INTERVIEW
TOHO Global(東宝グループ)

『ゴジラ-1.0』『ガス人間』が世界的ヒット。日本発IPで世界に挑む「TOHO Global」の全貌

掲載日:2026/10/08NEW更新日:2026/10/08
求人掲載中

2024年に第96回アカデミー賞®視覚効果賞を受賞した『ゴジラ-1.0』。そして2026年7月、Netflixシリーズとして週間グローバルTOP10入りも果たした『ガス人間』。こうした日本発IP作品で世界に挑むのが、東宝グループの「TOHO Global」だ。いわば東宝の“商社”としての役割を担い、グローバル市場への進出を力強く牽引している。2023年の設立から現在までの怒涛の3年間、そして今後の事業展望について、代表取締役社長の植田浩史氏に話を伺った。

TOHO Globalについて
東宝グループは、長期ビジョン「TOHO VISION 2032」において、成長戦略のキーワードに「海外」を掲げている。日本発のコンテンツでグローバル市場へ打って出るため、意思決定をスピーディーに行い、事業の機動力を高める目的で、2023年に東宝の「国際部」がスピンオフする形で設立された。
主な事業は、映像作品を預かり、現地配給会社や配信プラットフォーム、海外の劇場に許諾する「映像許諾事業」と、人気IP(知的財産)を活用してグッズやイベント、ゲームコラボなど映像外のビジネスを展開する「商品化ライセンス事業」の2つだ。

toho_global_Godzilla (2)

2023年12月に北米で公開された映画『ゴジラ-1.0』。当時、TOHO Globalは北米の子会社、TOHO Internationalを通じて自社配給を行った。その結果、日本の実写映画としては過去に例を見ない大ヒットを記録し、第96回アカデミー賞®視覚効果賞受賞という快挙につながった。これは、東宝が大事にしている、「クリエイティブサイドに立ち、作品を通して発信するメッセージを重要視する姿勢」が、世界に通用することを証明した出来事でもあった。

北米を皮切りに、世界へ広がる「グローバル配給網」

東宝グループ全体の業績は、2026年2月に売上・利益ともに過去最高を更新した。まずは、その好調の要因から聞くことができた。

売上伸長の最大の要因は、映画配給の好調にあります。東宝が取り扱う作品の国内興行収入が非常に伸びていることが、最大のエンジンです。海外市場に目を向けると、実は足元の「国内興行収入の爆発的な伸び」そのものに対しては、我々TOHO Globalが直接的に与えた影響はまだ限定的です。あくまでも国内の映画配給が強固な基盤として機能している、というのが現在の構図です。

一方で、「日本発アニメの世界的な人気」においては、TOHO Globalが重要な役割を果たしている。

コロナ禍を経て、海外における日本アニメのテレビシリーズ(配信)の視聴者数は飛躍的に増加しました。これにより、海外からのライセンス収益も着実に高まってきており、全体の収益ベースを押し上げることに貢献しています。そして、この「海外でのアニメ人気」が、回り回って国内の興行収入とのよい相乗効果をもたらしているとも言えるでしょう。

海外やテレビ配信で人気を博したアニメシリーズの劇場版が公開され、日本国内でも、そして世界でも記録的な大ヒットとなる。この「配信(テレビ)から劇場版へ」という良質な還元サイクルが、今の好業績を強力に下支えしていると言えます。

そして、海外のアニメ市場で勝負するべく、ここ数年で取り組んできたのが、海外のアニメ配給会社のM&Aや提携だ。

アニメに限らず、映画やキャラクタービジネスといったエンターテインメント市場は、世界の大半を北米が占めています。この重要市場を優先的に獲得するため、2024年には北米では日本アニメ配給の大手「GKIDS」を傘下に迎えました。

さらに、北米だけではなく、2026年1月には英国・フランス向けに事業を展開する日本アニメ配給会社「Anime Limited(アニメ・リミテッド)」をグループに迎え入れ、ドイツのPLAION PICTURES(プレイオン・ピクチャーズ)とも戦略的パートナーシップを締結しました。これにより、自社IPに限らず、配給のみを担当するアニメの劇場版なども、自社の配給網で世界展開できる体制が整いつつあります。

     かつて『ゴジラ-1.0』が、日本実写映画の過去最高興収を塗り替え、アカデミー賞を受賞した快挙は、作品自体の魅力や監督の卓越したクリエイティブの賜物です。同時に我々にとっても、北米での自社配給や、グループネットワークを総動員し、その一翼を担えたという確かな成功体験となりました。

