日本郵船が陸上職事務系(総合職)の募集を行なっている。今回は、2025年3月に入社した駒澤優子さんに話を聞いた。前職は、民間企業の資源開発を支援する政府系機関で働いていた彼女は、なぜ日本郵船への転職を決めたのか。そこには「エネルギーを現場から支えることで日本に貢献する仕事をしたい」という思いがあった。
※画像内は、転職時の年齢となります。
大学時代、スコットランドに留学していた駒澤さん。当時、スコットランド独立運動のさなかで北海油田の権益が大きな争点となっていた。そこから、人々の政治思想にまで影響を及ぼす「エネルギー」に関心を持ち、新卒ではエネルギー系の政府機関に就職したという。まずは、前職での経験を経て、なぜ日本郵船への転職を考えるようになったのかを伺った。
もともと日本に貢献する仕事がしたいと思い、前職では資源・エネルギー関連の政府機関に就職しました。石油・天然ガス、金属など、様々なエネルギー資源の探鉱・開発・生産に携わる民間企業を、金融支援などを通じてサポートする業務です。非常に貴重な経験ができ、大きなやりがいを感じていました。
一方、業務の多くはオフィス内で完結します。民間企業が資源を扱うリアルな現場を見る機会は少なかったため、次第にエネルギーを扱う「現場」そのものへの興味が芽生えていきました。
その思いが特に強くなったきっかけは、職場の支援を受けて海外の大学院へ留学したことです。エネルギー関連の修士課程で学ぶなかで、サプライチェーンにおける「探鉱・開発・生産」だけではなく、その後の工程も見てみたいと強く思うようになりました。生産された資源は、どのようにして日本へ運ばれるのか知りたい。そう考え、海運企業を視野に次のキャリアを模索し始めました。
そこで真っ先に浮かんだのが日本郵船です。実は、新卒時にも選考に参加していた企業でした。当時はご縁がなかったものの、選考時の温かい雰囲気に好印象が残っており、再び応募するきっかけの一つになりました。
いわゆる“リベンジ転職”でもあった駒澤さん。9年ぶりに受けた日本郵船の選考で、さらに志望度が高まった点について語ってくれた。
改めて魅力に感じたのは、選考を通じて私自身の「人となり」や「ポテンシャル」を見ていただけた点です。
面接の質問では、単なるスキルや実績というよりも、「私がどういう人間なのか」、「なぜ日本郵船で挑戦したいのか」といった、内面にある思いの部分を深く掘り下げてくださるものでした。
これは、私にとっては非常にありがたいことでした。前職の業務は、政府系機関ならではの特殊な領域であり、他社でそのまま活かせる実務知識やスキルセットをダイレクトに問われると、正直伝え方が難しい部分もあったためです。もちろん、論理的思考力や説明力などは培ってきた自負がありましたが、そうしたベースの部分や人となりにしっかりと耳を傾けてもらえたことで、リラックスして自分らしさを出すことができました。幸いにもご縁をいただき、入社を決意しました。

選考でアピールしたことを尋ねると、「ストレス耐性や環境変化の適応力」を挙げてくれた。「前職の政府系機関もプレッシャーのある環境でしたし、大学時代だけでなく前職時代にも海外大学院への留学を経験しました。さらに、前職では、約3年ごとに全く異なる資源の担当へと変わる環境でした。石油・天然ガス、金属、地熱など、資源の種類が変われば採掘方法も必要な知識も一から学び直しになります。日本郵船も、3~4年周期でジョブローテーションがあると聞いていたので、そうした変化の多い環境には柔軟に対応できる強みをお話ししました」
2025年3月に入社した駒澤さん。現在の業務内容について伺った。
面接で興味のある部署を聞かれた際、前職の知見を少しでも活かせるエネルギー関連部署と伝えたことが影響しているか分かりませんが、エネルギー事業本部のLNGグループに配属されました。海外の輸出国から、日本や世界各国の輸入国へLNGを船で安全に運ぶ「海上輸送サービス」を提供する部署です。
なかでも、私のメイン業務は、LNG輸送に関わる多様なステークホルダーとの調整です。具体的には、海外の顧客のみならず、日本国政府や、船の機器・部品メーカー、保険会社などが挙げられます。現在、中東やロシアなど世界情勢が不透明さを増すなか、安定した輸送サービスを維持するためには、こまかな調整が欠かせません。例えば、国際情勢の変化に伴う経済制裁や現地の法規制に違反していないかを厳格に確認し、トラブルなく安全に輸送できるよう関係各所と連携することも重要な業務の一つです。
働く上で感じる「仕事のやりがい」とは?
特に日本のような資源が乏しい国では、エネルギーの輸入が途絶えれば人々の生活が成り立ちません。そうした国のインフラを根底から支える一助になれていることが、大きなやりがいにつながっています。
前職の政府系機関は、何よりも「国益」にコミットすることが求められる環境で、それが私の誇りでもありました。そのため、民間企業に移れば、「国のために」というマインドはどうしても薄れてしまうのではないか、と入社前は思っていました。
ただ実際は、日本のお客様に安全・安定的にLNGをお届けすることを通じて、その先にある国益にもしっかりと貢献できています。「自社の収益」と「国益」の両方を追求できる環境は、良い意味での驚きでした。「国への貢献にはこういった形もあるのか」と、新しい世界を知ることができた喜びを感じています。
入社して感じる自身の変化を聞くと、「フレキシブルに交渉するマインドが身についてきた」と語ってくれた。
前職の政府系機関では、公的な支援制度を厳格かつ公平に運用することが何より重要でした。あらかじめ定められた枠組みに沿って判断する役割だったため、個別に条件を柔軟に交渉する場面は少なかったと言えます。
一方、現在は、民間企業同士の対等な立場として、「どうすればお互いにとって最良のサービスを提供できるか」を考えます。「この条件は譲れませんが、こちらのご提案はいかがでしょうか」といった対話を重ね、双方が納得できる着地点を粘り強く探っていくことができるようになりました。

