INTERVIEW
ジェトロ(独立行政法人日本貿易振興機構)

地方活性に貢献を――。外資スタートアップからジェトロへ、20代最後の転職で選んだ道

掲載日:2026/05/21NEW更新日:2026/05/21
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日本企業の海外展開、そして外国企業の対日投資を支援し、日本経済の発展に寄与するジェトロ(独立行政法人日本貿易振興機構)。全国・世界各地に拠点を持ち、企業支援からスタートアップ支援、人材分野まで幅広い事業を展開する。今回は、高度外国人材課の地域支援・国内プロモーション班で働く上野陽菜子さんを取材した。もともと外資の大手IT、スタートアップでキャリアを築いてきた上野さん。なぜ、ジェトロに転職したのか。そこには、幼少期の海外在住経験と「地方活性を一生のテーマに働いていきたい」という強い思いがあった――。

※画像内は、転職時の年齢となります。

公的な立場から「地方活性」に貢献を 

外資大手ITに新卒入社し、その後、外資スタートアップでキャリアを築いてきた上野さん。前職の仕事内容と、ジェトロへの転職理由から話を聞くことができた。

前職の外資スタートアップでは、営業・事業開発を担うポジションで働いていました。私が入社した当時は、日本に上陸してまもないフードデリバリー事業の市場開拓に携わり、その後、クイックコマース(即時配達)事業の立ち上げに従事していました。

いかにサービスをゼロから浸透させていくか。さまざまな地方都市に出張し、コンビニ、スーパーマーケット、百貨店などに新たなビジネスの柱になり得るクイックコマースの導入と拡大提案をしていくのですが、まさに事業をつくる醍醐味があり、とても濃い時間を過ごすことができました。

同時に、当時29歳という年齢でもあり、個人的には節目だという感覚も。また、私自身、人生のテーマとして「地方活性への貢献」を軸に据えていたこともあり、より多角的な視点から「地方」と向き合えるようになりたいという思いがありました。たとえば、公的な立場から、地方活性のためのアプローチができないか。非営利な視点で、地方と海外の両方に関わることができないか。そういった思いがあり、転職を意識するようになりました。

そして出会ったのが、ジェトロにおける経験者採用の情報だった。

ジェトロであれば、まさに「地方活性への貢献」という軸を、地方と海外をつなぐという角度から追求できるかもしれない。そう考え、入構を志望しました。また、これまで営業職の経験しかなく、違った職種にも挑戦してみたいといった思いもありました。ジェトロは公的機関ですので、いわゆる「営業職」がなく、新しい役割の中で自分の経験を生かしてみたい。それらが決め手となり、ジェトロへの入構を決めました。

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外資スタートアップに転職するタイミングで北海道・札幌に移住し、5年ほど暮らしていた上野さん。「札幌ではその地域ならではの魅力や取り組みに触れることができました。この魅力を世界に発信したいという思いが強まりましたし、地元企業が盛り上がることで、地域全体が元気になることも実感しました。一方で、新しいサービスや事業に対し、地方ではどうしても少し保守的になってしまう傾向も。そこに公的な支援が入ることで、挑戦のハードルを下げられるのでは?と感じ、ジェトロでの仕事にも興味を持ちました。」

担うのは「日本と世界の架け橋として活躍していく人材」の採用支援

こうして2025年10月にジェトロに入社した上野さん。現在担当している業務について、より詳しく話を聞くことができた。

現在は、知的資産部 高度外国人材課の地域支援・国内プロモーション班に所属しています。主に担っているのが「高度外国人材を採用したい日本企業」と「日本での就職を希望する高度外国人材」をつなぐイベントの企画・運営支援です。地方の大学や経済団体・行政が実施するセミナーや交流会などのイベント実施を、ジェトロ国内事務所とも連携しながら支援しています 。

■「高度外国人材」について
ここでの「高度外国人材」とは日本で高度な専門性や国際的な視点を活かして働く外国人材のこと。高度外国人材は「単なる人手不足対策」ではなく、「グローバル市場で戦うための戦略人材」として位置づけられ、日本の大学や大学院を卒業した外国人留学生も含まれる。

■ジェトロ高度外国人材課の事業について
ジェトロでは「高度外国人材活躍推進コーディネーター」による支援を通じて、高度外国人材の採用戦略から受け入れ・定着までの伴走支援も行っている。また、支援企業と学生を繋ぐ場の提供として、「ジェトロオンライン合同企業説明会」の運営も行っている。2025年秋開催回では、35都道府県から147社が参加し、外国人留学生や海外の日本語学習者に向け、会社説明が実施された。2026年1月開催回では、29都道府県から約90社が参加し、日本語・英語の両言語で説明会が行われている。製造業、IT、サービス業をはじめ、地方企業も多く参加し、海外展開や多言語対応、DX推進などを見据えて、高度外国人材の採用を進めたい企業が中心となった。イベントでは、ライブ配信形式で企業担当者に直接質問できるほか、アーカイブ視聴にも対応。

