テクノロジーがコアコンピタンスの企業が、CTO(最高技術責任者)を募集するケースが増えている。さまざまな領域や業界がIT化を推進する現代において、同職の重要性は非常に高い。ここでは、CTOのニーズが高まっている背景や求められるスキルを、求人動向をもとに考察していく。
近年、FinTechやHRTech、人工知能やIoTといったテクノロジーが次々と登場し、それを活用した新しいサービスも数多く生まれている。また、インターネットやスマートフォンが各家庭に普及するにつれ、ITは「私たちの身近に当たり前に存在しているもの」となった。
だが、それに伴い1つの問題が生じている。エンジニア不足だ。経済産業省が2016年に発表した「IT人材の最新動向と将来推計に関する調査結果(*)」によると、2015年の時点で約17万人が不足しているという。
そのため各企業は、「ITを用いて新しいサービスを開発したいものの、なかなか優秀なエンジニアが見つからない」というジレンマを抱えている。それに輪をかけて不足しているのが、CTO相当のスキルを持ったエンジニアだ。
新しいサービスを立ち上げる際には、テクノロジーをビジネスの成功に結びつけるための方針策定が欠かせない。そのため、前述のような新技術を活用してサービスを立ち上げようとしている企業は、喉から手が出るほどCTOを求めている。逆に言えば、“CTOになれるチャンス”も、それに伴って増加しているということだ。
(*)「IT人材の最新動向と将来推計に関する調査結果」
http://www.meti.go.jp/policy/it_policy/jinzai/27FY/ITjinzai_report_summary.pdf
では、CTOには具体的にどのようなスキルが求められるのだろうか。一言で言うならば「企業やプロジェクト全体を俯瞰し、最適解を考えられるスキル」だ。
先ほど述べたように、CTOの募集は多くの場合、新サービスや新事業の立ち上げとセットになっている。それはつまり、開発方針や事業プランが曖昧な状況下で、チームを統括しプロダクトを成功に導いていく必要があることを意味する。
そのため、求人を見てみると「開発部門のマネジメント経験」や「プロダクトのロードマップの策定経験」など、いわゆる「管理する」「計画を策定する」スキルが求められるケースが多い。この傾向は各社ともに大きな差はなく、CTOに必要なスキル要件は明確だ。
すでにそうしたスキルを持っているエンジニアは、自分が「CTOになれるスペック、可能性を持っていること」を知っておいてほしい。近年の求人動向をもとに考えたとき、自らでは気づいていなかったとしても、非常に市場価値の高い人材なのだ。そして、そのスキルを今後も磨き続けていくことで、その価値はさらに高まっていく。
もちろんさまざまなプロジェクトを知っている、事業やマネジメントに携わっていた経験はアドバンテージになる。同時に裏を返せば、そういった要件さえを満たせば、年齢に関わらずチャレンジできるということでもある。現に20代~30代半ばまでのCTOも増えている。
エンジニアのニーズが右肩上がりで増加している今、コードを書くこと“以外”もできるようになっておくことで、キャリアの選択肢はより大きく広がっていくはずだ。