「コスメクチコミアプリのトップランナー」ともいえるのが『LIPS』だ。ユーザー同士のつながりに軸を置き、特化型コミュニティプラットフォームとして10代、20代の女性たちの心を掴む。確固たるポジションを切り開いた先に、どんな展開を見据えているのか。運営元AppBrewの執行役員、児玉悠佑さんにお話を伺った。
自分磨きが好きな10代、20代の女性たち。
彼女たちの日常において「なくてはならないアプリ」となっているのが『LIPS』だ。サービスローンチより約3年で500万ダウンロードを突破、ブラウザを含めた月間サービス利用者数は1,000万を超えた。
いずれも業界トップクラス。「10代、20代の女性」とユーザー層を区切れば利用数はNo.1(同社調べ)とそのポジションを確固たるものに。
世界観やデザインが重視されるコスメ系アプリ。ただ、運営元AppBrewがあわせて重視しているのがデータドリブンなコミュニティ運営だ。
自社開発のアルゴリズムによるタイムラインのパーソナライズ化、アプリグロースのための機能開発や改善の仮説検証、それらを支えるあらゆる意思決定を「数字」によって行う組織カルチャー。
これこそが彼らの強みともいえる。
「『LIPS』で得たコミュニティ内での行動データやエンゲージメントデータの分析、マーケティングを含めたアプリグロースの知見は大きなアセット。中長期的にはLIPSと並ぶ、2個目、3個目の柱になるサービスが生まれる会社にしなければいけない。『LIPS』にとどまるのではなく、先を見据えていく」
こう語ってくれたのは、AppBrewの執行役員 児玉悠佑さん。『LIPS』を武器に、仕掛けていく次なる展開とはーー。
AppBrewのミッションは「個性を解放するものづくりを」。テクノロジーの力で、人々が生活する中で感じる「不便」や「悩み」をサービスを通じて解決していくこと。『LIPS』が生まれたのも、コスメ好きの同社女性役員が感じたコスメ探しにおける不便がきっかけだったという。彼女の日常から生まれたサービスは、たちまち若い世の女性たちを魅了した。
児玉 悠佑(37)
サイバーエージェントに新卒入社。複数の子会社経営や、事業立ち上げなどに従事。2019年にAppBrewに参画。現在はセールスやマーケティングなどビジネス部門全体の統括を担う。
10代、20代の女性たちに大人気…といわれてもイメージがわきづらいコスメ系アプリ。
『LIPS』でいえば、ユーザーたちの熱量こそが最大の特徴といっていい。たとえば、自作のイラストを活用する人、1万字のレビューを書く人など「ファン化」が加速する。
レビュー数でいえば、1日数千件が生まれてくる。業界最大級の規模だ。『LIPS』はなぜこうもユーザーに愛されるのか。
「コミュニティプラットフォームとしてサービスを磨き続けているからだと思います。あくまでもユーザー同士のつながりがベース。商品データベースがあることでコスメ関連の投稿や検索は『LIPS』を使っていただくケースが増加傾向にあります。サービス内でのコミュニケーションが活発で、SNS文化に慣れ親しんだ若い層に刺さったんだと思います」
いかにユーザーが心地よく交流できるか。共通言語として「データ」を活用するのも彼らの特徴だ。
「コスメに関わるユーザーの行動データを持っているのも『LIPS』の強みです」
児玉さんはこう自信をのぞかせる。
「ユーザーがどんな投稿を見て、商品を見て、他のユーザーをフォローしたり「いいね」をしたりしながらサービス内を回遊しているか。このデータの蓄積は弊社の大きな資産です」
それらの「資産」は今後どのようなビジネスの可能性につながっていくのか。
「たとえば、ブランドマーケティングを行う際のトレンド予測、ムーブメントの分析にも使える可能性があります。世の中で話題になる一歩手前で『LIPS』内でもバズることがあるのですが、それをさらに手前で感知できたとしたらどうでしょうか。先手を打って、プロモーション戦略に活かすことができる可能性があります」
児玉さんは『LIPS』のその先も見据えている。
「今、「コスメ・美容」以外の領域で、新たな事業開発も進めているところです。『LIPS』での開発・運営ノウハウやサービスグロースで得た知見、ユーザー獲得のためのナレッジなどを活かして、新たな新規事業につなげていきたい」
そして「ぼくらは『LIPS』だけで終わるつもりはありません」と続けてくれた。
「『LIPS』はコア事業ではあるけれど、あくまでAppBrewが提供する1サービスの立ち位置。将来的には2個目、3個目のLIPSに並ぶサ―ビスが生まれる会社にしたいですね」
もうひとつAppBrewの成長を牽引する要因に、高速で施策を実行へと移せる体制・カルチャーがある。
「開発の人間だろうが、セールスだろうがマーケティングだろうが、誰もがアプリ改善のためのアイデアをあげ、自らが中心となってプロジェクトを動かしていく。新たな追加機能アイデアが即日プロジェクトとして動き出すことも日常茶飯事です」
児玉さんはこの体制・カルチャーについてこう補足する。
「サービスはトライ&エラーの連続で成長させていくもの。新しく打ち出す施策や機能が全てうまくいくなんてことは絶対にない。だから、データを活用しながら確率を高めつついかに多くの仮説検証を繰り返せるか。そして高速でそれらを実行できるかが大事だと思っています」
ちなみに、過去の起案や結果は調べれば社員全員が閲覧できるようになっている。
「そうすることによって「こんなアイデア出して大丈夫かな」「過去にボツになっていたらどうしよう」と不要な悩みを取り除く狙いがあります」
取材中、「年齢や経験に関係なく、意見を伝えやすい風土」についても教えてくれた児玉さん。「職種関係なくみんな意見やアイデアをどんどん出してきますね。対面でもSlackでも、ご飯を食べてる最中とか場面関係なく。入社直後はちょっと戸惑いました(笑)」
AppBrewとして採用強化をしているのがビジネス部門。セールスやマーケティング、コンテンツ制作などビジネス全般に関わる。
「この1年で部門のメンバーは2倍以上に増えていますが、事業成長のスピードからするとまだまだ新しい仲間が必要な状況です。
現在、化粧品メーカー、広告、スタートアップなどさまざまなバックグラウンドを持つメンバーが集まっています。志望動機は「LIPSがユーザーとして大好きだった」「広告事業の成長に貢献したい」「新規事業の立ち上げにチャレンジしたい」など。共通するのは「自らの成長を会社の成長にリンクさせていく」という点でしょうか」
そして児玉さんは、最後にこう締めくくってくれた。
「AppBrewは登山でいえばまだ1合目くらいの登りはじめたところ。LIPSでいえばこれからさらにサービスを磨きユーザー数を拡大していく段階です。新規事業もまだ立ち上がっていません。ここから先、大変なこともたくさんあると思うんです。ただ、そんな状況すらも楽しめる人にとっては最高にエキサイティングで働きがいのある環境だと思います。まだ誰も登っていない山を一緒に登っていける方と働けたら嬉しいですね」