これまで進めてきたグローバルな配給網の強化は、まさにこうした「作品の持つポテンシャルを海外市場で最大限に開花させるサポート体制」を、再現性をもって世界規模で確立するための取り組みと言えます。

北米、ヨーロッパでの子会社化はもちろん、シンガポールなどアジアの現地法人の設立なども進めているTOHO Global。エリアごとに好まれるコンテンツの差異などは見えてきているのだろうか。

よく聞かれますが、実は、目立った「地域差」は現時点ではほとんど見られないというのが現状です。というのも、地域を問わず海外のアニメファンの多くが、日本を「アニメの中心地」として捉えており、日本と同じ体験をできること自体に価値を見出しているためです。その結果、「日本とほぼ同時にリアルタイムで視聴できること(サイマル放送)」や「日本国内で販売されているグッズやイベントを、そのまま現地でも展開されること」が歓迎されている状況があります。

ただ、本来であれば、言語や文化、歴史的背景が異なれば、好まれるコンテンツも多様化していくのが、健全な市場の姿ではないかと思うのです。

どの国でも同じ体験・同じ作品が求められているということは、裏を返せば、まだ、「日本のカルチャーを愛するコア層」だけにしか届いておらず、現地での一般層にまでは広がっていない。だからこそまだ好みの差も生じず、多くが「日本と同じもの」を求めている状況なのだろう、と。そのため、まだまだ巨大な伸び代とチャンスがあると考えています。

TOHOglobal_代表

「想定していたほどの地域差はまだ見えていないものの、強いて言えば、エリアごとの好みは見えてきた」と植田氏は語る。「たとえば北米は、『呪術廻戦』や『僕のヒーローアカデミア』に代表される最新のアクション作品や、主人公の成長ストーリーを好む傾向があります。一方でヨーロッパは、『ONE PIECE』や『NARUTO -ナルト-』のように、一度好きになったIPを長く深く愛し続ける傾向があります。また、アジアは最新トレンドへの感度が最も高く、最近ではアクションのみならず、『葬送のフリーレン』や『薬屋のひとりごと』といった新ファンタジー系作品にも手応えを感じています」

ガス人間1440×1030

東宝が企画・製作し、Netflixで世界独占配信されたシリーズ『ガス人間』。TOHO Globalの社員がクリエイターや配信プラットフォームと直接交渉し、本社の企画部とともに脚本開発を進めるなど、プロジェクトの中核を担ったという。「TOHO Globalの重要な使命の1つに、IPを含む東宝資産を海外事業というレンズを通してどう拡大できるかがあります。その強力な手法となるのが、過去の作品を現代の技術と新しい解釈で再構築し、新たな作品として蘇らせるリブートです。東宝の『特撮』や『変身人間シリーズ』は海外クリエイターからも非常に高く評価されており、大きなポテンシャルがあると確信していました。そこで、リブートに向けて動いていた中で、韓国のヨン・サンホ監督が『ガス人間』に強い興味を示してくださったのです。そこから、彼が脚本・エグゼクティブプロデューサーを務め、日本の片山慎三監督がメガホンをとる日韓タッグが実現。キャストにもトップスターが集結する強力な布陣が整いました。また、ドラマシリーズ化にあたっては、グローバル展開を前提とした動画配信サービスとのパートナーシップが必要と判断し、Netflixでの世界独占配信が決定しました。国際部時代から培ってきた海外クリエイターと企画を形にしていくためのコミュニケーション力やノウハウ、そして国内外のパートナーとの交渉力を生かすことで、名作IPが再び形を変えて世界へと届き始めています」

middle_toho_point

「ファンの数 × ファンの熱量」で挑む、IP価値の最大化

海外の人々にとって、日本のアニメやコンテンツを「コアな趣味」から「日常の娯楽」へと広げていくためには、どういった戦略を描いているのか。

前提として、市場を拡張していくということは、IPの価値を上げていくことでもあります。

私たちは、「IPの市場価値」を、 「 ファンの数 × ファンの熱量」と定義しており、この掛け算を最大化していくことこそが、我々のビジネス戦略の根幹です。

まず、「ファンの数を増やす」ためには、ただ作品を配給・配信プラットフォームに並べるだけでは不十分です。配信サイトはデジタルな百貨店のようなものであり、棚に並べただけで自動的に宣伝してくれるわけではありません。作品に興味を持ってもらい、能動的に「見たい」と思っていただくための、マーケティング・宣伝活動が不可欠です。

