INTERVIEW
神戸市 「公園・緑化+クリエイティブ人材」公募プロジェクト

なぜ、神戸市は「公園事業」にクリエイティブ人材を起用? 公園から新たな「まちの価値創造」へ

掲載日:2024/07/16更新日:2024/07/16

人口約150万人、政令指定都市のなかでも「人口一人当たりの公園面積」トップクラスを誇る神戸市。今回新たに公募するのが「公園・緑化+クリエイティブ」に挑む人材だ。期待されるのは、公園・緑地を利活用した新たな価値創造、そしてGX推進への貢献――。同ポジションの募集背景、期待される役割について神戸市 建設局公園部企画課長 本田 亙さんに伺った。

神戸市「公園・緑化+クリエイティブ人材」公募プロジェクト

所属予定部署:建設局公園部企画課
役職:係長級
仕事内容:公園や緑地など緑の新たな価値や利用を創造し、市民や企業とも連携した取組みを推進、主導する

神戸市初「公園・緑化+クリエイティブ」を担う人材を公募へ 

なぜ、神戸市では、公園事業にクリエイティブ人材を起用するのか。その背景について、公園運営の現状・課題を踏まえて本田さんより伺えた。

神戸市内の公園を中心に、自然・緑地から新たな「まちの価値」を生み出していきたい。その上で新たな風を取り入れるべく、今回の募集に至りました。

現在、神戸市には約1700の公園があるのですが、じつは政令指定都市のなかでの「一人当たりの公園面積」はトップクラス。緑豊かな都市であると言えます。一方で税収減、施設老朽化、公園管理の市民ボランティアの高齢化などにより、これまでと同じような公園運営・維持管理のあり方では立ち行かなくなってきているのも事実です。

そもそも、使われない公園ほど、当然ながら雑草が生い茂ってしまう。そう考えた時に「どう維持管理するか」ではなく「いかに多くの人たちに使ってもらうことができるか」を考えるべき。そこから新たな「まちの価値」を創出していきたいと考えています。都市中心部と同じように、普通に生活する家の近所にある小さな公園でも新たな発想の取り組みを展開できないか。たとえば、菜園、マルシェ、キッチンカー、炭づくりなど伐採・剪定など維持管理が必要な樹木の活用など、今まさに公園事業の検討・推進を進めているところです。

また、2023年度からは、外部人材の登用による企業から協賛をいただく取り組みもスタートさせました。企業、そして市民のみなさんを巻き込み、どう応援をしてもらうか。公園を活用しやすい環境づくりができるか。循環型社会に適した取り組みを生み出してくためにも、ぜひ力を貸してほしいと考え、今回の公募に至りました。

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神戸市 建設局公園部企画課長 本田 亙さん。「私たち職員にとっても、外部人材を迎えることで、新しい価値が発見できたり、視点が得られたり、良いシナジーが生まれることを期待しています。」

公園に「緑」を増やすことで、GX推進にも貢献を

公園の利活用・維持管理を、まちの活性化・価値創造につなげていきたいと話す本田さん。その先には社会課題に対する取り組み、GX推進への貢献も視野に入れている。

昨今の気候変動、社会情勢を踏まえると、グリーントランスフォーメーション(GX)が非常に盛り上がり、注目度が高くなっていますよね。GXは主に「再生可能なクリーンエネルギーへの転換」を指すことが多いですが、そもそも「いかに二酸化炭素の排出量を減らせるか」が重要です。たとえば、都市部の公園緑地でもCO2吸収源、木材資源の生産地、生物多様性の保全地など、さまざまな役割があるもの。当然、街路樹も二酸化炭素を吸収してくれますし、市が管理する花壇も多年草を中心に植えることで、何年も循環していくことが期待できます。そういった観点を踏まえると、将来的には公園の利活用と共にJ-クレジット(*)の創出や自然共生サイト(*)への登録なども視野に入れられるかもしれない。植樹におけるCO2吸収量を数値化できれば、協賛企業としても「私たちの企業は脱炭素に協力しています」と説明しやすくなりますよね。また、これだけ多くの公園がある都市のロールモデルになりますし、さらなる利活用・維持管理にもつなげていける可能性もあり、公園緑地の潜在的な力を引き出す施策を進めていきたいと考えています。

*J-クレジット制度…省エネルギー設備の導入や再生可能エネルギーの利用によるCO2等の排出削減量や、適切な森林管理によるCO2等の吸収量を「クレジット」として国が認証する制度。国内クレジット制度とオフセット・クレジット(J-VER)制度が発展的に統合した制度(https://japancredit.go.jp/)

*自然共生サイト(30by30)…「民間の取組等によって生物多様性の保全が図られている区域」を国が認定する区域のこと。認定区域は、保護地域との重複を除き、「OECM」として国際データベースに登録される(https://policies.env.go.jp/nature/biodiversity/30by30alliance/)

