コロナ禍、注目が集まる課題の1つが、「新たな治療薬をいかに短期間で開発するか」。今回注目したいのが、製薬会社によるAIスタートアップ・IT大手との連携の動きだ。最近の事例とともに、実際の求人を見ていこう。
いま製薬会社によるAIスタートアップとの連携の動きが活発だ。そもそも従来、製薬業界における新薬開発の成功確率は2~3万分の1ほど、さらに発売までの開発期間は10年以上、約1200億円の投資が必要ともされてきた(*1)。
連携を進める背景には、AIによってこの膨大な時間とコストを減らし、創薬開発の生産効率を高めていくといった狙いがあるといえるだろう。
ではいま、製薬会社ではどのような連携の動きがあるのか。
たとえば、中外製薬は2020年、AIを使った文章解析を得意とする「フロンテオ社」と手を組んだ。フロンテオ社は論文と疾患の相関関係から病因を探し出すAI『アマノガワ・プロ』を20年11月に公開(*2)。AIによって、人が考えもしなかったような医薬品が生まれる可能性があるという。
また、アステラス製薬や武田薬品工業は、ライフサイエンス領域の画像解析に強みをもちAIを活用したソフトウェア開発を行う「エルピクセル社」と共同研究を行っている。
他にも、製薬大手各社が注目するのが、AI分析と、ロボットによる実験の自動化を行なう慶應大学発スタートアップ「モルキュア社」。国内外の製薬大手5社と提携しており、新薬開発の効率化が期待されている。
もう1つ、創薬における動向として、IT大手との連携も注目したいポイントだ。
たとえば、新型コロナウイルスのワクチン開発でも注目された「モデルナ社」は、AWSの活用により僅か40日間でがんワクチンを開発したという。
さらに日本国内を見ても、塩野義製薬は、お金も時間もかかる新薬開発にデジタル変革起こすことを掲げ、2017年頃より会計や人事に関わるITシステムの開発、保守、運用をアクセンチュアに委託するほか、2019年にはエムスリーと疾患課題解決を目的とした合弁会社を立ち上げるなど、大手ITとの連携に積極的な姿勢が見て取れる。
革新的な新薬を開発し、病に苦しむ多くの人の命を救う。こうしたキャリアを考える上で、製薬業界のみならず、いまAIスタートアップやIT企業も一つの選択肢となりつつあるといえるだろう。
たとえば2022年5月現在、医療製薬AIベンチャーの「エルピクセル社」、治験・臨床研究のクラウド型文書管理システムを開発する「アガサ社」、IT大手でいえば「エムスリー」、「アクセンチュア」などの募集が見受けられた。ぜひ実際の求人をチェックしてみて欲しい。
参考:
(*1)産経west|塩野義製薬、IT化で生産性向上へ コンサル大手とタッグ
https://www.sankei.com/west/news/171212/wst1712120098-n1.html
(*2)日本経済新聞|スタートアップのデジタル創薬、AIが探る思わぬ病因
https://www.nikkei.com/article/DGXZQODZ213OR0R20C21A1000000/