アビームコンサルティングにおいて、デジタル時代の企業変革の支援を担う「ABeam Digital」。さらに、専門組織の一つとして「AIセクター(*1)」が組成されている。今回は、その「AIセクター」シニアマネージャーの宮田裕生さんを取材。先端技術を用いたプロジェクトの事例と、そこで得られるキャリアについてお話を伺った。
(*1)P&T Digital ビジネスユニット AI(Advanced Intelligence)セクター
2013年に創設。現在、「ABeam Digital」の専門組織の一つとして、マーケティング・営業・リスク・安全・生産・調達・物流・人事・経理など企業の様々な課題に対し、ビジネスインテリジェンスの豊富な知見・経験・ノウハウを提供。同時に、先端テクノロジーを最大限に活用した分析力・戦略力・実行力で、クライアント企業とともにビジネスブレイクスルーの実現に貢献している。
アジアを基点とするグローバルコンサルティングファームとして存在感を高めているアビームコンサルティング(以下、アビーム)。
戦略立案・構想策定から、業務改革・設計、システム開発・導入、運用まで一連のコンサルティングサービスを提供。豊富な経験を持つ約 6,000 名のプロフェッショナルを有し、あらゆる業界の変革を実現している。
総合系コンサルティングファームであるアビームコンサルティングでは、業界(インダストリー)、業務領域(サービスライン)2軸で組織を構成。プロジェクトでは、横断的にチームが組まれ、ワンストップでサービスを提供している。
特に近年では、クライアントのデジタルトランスフォーメーションを推進するプロジェクトも多い。ソリューションの領域もFinTech、AI、IoT、VRといった先端技術を用いたものなど、多岐にわたる。
特に今回注目したのが、AIにおける取り組みだ。2013年には、企業のデジタルイノベーションを支援する「AIセクター」が創設されている。
「一例ではありますが、直近のプロジェクトの事例でいえば、2019年2月に、モータースポーツにおける自動音声回答システムを開発し、その特許も取得しています。これはレース中、ドライバーやエンジニアの問いかけに対して、必要な情報を自動的に音声で回答するというものです。プラットフォームを独自で開発し、データを蓄積。それをAIがリアルタイムに分析します。今後、モータースポーツ以外の他分野での展開も考えられます」
こう解説してくれたのが、宮田裕生さん(AIセクターシニアマネージャー)。言うならば実証実験に近い開発も、ビジネスへ落としこんでいるといえる。
宮田さんは、もともとSIerや銀行でデータ分析・解析に携わった後、アビームへ転職したキャリアの持ち主。
彼らが手がける最先端プロジェクトと、そこで得られるキャリアについて伺った。
宮田 裕生 | P&T Digital ビジネスユニットAIセクター シニアマネージャー
新卒で大手SIerに入社。SASを使用した新薬の治験のデータマネジメント・統計解析支援を経験。その後、銀行に転職し、リテール商品を中心に分析業務に従事。統計的手法を用いて、商品企画やブランディング、販売施策、営業戦略などに携わる。2014年にアビームコンサルティングに入社。主にスポーツ、エンターテイメント、ファイナンシャル、ライフサイエンス業界を担当。現在はリベラルアーツチームのリーダーとして、AIセクターをリードする人材育成も務める。
AIセクターではどういったプロジェクトを手がけているのか。
宮田さんは、大手エンターテイメント企業における、東京大学とのユニークなプロジェクトの事例を語ってくれた。
一見すると同社のソリューションからはイメージがつかない「エンタメ領域」であるが、「ダンスの定性的な情報を定量化」する、他に例を見ない取り組みを行っているという。
「このクライアントは年に1回~2回ほどダンスの検定というものを行っています。その検定においては何千人という生徒が一斉に試験を受け、その技能を評価する必要があります。これまではどうしても人の主観や感性に頼ってしまうところが大きかったのですが、これを一律の基準で合格・不合格の判断を行えるようにしていく予定です」
そこで今進めているのが、カメラで撮影した映像からAIが合否を判断するシステムの開発だ。
「映像という二次元の情報から、ダンスで良いとされるポイントについてインストラクターさんに○×をつけてもらい、機械学習させます」
たとえば、“グルーヴ感”などの、ダンスにおいては非常に感覚的な判断基準とされているものを定量化していくことに、今まさに取り組んでいる最中だという。
同プロジェクトで用いられる技術として興味深いのは、身体的な行動とデータをリアルタイムで結びつけ、それを評価に結びつけていく点だ。
この技術はその他の分野においてもビジネス転用が進み、業界そのものを変えていく可能性も秘めている。