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参考|まちなかの暑さ対策ガイドライン|環境省(令和4年)
神戸市では2023年より夏季の異常高温対策の一つとして、街中に木陰を創る「木陰プロジェクト」を始動。神戸国際会館前の歩道に六甲山から掘り出してきたケヤキを植樹したという。「信号待ちの時間など、この木の陰に入ってくださる方も多く、その光景を見られるのもうれしいですね。」と語ってくれたと本田さん。

期待するのは、地域全体で「一緒にやりたい」を生み出す力

自身が主体となって企画し、プロジェクトを進行していけるのが同ポジションの大きな魅力。「リアルな場」の変化が肌で感じられる部分も、大きなやりがいになる。

「公園」というリアルな場、そこに集まる人たちの行動が、ダイナミックに変わっていくので、そのあたりはすごくおもしろいですよね。地域にある小さな公園から、都市部の大きな公園や山間の緑地まで、さまざまなエリアを担当できます。それぞれの状況を踏まえつつ、どういった課題にフォーカスをするか。ご自身でハンドリングしながらぜひプロジェクトを推進いただければと思います。じつは公園でやれることはたくさんありますし、ご高齢のみなさんが参加したくなるような体操をすれば高齢者のフレイル予防の一貫ですし、乳幼児が集まるイベントを行えば子育て支援でもあって。さまざまなアプローチが考えられますし、興味や携わる分野も広がっていくと思います。

今回入庁する方に期待されるのもアイデア・発想。そして「実行」だと本田さんは言う。

ぜひ自由な発想で公園緑地を変えていってほしいですし、そういったアイデア、企画に期待しています。ただ、それ以上に大切なのが「実行すること」です。特に現場に出て活動をしていくとさまざまなプレイヤーと関わっていきます。そのプレイヤーを受け入れてくれる地域とそうではない地域が、当然あるもの。私たちだけが「やりたい」と突っ走っても、いざ地域に行ってみたら「それはやらなくていい」とご意見いただくこともあります。地域のニーズ・課題を拾い、考え方を汲み取り、実行まで持っていけるか。「地域にとって必要かつその気にさせるアイデア」を出し、巻き込めるか。合意形成しながら、行動を変え、課題解決につなげていく。まさにこここそクリエイティブ、広義のデザインの発揮が期待されるところだと思います。

ちなみに市役所内や企業とのコミュニケーションでも同じですよね。さまざまな関係各所、利害関係が相反する調整も少なからず発生していくなかで、どうプロジェクトを推進していくか。一つひとつそれらを協力しながらクリアしていただければと思います。

もう一つ、この仕事には決まり切ったルーチンワークはほとんどありません。広報部門と連携したPR活動、地域住民、企業、教育機関、職員との関係構築や調整、必要に応じて解析ソフト利用なども必要。ぜひ「課題解決のためにやるべきこと」を、仕事の領域に幅を設けず、広く挑戦いただければと思います。

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市内の公園で開催された「公園でピザしよう」。クリエイティブな視点で地域や社会課題に取り組むKIITO(デザイン・クリエイティブセンター神戸)の企画で生まれたアイデアだという。「学生から社会人、シニア層と参加者は幅広く、アイデアを実際にやってみることが一つの特色。今回も、参加者のトライアルから、徐々に地域活動の一つとして波及したと聞きました。ある場所では、ピザを効率的に焼くために、地域の方自ら工夫を凝らしたり、そもそも、どうしたら地域活動の参加者を増やせるか?このピザ窯づくりを参考に考えるなど、拡がりを見せているそうです。こうした企画や仕掛けがあれば「やりたい」という人たちが集まり、自分たちの地域で持ち帰ってくれて、新たなコミュニティ形成につながる。定期的に集まるようになれば、ついでに掃除をしようなど公園にも目が向き、愛着が生まれる場所になるかもしれない。ぜひ、そんな広がりのあるアイデアや発想に期待しています。」

社会課題を「クリエイティブ」で解決していこう

そして最後に伺えたのが、本田さんご自身が仕事で大切にしていることについて。今回入庁する方とも共に働く彼が大切にする価値観とは――。

どうしても行政の仕事だと、義務や規制もあるので、「してはいけないこと」や「しなければならないこと」が多くなるものですよね。ただ、やはりそれだけではなく、課題解決に向け「したくなる」「やってみたくなる」という取り組みもたくさんあります。また、これまででは考えられなかったような、さまざまな課題が出てくる時代でもあります。だからこそ、職員一人ひとりの発想、アイデア、自律的な行動による課題解決がすごく大切。それらが発揮しやいような環境をどう作っていくか。それも私の役割ですし、仕事で大切にしているポイントですね。

約10年前に、神戸市でクリエイティブセンター立ち上げを担ったのですが、ここまでさまざまな分野のクリエイティブやデザインに携わってきました。知恵と工夫、クリエイティブによって驚くような「変化」が生まれる様子を何度も目の当たりにしてきました。あらためて、クリエイティブには課題解決のための可能性がありますし、どのような領域でも求められていくもの。「公園」というリアルな場を軸に、どういった課題をクリエイティブで解決していくか。地域に良い変化を起こせるか。ぜひ今回入庁される方とも協力しながらそこに取り組んでいければと思います。

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