれません。社会人になると1日8時間、9時間、10時間と働くし、毎日続くわけですよね。会社の代表になると土日もあまり関係なく、ずっと仕事をしたりもして。地元の同級生からは「なんでそんなに頑張るの?」みたいに言われることも。ただ、あくまで僕の価値観ですが、シンプルに楽しいからやる。やりたいからやっているだけ。そもそも漫画が大好きで、この仕事をしているので趣味でもあるし、生きがいでもあるし。つまりは人生と仕事はほぼイコールなのだと思います。

仕事は「楽しい」ばかりではなく、困難や壁もあるとは思うのですが、どのようなマインドで向き合っていますか。

僕は中二病なところがあるから「おっしゃ!この壁を乗り越えてさらにレベルアップしていこう」と思いますね(笑)。それこそ漫画の主人公っていろいろなトラブルや危機を乗り越えて成長し、活躍していくもの。何も起きなければ物語としておもしろくありません。 今まで何度も大変なことはありましたが「漫画の主人公ならどうするか」と考えるし、そもそも「すべて乗り越えられるもの」と捉えていて。漫画のように、どんな困難やトラブルも乗り越えていくし、乗り越えていける。ぜひ、今回入社する方もこの漫画の主人公になってもらって、僕らと新しいチャレンジや冒険を楽しんでほしいですね。

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代表小林さんに聞く「面接で必ず聞く2つの質問」

1)自分を漫画のキャラクターに例えると、どの漫画の誰ですか?
僕らは漫画の会社なので、少なくとも漫画は好きであってほしいなと考えています。特に漫画のキャラクターに自分を例えるとその人のタイプや志向性が出るもの。なので、ナンバーナインらしい質問だと思い、毎回伺っています。まず主人公を選ぶか選ばないか。なぜそのキャラクターなのか。どう自分を分析しているか。今の会社のフェーズにフィットするか。そのあたりを見させてもらっています。

2)あなたにとって、優秀な人物ってどういう人ですか?
「優秀な人」の定義やイメージは人によってバラバラ。自分が思う「優秀な人」はある意味、「そういった人になりたい」といった理想だと捉えています。なので、現在できている/できていないに関わらず、目指す仕事の最高形、理想の人物イメージを知る意味で伺っています。直接的に「どうなりたいか」と聞いてしまうと抽象的になったり、取り繕った回答になったりするので、少し違ったアプローチで聞き、できるだけ本心について知りたいです。

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