「エネルギーを扱う現場を見てみたい」と入社した駒澤さん。実際に現場へ足を運んだ際の印象を、こう語ってくれた。「担当する船が日本の港に寄港した際は、実際に現地へ出向き、船長や船員の方と英語で直接会話をしたり、船内の様子を見学したりしています。『この方々が最前線で運んでくださっているんだ』と肌で感じる瞬間です。現場であがった課題や困りごとを直接伺い、陸上の私たちでサポートできるところは迅速に対策を講じるなど、運航環境の改善につなげています」

駒澤さんの転職前後での働きがいの変化を示すグラフ。
取材の終盤、今後社内で実現していきたいことについて聞いた。
もともとエネルギーへの興味から入社したため、今後もエネルギー関連の別の部署でも挑戦してみたい思いはもちろんあります。一方、実際に海運の現場で働いてみて、特定の領域にだけ固執せず、幅広い事業に触れて知見を広げていきたいと考えるようにもなりました。
というのも、海運の世界は想像以上に奥深く、面白いからです。例えば、運ぶ貨物が変わればビジネスモデルも全く異なります。それぞれに関わるステークホルダーも多数存在し、その複雑さに探求心を強く掻き立てられます。
また、世界を俯瞰し物事を考えるダイナミズムも、非常に魅力的な部分です。例えば、ニュースで話題になる「ホルムズ海峡」の問題。私のチームがホルムズ海峡を通航する船を担当していなくても、中東からの供給リスクが高まれば、代替として別ルートや他地域の重要性が増すなど、間接的には全てが繋がっているんです。
非常に探究しがいのある業界ですし、チャンスがあれば様々な部署を経験し、多くのことを吸収していきたいと思っています。
最後に、駒澤さんにとって「仕事」とはーー。
「生活できるだけのお金が稼げれば十分」という考え方もあると思いますが、私自身は知的好奇心が強いタイプです。だからこそ、自分が興味を持てる領域で、知らなかったことを1つひとつ学んでいきたい。
船を動かすには専門の保険が必要なこと。港に入るだけでも様々な手続きや書類が存在することなど、エネルギーの上流工程だけに関わっていた前職時代には知りえなかったことがたくさんありました。
もちろん大変なことも多いですが、そうしたサプライチェーンの細部に触れられること自体が、私の知的好奇心を満たしてくれます。世界の解像度が少し上がったと実感できる瞬間が、何より嬉しいんです。
正直、「できなかったことが、できるようになること」に喜びを感じるタイプで、中長期的なキャリアの明確なビジョンを持っているわけではありません。ただ、昨日より今日、今日より明日と、できることを少しずつ増やしていきたい。そうして成長を続けた先に見える景色を、これからも楽しんでいけたらと思っています。
駒澤さんに聞く、日本郵船の意外なカルチャー
●新人を受け入れる温かな風土
ジョブローテーションが多い会社ゆえ、「社歴の長い社員であっても、異動先では“新人”。そのため、年次は下でもその部署の経験が長い後輩から仕事を教わる」といった光景が当たり前にあります。そうした文化があるからこそ、キャリア採用の私に対しても、「こんなことも知らないの?」といった空気は一切なく、皆さんとても親身に教えてくださいました。業務マニュアルなどの受け入れ体制がしっかり整っているのも心強かったです。
●若手のうちから裁量を持てる環境
社内を見渡すと、『こんな大きな案件を、社会人2~3年目の若手が任されているの?』と驚くような場面によく出会います。入社前は、歴史ある大企業ゆえに『重要な仕事は年次を重ねないと任せてもらえないのでは』という先入観もありましたが、良い意味で期待を大きく裏切られました。
●全員「さん」付け
前職は、◎◎課長、◎◎部長のように役職で呼んでいましたが、日本郵船は「さん」付けのカルチャーでした。想像以上にフラットでした。
