INTERVIEW
三井不動産

三井不動産が新アリーナ開業へ。まちづくりにデジタルで挑む彼の志「新たな人の流れをつくりたい」

掲載日:2024/05/07更新日:2024/05/10
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2024年春、収容客数1万人規模の大型多目的アリーナ「LaLa arena TOKYO-BAY※」開業へーー総合デベロッパー「三井不動産」がスポーツ・エンターテインメントの力を活用したまちづくりを推進している。今回取材したのは、その新規事業にDXから関わる佐々木陽さん(33)。大手SIerを経て2022年に中途入社。事業の勝ち筋を見極め、そこに対してデジタルを活用した新たな価値創出に挑む。そこには「これまでにないサービスをつくり、日本に新しい人の流れをつくりたい」という志があった。

※LaLa arena TOKYO-BAY
三井不動産とミクシィが手を組み、千葉県船橋市にオープンした新施設。B.LEAGUE「千葉ジェッツ」が2024-25シーズンよりホームアリーナとして利用するほか、音楽コンサート、スポーツイベント、企業の展示会など様々なイベントに対応可能な施設を目指す。

まちをフィールドに、新しい日本をつくる挑戦を

まずは前職の仕事内容から伺ってもよろしいでしょうか?

前職では大手SIerでエンジニアとして働いていました。もともと、「新たな人の流れ・行動をつくるような仕事をしたい」「デジタルで世の中の流れを変えられるのではないか」と飛び込んだ世界。さまざまなプロジェクトを経験し、開発スキルを磨くことができました。一方で、あくまでSIerという立場ゆえ、自らでデザインしたサービスが、世の中に影響を与えていくことの実感は薄かったことも事実。次第に「もっと自分で企画してサービスを生み出す経験を積める環境に行ってみたい」という気持ちが強くなっていったのです。

転職活動を始めた当初は、業界も企業規模もあまり絞り過ぎず幅広く見ていました。それこそ、プロダクトポートフォリオの意思決定を支援するようなコンサルティングファームや、影響力こそ限定的なものの一から百までサービスを創り上げられるベンチャー企業へ行く道も検討しました。ただ、先ほどお伝えしたように、私がやりたいことは「自らで新たな人の流れをつくる」こと。それを実現するためには、ある程度、面でダイナミックに仕掛けていけるような事業会社に身を置きたい。そう考えたとき、必然的に総合デベロッパーに絞られていったように思います。

なかでも三井不動産の決め手は?

まちづくりを軸に、新しい日本をつくっていく挑戦ができそう。そういった期待感が一番の決め手でした。

というのも、三井不動産には、圧倒的に集客力の高い「リアルアセット」があります。また、デベロッパーのなかでも、エリアを問わず各地に新名所を仕掛けている印象がありました。もし、日本全国、まちをフィールドに、自分の仕事の成果を目に見えて感じられたなら。それはまさに私がやりたかったことだと感じたのです。

また、選考の中で、デジタルに関する部門が事業部門から独立し、本部として組織されていると知ったこともポイントでした。一般的に不動産業界はDXが遅れていると言われていますが、三井不動産の組織図から考えると、DX本部への期待が大きそうだと感じられた。「いま、ここで挑戦してみたい」というモチベーションにつながったように思います。

選考ではどういった点をアピールされたのでしょうか?

技術職なので、当然スキルセットはお伝えしました。加えて、特にアピールした点で言えば、「受け身ではなく事業部と一緒に新しい世の中をつくっていきたい」というマインド面です。主体的に提案していく“フィジビリティ”を感じてもらえたのかなと思います。

三井不動産01

佐々木 陽
2013年、新卒でNTTデータに入社。決済アプリやピープルアナリティクスに関するサービス企画、コンシューマ向けスマホアプリ開発、プライベートクラウド基盤構築など、プロダクト開発における上流/下流工程、インフラ/アプリケーション領域を幅広く経験。2019年~2021年にグロービス経営大学院大学にてMBAを取得。2022年1月に三井不動産に入社。DX本部にてエンジニアリングリーダーとして働く。担当プロジェクトは、三井ショッピングパークアプリ開発、三井ショッピングパーク会員向けのチケットシステム開発、新設のスポーツエンタメ施設におけるDX施策の検討など。

想定以上に、チャレンジを応援してくれる環境

入社後はDX本部に所属されていると伺いました。どういった役割を担われているのでしょうか?

まず、DX本部は、三井不動産が掲げるDX戦略(※)を推進していく役割を果たします。なかでも私のミッションは、システム開発をリードしていくこと。そして、事業の成功のためにはどのような戦略が必要なのか。その中でデジタル技術やプロダクトがどう貢献できるかを考え、事業部側に提案していくことです。

特に驚いたのは、想像以上に早くから、上流の企画部分から関われたこと。私のような入社後間もない社員の声を聞き受け止めてもらえることです。

生意気にも「アプリの位置づけから考えてみませんか」、「戦略と進捗にギャップがあるのでKPIを整理しませんか」など、率直な意見をすることも多いのですが「よい視点/動きだね」と、前向きに応援してもらえる。有難い環境ですね。