「自動車で言えば、ハンドル、座席、タイヤのグリップの調子など、IoTセンサーでさまざまなデータを取得できるようになってきていますよね。データ収集と分析、AIを活用した定量化による評価などを組み合わせることで、より快適なプロダクト・サービスを生みだしていけると考えています」
続いて伺ったのは、彼自身のキャリアについて。
もともと、SIerと銀行でデータ分析・解析のキャリアを築いてきた宮田さん。なぜ、アビームのコンサルタントとしてのキャリアを選択したのか。
「前職の銀行においては、扱えるデータが限られると感じていました。何年も同じ領域のデータと向き合うこともある。その中で自分が培った知識、経験を用いながら、世の中に溢れている様々なデータを扱ってみたいという欲求も生まれてきました。あらゆる業界・業種にクライアントを持つアビームなら、それが実現できると考えたんです」
実際に、アビームのAIセクターで働くおもしろさを次のように語ってくれた。
「コンサルティングファームでデータ分析に携わるおもしろさは、定量的なデータを分析するだけではなく、解決したい事象に対して自分たちで法則を見出し、その結果を導き出すための数式をつくっていくフェーズから携われること。企業や研究機関の人たちと一緒に、感覚的なものを一緒に数式として形にしていく。そのプロセスに携われることが特徴だと言えます」
このような業務においては相互コミュニケーションが極めて重要な要素であるという。実際、AIセクターには、大学や研究所、大手エネルギー会社、宇宙航空分野などでデータ分析に携わっていた多種多様な人材が集まっている。特徴的なのが、さまざまなバックグラウンドや強みを持った人材がナレッジを共有し、協力し合う風土だ。
「なにか困ったことを社内SNSなどに投稿すると、たくさんの論文や参考文献などの情報が送られてくる。みんな知識や経験を出し惜しみすることがないんです。さらに、他セクターのマネージャーやリーダー、メンバーに至るまでが、組織の枠を超えてプロジェクトに協力してくれる環境もある。全員がクライアントのために、という姿勢を持っているので、自然とこういう行動になるのでしょうね」
転職を考える上で、こうした風土、カルチャーにフィットするか。ここは重要なポイントだと語ってくれた。
「他のコンサルティングファームとの大きな違いでいえば、やはり会社の風土・文化、人などの面。私も結局決めたのはこういった部分です。だからこそ、私たちは面接以外にもフォロー面談のような形でいろんな人に会ってもらうようにしています。ちゃんと知ってもらい、納得した形で判断してもらいたい」
AIというまだまだ正解の少ない領域でプロジェクトに取り組んでいく。ぶつかる壁も小さくはないはずだ。それでも彼がチャレンジを続ける背景にはなにがあるのか。
「すごく安易な言葉かもしれないのですが、社会貢献というテーマが一つ自分の中にあります。AIという領域は本当に無限の可能性があって、社会にさまざまな価値を提供できる。更には社会課題の解決手段を提供していくことも可能だと思います。自分自身、コンサルタントとして社会を変えていくことにワクワクしていますし、社会にインパクトを与える仕事に携わっている実感があるからこそ、大変なことも乗り越えられるのだと思うんです」
加えて、日本全体を元気にしたい、こう付け加えてくれた宮田さん。その一例として、彼がプロジェクトリーダーとして携わる「JAPAN RISING STAR PROJECT(*2)」を挙げてくれた。データをもとに、個人の特性に応じた最適な競技の提案もしながら、未来のオリンピック・パラリンピックにおいて、メダルを獲得する可能性のあるアスリートを発掘するというものだ。
「自分が携わったプロジェクトからオリンピック・パラリンピック選手が誕生し、金メダルを獲ってくれるかもしれない。それって最高じゃないですか。本人の将来にとってポジティブな影響を与えることできるし、日本全体が盛り上がる。その種まきを今からしているといっても良いです」
自身自身のやりたいプロジェクトに携わり、やりがいを持って仕事をしている宮田さん。そこには彼自身の仕事に対する「意志」がある。
「コンサルタントの仕事は結果を残すことは勿論大切ですが、自分の意志を発信しつづけることも大切です。私自身、成果に拘りつつ、自らの意志を発信してきました。そうすることで、自然と携わりたいプロジェクトから、声がかかり、仕事、キャリアの幅が広がっていきました。自分次第でやりたい仕事ができる。そしてその環境は自分でつくれる。私自身がその前例となっていきたいですね」
(*2)JAPAN RISING STAR PROJECT
将来性の豊かなスポーツタレントを全国で発掘するプログラム。メダル獲得の潜在能力を有するアスリートを、ポテンシャルの高い競技への転向を視野に強化・育成を行なっていく。2017年度から毎年プロジェクトが行なわれている。