INTERVIEW
助太刀

大手人材会社から建設スタートアップへ──1通のスカウトが開いた、60兆円市場への挑戦の道

掲載日:2025/07/30更新日:2025/07/30
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建設業の慢性的な人材不足の課題に挑む「助太刀」。建設現場で働く職と、工事会社をつなぐマッチングプラットフォームを提供する。今回は、同事業のカスタマーサクセス部マネージャーの木下信さん(32歳)を取材した。もともと大手住宅メーカー、大手人材会社で働いてきた彼は、なぜ助太刀に転職したのか。そこには「まだ未整備の環境に飛び込み、勝負したい」という思いがあった。

助太刀とは
累計66億円を調達し、建設現場そのものの構造改革に挑むスタートアップ。マッチングプラットフォーム『助太刀』、正社員採用サービス『助太刀社員』、オンデマンド教育サービス「助太刀学院」を展開している。同社の革新性は、建設業界に根深く残る受発注の“慣習”をテクノロジーの力で塗り替えた点にある。これまでの業界では、顔なじみや長年の付き合いを重視したアナログな発注が主流で、その結果、実力があってもコネクションがない職人には仕事の機会が回らない、繁閑の波がある、遠方まで職人が移動するなど様々な非効率な構造が生まれていた。助太刀はこの構造にメスを入れ、職人と工事会社が新たに出会えるオンライン上の仕組みを構築。細かなアップデートを重ね、直近2025年1月から、過去の取引に基づく信頼性を可視化する「5つ星評価制度」も導入した。職人・工事会社双方が実際の仕事を通じて相手を評価・共有することで、より自由で健全な取引の実現を目指している。建設業界では、慢性的な人手不足に加え、2024年からの職人の残業規制により、工事の中止・延期が全国的に相次いでいる。また道路の陥没事故など、インフラの老朽化への心配の声も多い。こうした中、助太刀の存在はますます重要性を増していくだろう。

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未整備だからいい。ここで勝負したい

大手住宅メーカーの営業、大手人材会社での営業などを経て、助太刀へ。その転職の経緯から伺った。

前職の人材会社では、スタートアップ企業の採用支援、IT業界の未経験人材採用支援、社内システムのプロダクトマネジメントなど、多岐にわたる業務に携わり、充実感を持って働いていました。正直、これといって何か不満があったわけではありません。ただ、振り返ると、スタートアップ企業の支援を担当した経験は、転機となったように思います。

というのも、担当していたスタートアップ企業が、それまで世の中の“当たり前”を、ものすごいスピードで塗り替えていく様を何度も目の当たりにしたんです。大手と比べてリソースに限りはあるはずなのに、彼らが社会に及ぼすインパクトの大きさには圧倒されました。「スタートアップという世界を知らずにキャリアを終えるのは、もったいないかもしれない」──そんな思いがふと芽生えたのを覚えています。もともと、組織の規模に安心を求めるタイプではなく、自分の市場価値を高めていきたいという思いが強かったこともあり、次第にスタートアップへの転職を意識するようになりました。

ちょうどその頃、アンビ経由で助太刀からスカウトメールが届いたんです。スタートアップ支援を担当していたこともあり、社名は知っていました。改めて調べてみると、「建設業界」は60兆円規模の市場なんですよね。業界特化型のサービスでありながら、非常に巨大なマーケットと向き合っている。しかもサービスの優位性が高く、既に業界にとって必要不可欠な存在になりつつある。ここなら、仕事を通じて社会に直接インパクトを与えられるかもしれない。まさに自分が求めていたような環境があると感じました。

さらに選考を通して、「良い意味でまだ整いきっていない」組織であることも、大きな魅力に映りました。急成長にともない、毎月のように新たなチームや組織が立ち上がっているという話を聞いたとき、自分の経験が活きる余地が多分にあると感じたんです。このフェーズに飛び込めば、きっと面白い経験ができる。そんな期待が次第に確信へと変わり、「ここで勝負したい」という気持ちが固まっていきました。

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2015年、新卒で住友林業に入社。個人向けに注文住宅の営業活動に従事。2017年にパソナに中途入社。人材紹介でスタートアップ支援などに従事。2023年3月に助太刀へ。現在、カスタマーサクセス部マネージャーを務める。プライベートでは、2023年にお笑いコンビを結成し同年M-1 グランプリに出場。

2024年、国とタッグでフォーラムを主催。「潮目が変わった」

働くなかで感じる仕事の「やりがい」とは?