次に、「ファンの熱量を高める」ためには、ファンが作品を好きになってくれた瞬間に、その熱量を受け止める「受け皿」を提供しなければなりません。

例えばアニメ『ハイキュー!!』ファンの方々には、キャラクターの生き様や信念に心を動かされ、彼らの高校の横断幕に掲げられた「飛べ」という言葉や名セリフを、自分の日常にも取り入れたいというニーズがあります。その熱量が高まった瞬間に、私たちが「ステッカーは作っていません」「マグカップは売り切れです」などと機会を逃してしまっては、ビジネス上の損失であると同時にファンを失望させ、IPの価値を高める機会を自ら放棄していることになります。

この機会損失を防ぐために取り組んでいくのが、地域的な「カバレッジ(網羅性)」を増やしていくと同時に、「ビジネスライン(機能)」も拡充していくことです。縦軸と横軸の「メッシュ」をどんどん細かくしていくイメージですね。

直近の例で言えば、これまで「商品化ライセンス」には、文房具、フィギュア、アパレル、ゲームなどあらゆるジャンルが含まれ、中でもゲームのIPコラボの伸びは著しく、マーケティング効果も高い事実がありました。そこからブランド・マーケティングとライセンシングをそれぞれ別々のグループチームとして組むようになり、さらにマーケティングの中にはデジタルマーケを別チームとして組成しています。これにより、専門的なノウハウを持って、作品IPに応じてスピーディーかつ適切な施策を展開できるようになっていく。このように、現地のマーケット需要に合わせて、組織のメッシュを細分化し、ファンの熱量に半歩先回りしてアプローチしていきます。

もう1つ、重要な戦略として植田氏が挙げるのが、「現地スタッフが活躍できる環境づくり」だ。

どれだけ優れた戦略を東京本社で描いても、現地の空気感、文化のニュアンスを真に理解しているのは、現地の人々に他なりません。特にSNSを中心とした最新のマーケティングにおいては、言葉選び一つ、あるいはミーム(流行)の使い方一つで、コンテンツが爆発的にバズることもあれば、逆に意図せぬ炎上を招くこともあります。AIによる直訳や、日本からの中途半端な発信では、現地のユーザーの心に刺さるツボを突くことは不可能です。だからこそ、現地の事情やトレンドを正確にキャッチアップできるスタッフを採用し、彼らが主体的にアイデアを出し、遅滞なく実行に移せる環境づくりにも注力していきます。

「未成熟な組織」と「2者に挟まれる宿命」。このカオスを楽しめるか

こうした中、TOHO Globalでは、コーポレートやブランドマネジメントなど幅広い職種を募集していく。今入社することで「得られる経験」、そして「求める素質」とは。

まずコーポレートに関して言えば、急成長する組織の根幹を作っていく経験を積んでいただけると思います。

先ほどお伝えしたように、地域と機能の「メッシュ」を細かくしていくため、ここ数年で急速に採用を進めてきました。実際、15人ほどでスタートした組織が、数年で100名を超えるまで拡大しています。当然、ビジネスライン(機能)が増えれば増えるほど、管理監督側であるコーポレートの役割や業務は増えていきます。まだ4期目のベンチャーゆえ、すべての仕組みや制度が整っているわけではありませんが、この状況を楽しみながら、都度周りの人たちとコミュニケーションをとって主体的にキャッチアップしていける方は、立ち上がりが早いと思います。

また、ブランドマネジメントなど、クリエイティブやライセンシーと向き合うポジションについて言えば、作品を作るクリエイティブ側と、海外現地でIPを売る人の間に立って仕事をしていくことになります。

クリエイターは、自分が作った作品を「こう届けたい」という強い意志を持っています。一方で現地のパートナーは、「この市場ではこうした方が売れる」というビジネス視点を持っている。両者の主張は、合致しないことも多いです。そうした意見と意見の間に立ちながら、その両方の主張を両立させていく。非常に難しくはありますが、これこそがTOHO Globalの存在意義でもあるのです。それを、「面白い」「ビジネスチャンスだ」と捉えられる方は、ご活躍いただけると思います。

ゴジラー0.0_1440×1030

2026年11月には、『ゴジラ-1.0』の2年後の世界を描いた直接の続編『ゴジラ-0.0』が公開へ。ゴジラの捉え方も、国によって様々だと植田氏は語る。「東宝入社当初、ゴジラ作品を海外のお客様に見せる会に何度か立ち会いました。その際、様々な国の観客が、同じ作品を観ているにも関わらず、リアクションが全く異なることに驚かされたのです。アメリカや中国の方は、ゴジラに求める要素が『強さ、怖さ、巨大な怪獣』でした。日本人はゴジラに対して、人間の罪によって生まれざるを得なかった悲哀や物悲しさを重ねます。そして、不思議なことにヨーロッパの方々もまた、日本人が抱くような『ゴジラの哀愁』を理解しているようでした。この違いを考えたとき、観客はスクリーンに映るゴジラを見ていると同時に、ゴジラを通して『自分自身』をスクリーンに投影しているのではないか、と気づいたのです。以来、どんどんエンターテインメントという仕事に魅了されていきました」