(参考)
https://www.jetro.go.jp/news/announcement/2025/f89de96a1e2ac9d5.htmlhttps://www.jetro.go.jp/hrportal/forprofessionals/

この仕事においてとても大切になるのが大学、大学院、日本語学校といった教育機関との連携です。ジェトロ国内事務所や大学キャリアセンターと協力し、留学生向けの就職セミナー、企業理解講座なども実施しています。

実際、私も講演者の一人として、外国人留学生向けに自身の就活の話を交えつつ、日本独自の新卒一括採用文化や、就活準備としてジェトロ提供サービスの活用方法を説明する機会もあります。やはり外国人留学生にとって、日本での就職活動はまだまだハードルが高く、高度外国人材を積極採用している企業情報をどこから調べればよいのかわからないという課題もよく耳にします。たとえば、「日本の就職活動の流れ」「ジェトロが公開しているポータルサイトを活用した企業・イベント情報の収集」など、できるだけイメージしやすいように話すことを心がけています。

また、企業向けの活動として「経済団体」や「地方の経済産業局」との連携も重要な仕事の一部です。企業側としても「そもそも留学生との接点をどう持てばいいかわからない」「定着や社内コミュニケーションが上手くいかない」などさまざまな課題があり、それらの解決に向けて各機関と議論をしながら、企画や事業スキームを作り上げていきます。

そういったジェトロの仕事において「やりがい」を感じる場面とは――。

現地での交流会で、外国人留学生の「生の声」に触れることができるのですが、そういった時には特にやりがいを感じますね。たとえば、北陸の交流会では、地元企業の方が「ここは雨が多い地域ですが、大丈夫ですか?」と留学生に質問していて。留学生の方は「私は雨の日の温泉がとても好きです。むしろ雨の日が楽しみです」と答えていたことが印象的でした。その他にも「地方は人混みが少なくていい」「ゆっくりした時間の流れが好き」「自然の近さに惹かれた」と地方企業への就職を希望する留学生もいます。地元の人たちがマイナスだと感じている要素も、外国人留学生の目には魅力として映っている。こういった新たな地方の魅力を発見できることが楽しいです。

また、企業の方からいただく声も、うれしいものが多いです。たとえば、外国人材の採用によって新しい事業のアイデアが生まれたり、プロジェクトが前に進んだり。さらに、その採用をきっかけに就業規則、生活面でのサポートなど「社内制度をアップデートした」という企業も少なくありません。結果的に、日本人にも自社の魅力を伝えやすくなり、「日本人の採用数も増えた」という声もありました。

携わった交流会やイベントを通じ、その企業に入社した留学生が、いつか海外展開など事業のキーパーソンとなり、日本と世界の架け橋として活躍していくかもしれない。そういった可能性、出会いの場を作れていると思うと大きな意義を感じますし、改めて大きなやりがいにつながっています。

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やりがいの一方で、事前に知っておくべき厳しさについて「公的機関での仕事は、常に透明性や説明責任を意識する必要があります。」と話をしてくれた上野さん。「税金によって事業を執行している以上、「何のために」「いくらの予算で」「どのような形で使うのか」といった説明責任があります。また、大学や企業の方から質問をいただく際も「ジェトロ」を代表しての説明、正確な情報提供が求められるため、緊張感もありますね。一方で、もしわからないことがあれば、経験豊富なメンバーに率直に聞くことで助けてもらうことができ、本当に心強いです。もう一点、前職との違いでいえば、ジェトロでは公的機関としての中長期的な取り組みが多く、売上や利益などを指標とはしていません。そういった環境の中で、いかに定量的な指標だけでは見えない価値を信じ、関わる人や地域の変化を積み重ねていけるか。個人的には、そういったプロセスを楽しめる方にこそ合うフィールドだと感じています。」

「多様な日本」の魅力を世界へ

そして取材後半に聞けたのが、上野さんが「仕事を通じて実現していきたいこと」について。

私個人の目標としては、さまざまな目線から日本について語れるようになりたいと考えています。たとえば、「日本」「地方」「企業」と一言で言っても、そこには数え切れないほどの側面がありますよね。地域性、業界ごとの特色、企業のカラー、ちょっとした豆知識含めて「この地域にはこんな魅力がある」「この業界にはこういう面白さがある」「その会社ならではの強みがある」など、多角的な視点から「日本」の魅力を語れるようになりたいです。

また、所属している高度外国人材課では、インド、南西アジアなど海外の教育機関と連携した事業も展開しています。実際、現地の学校と日本企業をつなぐ就職イベントの企画にも携わっており、もしインドを訪れる機会があれば、ぜひ現地の空気も肌で感じてみたいです。そういった経験を通じ、私自身が人生のテーマにしている「地方活性への貢献」を実現していければと思います。