正直、入社当初は「三井不動産ほどの大手企業であれば、企画から関われるのは10年後くらいになるのかな」と覚悟していたため、嬉しい誤算でした。

※三井不動産のDX戦略…集客力の高い各施設をソフトサービスでつなぐことで、エリア全体の相乗効果を生み出していく。ひいては施設やまちの価値をさらに高めていく。

三井不動産02

率直な意見を伝え、整理していくことを得意とする佐々木さんだが、物事を円滑に進めていく上では「前任者やサービスの歴史/背景を尊重したコミュニケーションを大切にしている」と語る。「新たなことを仕掛けるということは、伝え方を誤ると結果的に前任の仕事を否定することにもなりかねない。これまでの検討経緯を踏まえない意見に、前任が不快な思いをする可能性もある。それは、客観的に見ても気持ちのよい仕事の進め方ではないと思います。自分が企画をできる事業会社に来たからこそ、前任の仕事を尊重しながらも、さらにどうしたら良くなるのかという観点で考え、自分の意志もしっかり込めていく。そういったスタンスを大事にしています」

そのシステムは、アリーナ事業を成功に導けるか

先ほど、開発だけでなく、上流から関わられているとありました。特に印象深いエピソードがあれば教えてください。

そうですね。少し前提からお伝えすると、実はDX本部は前身のITイノベーション部から組織改編して2020年にできた比較的まだ新しい部署。社内では「システムを開発する部署」としか認識されていないことも多いのが現状です。DX本部の存在価値を高め周知していきたい狙いから、DXで実現できることを資料にまとめ、それをドアノックツールとして社内での提案活動をしています。

2024年4月に開業した新アリーナのプロジェクトに関して言えば、社内のスポーツ施設に携わる部門の方に、ビジネス戦略に基づく理想のデジタルプロダクトの在り方をお伝えしました。

まず、アリーナ事業を成功に導くには、全体のコスト構造をふまえて削減可能なポイントを把握しコストカットしていくことが重要であること。試合・イベントがない「非稼働日」の活用方法の検討も必要であること。さらに、来場者の熱狂を高めてその日を最大限楽しんでもらい、結果としてアリーナ以外でもお金を使ってもらえるような収益ポイントを構築すること。そのために、どのタッチポイントで何を提供しどういうコミュニケーションをすればまた来てもらえるかの検討が必要であること。1つひとつ洗い出し、そこに対応するプロダクトのアイデアをお伝えしました。

「知らなかった、DXってこんなこともできるんですか!」「これ、すごいですね」といったリアクションをもらえたことは、嬉しかったですね。

こうした働きかけから、すでに一部ではスモールスタートで動き始めている施策もあります。まだ始まったばかりではありますが、うまくいけばより大規模に投資していく可能性もゼロではない。そういったところにつなげていければと思っています。

ご自身として、働かれるなかで特に心がけていることはありますか?

特に意識しているのは、事業部の人たちにも「このプロダクトいいね、一緒にやりたい」と思ってもらうこと。新サービスを生み出すためには、それぞれが自らの意志を込め、愛着を持てるものにしていけることが理想だからです。

そのため、ワークショップを企画するなど、できるだけアイデアを出してもらえる環境をづくりを心がけています。

とはいえ、現実問題として、事業部のみなさんもそれぞれ忙しい状況にある。人を巻き込んで進めていく難しさは痛感しているところです。ここを乗り越えていくには、成果を出し信頼を獲得すること、そして地道な人間関係構築が不可欠。粘り強く取り組んでいきたいと思っています。

三井不動産03

開発と並行して、事業部への働きかけも積極的に行う佐々木さん。繁忙期、開発だけに偏りそうになるときは、三井不動産に入社した目的に立ち返るという。「余裕がなくなりそうなときほど『自分は単に開発をするために三井不動産に入社したわけじゃない。人の流れを変えるために入社したんだ』という原点を思い出すようにしています。これだけは絶対に見失ってはならない。業務の合間を縫って、次のプロダクトのアイデアを準備するようにしています」

デファクトスタンダードを獲るプロダクトを、この手で

そもそも、佐々木さんの「新たな人の流れをつくりたい」という強い想いは、どこから来るのでしょうか?

遡ると、きっかけは中学生の頃。サッカー部の先輩に連れられて、初めて都会のショッピングセンターに行ったときでした。スパイクを買いにショップに入ると、地元では見たことのない商品のラインナップが揃っている。そのなかから自分の足にあう一足を選ぶための専門の器具もある。ほかにも、自分の地元にはないようなおしゃれな飲食店が建ち並び、人もたくさんいる。田舎出身の私にとって、目に映るすべてが新しく、ワクワクした。同時に「またここに来たい」と思ったのを覚えています。

今までに見たことがないモノ・体験は、これほどまでに人の心を動かし、特定の場所に人々を向かわせる力がある。そういった原体験が今につながっているのかもしれません。

最後に、今後の野望があれば、教えてください。

理想は、自らがつくったプロダクトによって新しく生まれた人の流れが、日常に当たり前にあるような世界。いわゆるデファクトスタンダードになるようなものになっていけばいいなと思います。10年後、20年後に振り返ったとき、「この仕組みは、こういう背景があって当時こういうことを思いながら作ったんだよな。あの仕組みは…」と思い出しながらみんなとお酒が飲めたら最高だな、と思うのです。

そのためにも、まずはメインミッションである開発で成果を出す。成功させる。そこで信頼を勝ち取っていく。「佐々木の提案なら、乗ろう」と思ってもらえる存在になっていきたい。1つでも多くの新しいプロダクトを形にしていければと思います。

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