現在、カスタマーサクセスマネージャーとして、マッチングサービス「助太刀」を導入している工事会社と向き合っているのですが、「助太刀のおかげで売上が2倍以上になった」といった声を直接いただけた時は非常に嬉しく、やりがいにつながっています。

たとえば、ある防水工事会社では、助太刀の活用によって、継続的に現場を任せられる協力会社が5社ほど見つかり、導入当初8000万円だった売上が1年で1億2000万円に、さらに翌年には2億円にまで拡大しました。以前は協力会社がいないために、自社の職人だけでは対応できる件数が限られ、せっかくの案件依頼も断らざるを得なかった。そんな状況が、助太刀をきっかけに大きく動いた。まさに“景色が変わった”瞬間に立ち会えた、印象的な事例です。工事需要は伸びているのに、施工力が追いつかず、結果的に廃業へと追い込まれてしまう──そんな負の連鎖を食い止められたことに、自分の仕事の意味を強く感じました。

特に最近、お客様からの反応も非常によいのですが、ここには2024年に初めて開催した「建設業働き方フォーラム」も大きく関係しています。本フォーラムでは、国土交通省やゼネコン、ハウスメーカーの経営層など、建設業界を牽引するオピニオンリーダーに登壇いただき、若手人材の不足、賃金改善、外国人材の活用といった課題に対し、各々の視点から議論を交わしました。

私が担当するお客様にも足を運んでいただいたのですが、「助太刀は単なるマッチングサービス企業ではなく、国やゼネコンを巻き込みながら、本気で建設業界そのものを変えようとしている会社なんだ」と、認識が一段深まったように感じました。実際、それをきっかけにサービスを更新いただいたり、新たなサービスを導入いただくなど、定量的な変化にもつながっています。私たちの覚悟や姿勢が届き、経営者の皆さんの目の色が変わる──そういった瞬間に立ち会えたことは、忘れられない経験です。

これまでのキャリアを振り返っても、こうした体験は初めてでした。業界の常識を本気で変えようとする助太刀だからこそ、得られたものだと思っています。

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「建設業働き方フォーラム2025」の中で開催したリアルにマッチングを行なえるイベントで司会をする木下さん。

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「社員の意見がどんどん採用される風土なので、アイデアを形にしていくチャンスはごろごろ転がっている。自分の意見がサービスに反映されやすい」と木下さん。「建設業を盛り上げていくようなYouTube企画とかは挑戦してみたいですね。たとえば、ハウスメーカーとタッグを組み、助太刀で職人さんを集めて、社員の家を建てる過程を動画にできたりしたら面白そうだなと思っています」

お金だけでは満たされなかった。社会に価値を届け続けたい

今後の目標について──

直近の目標としては、まずは目の前、組織の売上目標の達成にコミットしたいです。そのためにも、マネージャーとしてメンバー1人ひとりのコンサルティングスキルを底上げをしていきたいと考えています。

また、カスタマーサクセスは、顧客と最も近い距離で向き合う部門。だからこそ、日々の対話の中で拾った声を大切にしたい。そしてプロダクト改善や新機能の提案へとつなげていければと思います。その積み重ねが、サービスの価値向上にも直結すると感じています。

たとえば、2025年1月にスタートした助太刀のユーザー同士が互いを評価し合う「評価制度」も、まさにカスタマーサクセスチームが現場の声を汲み取り、形にした取り組みです。実際、職人の皆さんが腕を磨く機会が増えたという声も届いており、よい循環が生まれています。今後も、こうした価値ある仕組みを生み出し、顧客のLTV(ライフタイムバリュー)向上に寄与していきたい。そしてその先に、助太刀が掲げる「建設現場を魅力ある職場に」というミッションの実現があると信じています。

最後に、木下さんにとって「仕事」とは。

僕にとって仕事とは、「社会に貢献すること」そのものです。母校の関西学院には、“Mastery for Service(奉仕のための鍛錬)”というスクールモットーがあって、「隣人・社会・世界に仕えるために、自らを磨き続ける」という価値観を、10年間の在学中に自然と叩き込まれてきました。だからこそ、仕事をするうえで“誰かのためになるかどうか”という視点は、常に軸として持ち続けているつもりです。

少し余談ですが、1社目を辞めたあと、2社目に入社するまでの間、フリーターのような暮らしをしていたことがありました。生活に困ることはなかったものの、時間が経つにつれて、何とも言えない“物足りなさ”を感じるようになって。SNSではよく「お金があれば働かなくていい」といった価値観を目にしますが、いざそれに近い状況を体験してみると、そんなに単純な話ではないんですよね。やっぱり、人はお金だけでは満たされないんだと思います。社会とつながっていること、そして社会に価値を届けているという実感が、自分にとってどれほど大切なものなのかを痛感しました。

だからこそ今は、助太刀を導入いただいている企業の3年後、5年後の未来に向けて、ともに課題を整理し、最適な打ち手を届けていく。そんな伴走者として、1社でも多くのお客様と誠実に向き合っていきたいと思っています。

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