食料品や日用品などが30分程度で自宅まで届くーーいま、クイックコマースが新たなビジネストレンドとして大きな注目を集めている。2021年後半から、日本市場においてUberや出前館などのフードデリバリー企業をはじめ、Zホールディングスやレシピ動画サービス『クラシル』運営のdelyなど、企業がぞくぞく参入。求人市場としても盛り上がりを見せてきた。実際の求人とともに、その概要について見ていこう。
そもそもクイックコマースとは、食料品や日用品などの即時配達サービスのこと。
一般的にオンラインで注文を受け付け、配達専用の無人店舗(ダークストア)や、自店舗・提携店舗などから配達される。
その特徴は、ECやネットスーパーと比べ、圧倒的に早く、商品が配達される点だ。
従来のECやネットスーパーでは注文から早くとも数時間はかかるのが一般的だが、クイックコマースは多くのサービスが30分程度での配達をウリにしている。
これほど短時間での配達を実現している背景にあるのが、フードデリバリーと同様のシステムを導入していることだ。
実際に多くのサービスは、オンラインで単発の仕事を請け負うギグワーカーをはじめ、契約する配達員によって配達する仕組みを取っている。近くですぐに動ける配達員に委託することで、フードデリバリーのように迅速な配達を実現している。
とくに、食料品や日用品は、フードデリバリー以上に購入機会の多い領域。コロナ禍の影響でオンラインでの消費活動が浸透するなか、ビジネスとして非常に大きなポテンシャルを秘めているといえる。
事実、世界のオンライングロサリー (食品雑貨) の市場規模は、2020年が約22兆8,000億円だったのに対して、2027年には約63兆4,000億円(5,507億ドル)に達するという予測も。市場として非常に有望視されているといえる(*1)。
実際に2021年後半より、ぞくぞくと企業の参入が相次ぐ。特に多く見受けられるのが、フードデリバリー企業だ。
フードデリバリー事業によって培ったアプリや配達員ネットワークなどのサービスインフラを、横展開するかたちでサービスを開始するケースが多い。
たとえば2021年12月、Uber Eatsが『Uber Eats Marke』として東京の一部地域においてクイックコマースサービスを開始。さらに出前館も、ローソンやカクヤスなどと連携し、食料品・日用品の即時配達サービスをスタートしている。
その他、関連サービスを手がける企業による参入も活発だ。自社リソースを活かし、独自のサービス展開を図っている。
特に大きな話題となったのが、Zホールディングスの本格参入だ。2022年1月、『Yahoo!マート by ASKUL』の開始を発表した。
同サービスが扱うのは、アスクルが販売する食料品や日用品など。注文・決済は『出前館』のアプリから行い、配達も出前館の配達員によって行われる。注文から最短15分で商品を受け取ることが可能だ。
グループ会社である、アスクルのマーチャンダイジング力と出前館の配達ネットワークなどを活用し、独自の品揃えで商品の即時配達を実現している。
さらにもう一つ、レシピ動画サービス 『クラシル』運営のdelyによる展開にも注目したい。
同社は2021年12月、スーパーの店頭商品をオンデマンドで配送するサービス『クラシルデリバリー』をリリース。東京の一部地域で開始され、注文から配達まで最短30分程度とされている。
従来、食料品や日用品などのオンライン販売において、膨大な商品を撮影する必要があることが「品揃え」の面でボトルネックとなってきた。同社ではレシピ動画サービス『クラシル』の撮影ノウハウを生かし、クオリティの高い商品写真をスピーディーに用意。そのためフードデリバリー系のクイックコマースサービスと比べ、10倍となる品揃えを実現しているという(*2)。
クイックコマースは、日本においてまだ立ち上がったばかりの領域。市場を開拓していく上で、新たなチャレンジ、成長の機会も豊富に用意されているといえる。
ぜひ実際の求人をチェックしてみてほしい。
参考:
(*1)令和2年度 産業経済研究委託事業 (電子商取引に関する市場調査)
https://www.meti.go.jp/policy/it_policy/statistics/outlook/210730_new_hokokusho.pdf
(*2)日本最大のレシピ動画「クラシル」を運営するdely、グロサリーデリバリー事業を開始
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000196.000019382.html