博報堂DYグループにより設立され、東京・LAの2拠点で展開するSTORIES。これまで数々の大手企業のTVCM、有名アーティストのMVを手がけてきた同社は、2025年12月、映画作品となる『MARINES DOCUMENTARY 2025 すべての敗れざる者たちへ』を公開した。今回は、2024年1月に入社し、本映画制作にも携わった高畑もなみさん(27)を取材。「まさか2年目で映画をつくっているとは夢にも思いませんでした」そう話す彼女のストーリーから、同社でこそ得られる経験、仕事の醍醐味に迫る。
STORIESについて
「ストーリーの力で、顧客と観客の心を動かす」を掲げる、クリエイティブブティック。主に、クライアントの課題解決を目的とした映像制作を手掛ける。東京・LAに拠点を持つことにより、日本企業・海外企業の「海外で撮影したい/海外の出演者を起用したい」といったニーズに応えることが可能。代表作品は、12年継続し、広告祭で多数受賞したプラットフォームコンテンツ、スバル90秒テレビCM「Your story with」シリーズ、ポケモンカード、米国でもマリオットホテル初のエンタメ映画「Two Bellmen」、安室奈美恵やV6など大型MVなど。


2024年1月にSTORIESに転職した高畑さん。まずは、その応募動機から伺った。
STORIESのことはアンビのスカウトメールで知りました。特に、CMやMVなどの映像作品を通じて大好きな「エンタメ」領域で働けること、そしてLAにも拠点があるため日本だけでなく世界へ作品を届けられる環境に行きたいという思いがあり、「ここならまさに希望が叶うのではないか」という期待があり、応募しました。
さらに選考に進む中で、「少人数の組織のため、入社後間もないタイミングからグローバル案件やナショナルクライアント案件に携われる」と聞いたことも、大きく志望度が高まったポイントでした。
というのも、前職は日系の大手興行運営会社で営業/宣伝広報として経験を積み充実していたのですが、より自分の裁量で物事を動かしていけるような環境に飛び込んでみたいという思いがあったのも事実。STORIESの環境はフィットすると直観的に思い、入社を決めました。

「面接を担当してくれた今の上司との出会いも決め手の1つだった」と高畑さんは語る。「当時、その上司は産休から復帰したばかりで、時短勤務のなかで対応してくれていました。お話しするなかで、その人柄はもちろん、『バリバリ働きながら子育てをしている女性上司がいるのは素敵だな』と感じたことを覚えています」
2024年に入社後、プロダクションマネージャー(※)として教育系コンテンツ、CM案件、ドキュメンタリー映画作品に携わってきた高畑さん。その「仕事のやりがい」について話してくれた。
入社以来、有難いことに様々なプロジェクトを担当させてもらっていますが、とりわけ印象深いのは、直近に手掛けた映画制作です。プロ野球チーム・千葉ロッテマリーンズの選手に1年間密着したドキュメンタリーで当社として力の入った映画作品でした。
もともと大のスポーツ好きで、ファンとしてテレビ観戦はしていましたが、まさか選手に密着取材できる日がくるとは思ってもいませんでした。まして、これほど長期間にわたる撮影や編集に携わるのも初めての経験で、文字通り手探りで進めていく案件だったからこそ、完パケした時のやりがいはひとしおでした。
※プロダクションマネージャーとは
映像や広告の制作現場において、企画から完成までの全工程をマネジメントするポジション。プロデューサーが獲得してきた案件を、制作現場の最前線で形にする。要」となる役割。主な業務は、プロジェクト全体の予算管理、スケジュール調整、撮影機材の手配など。また、監督やカメラマンといった多くの関係者の「ハブ」となり円滑なコミュニケーションを促すことも大事な仕事となる。マルチタスクを丁寧にやり抜くことが求められる。

もともとCM制作でお付き合いのあった監督から声がかかり、STORIESで映画を製作することに決まった。
経験してわかったことですが、CMと映画ではそもそも制作プロセスが全く異なります。特に映画は尺が長いため、撮影・編集工程の労力も何倍にもなりました。
撮影に関して言えば、密着とはいえ、毎日カメラマンが現場に入れるわけではありません。決定的瞬間を逃さないよう、カメラマンがいない日は、私がハンディカムを回すこともありました。シーズン中の緊迫した雰囲気の中で、密着取材を開始した当初はカメラがチームの裏側に入ることが難しいことも多々ありましたが、関係性が深まるにつれて交渉も可能に。「その理由であれば、ここまでなら撮影可能ですか?」といった交渉もできるようになり、遠慮しすぎずに心が動く瞬間を捉えることにもこだわれるようになった実感がありました。
そうして撮りためたデータは、最終的には1000時間近くにも及びました。この膨大なデータを、エディターが約2時間に磨き上げるのですが、これもまた至難の技です。私はプロダクションマネージャーとして、上がってきた映像を見ながら「あのような素材がなかったかな」と素材を見直しかき集めたり、インタビュー素材を文字起こしして渡したり。編集工程では、エディターが編集できる環境づくりに、かなり心を砕いていました。
そうしたあらゆる局面を乗り越え、映画は2025年12月に無事公開されました。家族を連れて劇場に足を運んだり、友人から不意に「見たよ」と連絡をもらったりしたときは、本当に嬉しかったですね。

高畑さんの転職前後での働きがいの変化を示すグラフ。
取材の終盤、高畑さんの今後の目標について伺った。
クライアントの課題解決と、思わず人々が「見たい」と思うような物語をつむぐこと。この両立を追求していきたいです。代表の鈴木の言葉を借りると「お金を払ってでも見たいと思われるものをつくる」ということが、私の目標でもあります。
そういった意味でも、多忙な大人たちが時間をつくり2000円を払ってでも観にくる「映画」に携われたことは、非常に大きな経験でした。球団の1年間を追いかける中で、そこには数多くの物語と、心が震える瞬間があること、そしてどのようなストーリーが人の心を打つのかを身をもって学んだ時間でもありました。この経験を、CM制作にも活かしていきたいです。
現代は、CMをスキップするためにお金を払う時代です。だからこそ私は、逆に「お金を払ってでも見たい」と思わせるようなCMで、この状況に切り込んでいきたい。「売るため」が先行するのではなく、まず人が見たいと思う作品をつくり、結果としてそれが広告の役割を果たすのが理想だと考えています。特に、映画での経験を機に、スポーツ案件に携わる機会も増えたので、今後も「スポーツ」領域を1つ自分のなかでの軸として、挑戦を続けていきたいです。
また、近い将来は、プロデューサーにも挑戦したいです。周囲には、入社3~4年でプロデューサーになっている先輩も多く、良い刺激を受けています。私自身は、映像の専門知識はない状態でこの世界に飛び込んだため、技術的に秀でているわけではありません。だからこそ、人脈やコミュニケーション力などを武器に、「次もぜひ高畑さんと仕事がしたい」と思っていただけるような存在を目指したいと思っています。
最後に、高畑さんにとって仕事とは。
私は、仕事として好きなことに向き合える状態をつくることができるなら、それが理想だと考えています。自分の興味が巡り巡って仕事に活かせたら最高だなと思いながら、日々向き合っています。
例えば、映画の密着期間中だった昨年は、千葉ロッテマリーンズのビジター戦もほぼ全てテレビでチェックしていました。仕事とプライベートを明確に分けたい方には考えられないかもしれないですが、私にとっては、仕事でありながら純粋な楽しみでもあるため、全く苦になりません。また、私自身は、20代~30代前半は「仕事の頑張り時」だと考えています。これからも自分の「好き」という気持ちに正直に、仕事に打ち込んでいけたらいいですね。