なぜ、上野さんは「地方活性への貢献」にこれほどまでに熱い思いを抱くようになったのだろう。そこには、海外で育った視点と、学生時代の経験があったという。

私自身、幼少期から高校卒業までブラジル、ロシア、スペインの3カ国で暮らしていました。海外での生活が長く、東京以外の都市に住んだこともなかった、私の中にもどこか「日本」に対する固定観念があったように思います。ただ、高校時代にあるボランティアに参加し、それがいい意味で覆される経験をしました。

一時帰国中、新潟県十日町市での夏のボランティアに参加したのですが、そこには知っているつもりだった「日本」とはまるで違う景色がありました。食文化も、夏祭りの盆踊りの雰囲気も、どれも新鮮で驚きの連続。同時に、過疎化が進み、地域の文化を継承する人がいないという深刻な課題も目の当たりにしました。こうした経験を経て、「日本」という言葉で一括りにはできないと痛感し、さまざまな地方を含めた「多様な日本」の魅力を、世界に広めていきたいと強く思うようになりました。

そして、地方の中小企業の中には、優れた技術や先進的な取り組みをしているにもかかわらず、留学生どころか日本人学生にさえ存在を知られていない企業もたくさんあります。だからこそ、私たちが介在する意味があると考えています。まずは、外国人留学生たちにとっての就職先の選択肢を広げ、企業にとっては自社の魅力を見つけてもらう機会をつくる。こうした出会いを全国で増やし、日本全体にとっての大きなプラスにつなげていければと思います。

最後に聞いたのは、上野さんの仕事に対する価値観について。彼女にとっての「仕事」とは一体どういったものなのだろう。

私にとって仕事は「自分の世界観を広げ、引き出しを増やし続けてくれるもの」です。仕事だからこそ未知の領域、課題に挑戦できる機会があります。また、多様な価値観を持つ人々と関わることで、視野が広がっていくと感じています。

業務内容ももちろん重要ですが、「誰と働くか」は私にとって同じくらい大切なもの。あらためてこれまでのキャリアを振り返ると、本当に「人との出会い」に支えられてきました。前職でも多様なバックグラウンドを持つ仲間と過ごした時間は、キャリアの中でも特に濃い時間でした。競争の激しい業界で大変な時期もありましたが、「一つのゴールに向かって全員で同じ方向を向く」という感覚はとても楽しかったですね。その感覚は、今も大切にしており、ジェトロでも、年代やバックグラウンド、国籍が異なる多様な方々と出会い、共に働くことで日々刺激を受けています。私自身も中途入構者として、周囲に少しでも良い影響を与えられたらうれしいです。こうした環境で得られる経験は、仕事のスキルだけでなく、人生の財産になっていくはず。だからこそ、これからも一つひとつのご縁を大切にし、仲間たちと共に、日本の未来を切り拓く仕事と真摯に向き合っていければと思います。

入構者が体験から語る「選考のポイント」

■選考にあたり準備したこと
エントリー前には、どういった人がジェトロで活躍しているか、自分なりに調べてから選考に臨みました。具体的には、採用ページはもちろんですが、AMBIのインタビュー特集も読み込みました。また、実際にジェトロで働いている方にも直接お話を聞きに行きました。転職する以上、似たような価値観、思いを持った方々と働きたいと強く思っていたので、「ここで働いている人は何を大事にしているのか」という視点を知ることを大切にしました。

■面接で気をつけたこと
まず私が人生のテーマとしている「地方活性に貢献したい」という点については、面接で率直に話をしました。また、「海外に抵抗感がないこと」「やったことのない領域にも好奇心を持って取り組める」といった点をアピールしたように思います。特にジェトロでは自分が想像もしていなかった業務も多く発生すると考え、後者の「好奇心」は重視されるのではないか?と考えましたし、そういった点を問われる質問も多かったと記憶しています。」

■現職に活かせているスキル・経験について
英語力は活かせる場面が多いです。また、営業として身につけた、「相手の視点に立つ」といった部分は活かせていると感じます。特に前職はスタートアップだったため、お客様に「新しいこと」を始めていただく必要がありました。単にメリットを伝えるだけでは足りず、何を不安に感じているのか、どういったステークホルダーが関わっているのか、それぞれの言葉にどのような背景があるのか、多角的な視点で理解していくことが非常に重要でした。ここはジェトロにおいても共通する部分。同じ組織内でも部署によって目線が違いますし、大学、経済団体、地方自治体、企業とそれぞれが大事にしているポイントは異なります。だからこそ、誰と話す時にも「この人は今どんな景色を見ているんだろう」と意識することが大切で、その感覚は営業時代に鍛えられたものだと思っています。


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