世界中に「感動」を届ける、最前線へ

取材の終盤、植田氏自身のキャリアについても伺った。もともと総合商社、証券会社で働いていたところから、東宝への転職を決めた経緯とは。

きっかけは、たまたま紹介を受けたことでした。とはいえ、当初は自身がエンタメ業界に進むなど、想像もしていませんでした。

それまでのキャリアでは、商社でのプラント建設やプロジェクトファイナンス、インフラファンド、投資銀行といった、まさに「数字とロジックの世界」に身を置いていました。そのため、感情や感性を扱うエンタメ業界は、自分にとって対極にあるイメージ。まして、自分がどう役に立てるのかも全く見当がつきませんでした。半分は興味本位で話を聞きに行ったのですが、その面接は予想を大きく裏切るものでした。

特に現・東宝の社長執行役員 CEOである松岡との面接で言われた言葉が印象的でした。「海外事業として成功させるには、海外でプロジェクトをしっかりと回し、組織を構築できるプロジェクトマネージャー、事業を形にする力が必要だ」と。

それならば、私が商社や証券の厳しいグローバル環境の中で培ってきたスキルが、活かせるのではないか。それまで「自分には縁がない」と思っていたエンタメ業界が、急に面白い挑戦の場に見えてきた瞬間でした。

それでも迷っていた私の背中を押したのは、他でもない「家族」の存在でした。前職までは、家族に自分の仕事を説明したり、苦労して手がけたプラントを見せようとしても、あまり関心を持ってもらえず、どこか張り合いのない日々でした。しかし、東宝への転職について家庭で話を切り出したところ、妻と娘たちが「面白そう。やってみたら?」と、今までにないほど目を輝かせて背中を押してくれたのです。

今では、作品のエンドロールに私の名前が載っているのを見て、娘たちは喜んでくれています。私が直接制作に関与しているわけではありませんが、家族に「自分の仕事が伝わる」ということは、想像以上に嬉しいものでした。

また、この仕事を始めてから、以前よりも人間らしくなったように思います。ビジネスでも家庭内でも、物事をバッサリ切り捨てるような態度はなくなりました。どんな対立にも最適なバランスを探る。その姿勢の変化は、家族からも大いに歓迎されています(笑)。

最後に、今後の事業にかける思いを伺った。

私が仕事を通じて届けたいのは、人の心が大きく動く瞬間です。感動というと、涙を流して感傷に浸るような体験を想像しがちですが、決してそれだけではありません。手に汗握るスリルや、身の毛もよだつ恐怖、あるいは不条理に対する怒りであっても、作品を通じて心が強烈に揺さぶられたのであれば、それもまた立派な感動です。

良い作品、良いIPに触れた時、それぞれが異なるシーンに心を動かされ、熱量を持って感想を語り合う。このように、感動は、人と人とのコミュニケーションを生み、感情の交換を促します。その時間こそがかけがえのない瞬間であり、人生を豊かにしていく。これこそが、東宝グループがスローガンに掲げる『Moments for Life その時間が、人生の力になる。』の真意なのだと確信しています。

親会社である東宝や他の方々からお預かりした素晴らしいIP群。それらを、いかに世界の人々に届け、魅力を認識いただき、感動を共有できるか。私たちは今、その最前線に立っています。日本のエンターテインメントを、自前の配給網を含め様々な手段を駆使して世界で熱量を上げていく。これは、日本では東宝、そしてTOHO Globalだからこそ挑戦できる仕事だと自負しています。

もちろん、世界を相手にするビジネスですから、思い通りにいかないこともあります。葛藤することも少なくありません。それでも、自分たちのIPが、世界のどこかにいる誰かにとっての『一生ものの瞬間』をつくることにつながっているとしたら、それは他のビジネスでは味わえないやりがいなのかもしれません。

この仕事には、たしかな「生きている実感」があると思います。ぜひその豊かで熱い瞬間を、一緒に味わえたら嬉しいです。

この記事を読んだ人におすすめの記事
最近ご覧になった求人に基づいたおすすめの求人
若手ハイキャリアのスカウト転職