INTERVIEW
デイブレイク|代表取締役社長 CEO 木下昌之

20億円調達「冷凍テック」ベンチャーが起こす、フードビジネス革命。売るのは“モノ”ではなく“課題解決”

特殊冷凍テクノロジーでフードビジネスに革命を――累計20億円調達の冷凍テックベンチャー「デイブレイク」が躍進を続ける。特殊冷凍機「アートロックフリーザー」は寿司・鰻重・カツサンドなども「解凍後も変わらないおいしさ」で冷凍。革新的プロダクトとして高い評価を得る。ただ、代表の木下昌之さんは「デイブレイクはモノ売りではなく、課題解決・ソリューションビジネスの会社」だと語る。その真意とは。木下さん自身が抱く志、そしてビジョンと共に伺った――。

寿司もおいしく冷凍。唯一無二の「特殊冷凍」が生まれるまで

デイブレイクの強みとして「特殊冷凍」の独自技術があると伺いました。その概要から伺ってもよろしいでしょうか。

「おいしさ」の再現性が高い冷凍食品を流通させることができる。ここが通常の冷凍と「特殊冷凍」の決定的な違いです。食品には必ず水分が含まれますが、マイナス1~5℃(最大表結晶生成温度帯)で時間をかけて冷凍したものは、どうしても解凍時に組織が破壊され、おいしさが損なわれてしまいます。

ただ、私たちが提供する「特殊冷凍」は、独自開発した“やさしい風”でスピーディーに凍らせる。そうすることで細胞破壊を極小化でき、おいしさが維持できるというわけです。たとえば、「職人さんによる握りたてのお寿司」や「老舗店の鰻重」も特殊冷凍を用いれば、解凍後も作りたてのおいしさをキープできます。じつは「特殊冷凍」という概念自体、私たちが考えたもの。自分たちで言うのはおこがましいですが、食品流通業界のゲームチェンジャーだと自負しています。

そもそも「特殊冷凍」に着目された理由とは?

きっかけは、お客様の声ですね。確実にニーズがあるとわかり、自社製品の開発に至りました。もともと通常の急速冷凍機を販売する代理店事業からスタートしたのですが、特に力を入れてきたのが、デジタルマーケティングでした。他社ではほとんど行っていなかったWeb広告、SEO対策はもちろん、製品の比較サイト運営などで事業を伸ばしてきました。そのなかで気づいたのが、冷凍速度や品質に対する課題の大きさ。そもそもデイブレイクは、食品流通にイノベーションを起こすために立ち上げた会社です。業界内の課題を深掘りし、事業で解決していく。産業を生み出していく。そのための自社製品開発でもありました。

さらにコロナ禍が重なり、食品ECも世の中に普及をしていった。コロナ禍以降も市場は拡大しており、特殊冷凍に対するニーズもさらに高まっている状況です。デイブレイクとしてもシリーズBでの調達を行ったところ。ここからがさらなる挑戦のフェーズだと言えます。

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2021年に販売をスタートさせた特殊冷凍機「アートロックフリーザー」。従来は冷凍困難とされた寿司やカツサンドなども急速に冷凍し、品質を維持できる。「これまでにも急速冷凍はありましたが、その中でもどうすれば食材・食品にダメージを与えずに冷凍できるか。高品質を維持できるか。ひたすら模索しました。そして行き着いたのが、やさしい風がナチュラルに行き渡る冷凍機の構造です。通常よりたくさんの「羽」、特殊ファンモーターと構造設計により均等に風が当たり、置き場所による冷凍品質のばらつきを無くす。そうすることで“特殊冷凍”を実現しています。さらに新しい可能性が「特殊冷凍したほうがよりおいしくなる」というケース。ラーメン店で使う“麺”も生麺よりもコシが残り、伸びにくくなる。それが「自分たちのラーメンに合う」とあえて冷凍麺を使うお客様もいます。さらに茹で時間も短縮でき、アルバイトでも調理が可能になる。このような新しいアプローチを取り入れが事業モデルが構築できるのもデイブレイクの特徴です。」と木下さん。

「冷凍テック」で解決する、フードビジネスの課題

この「特殊冷凍」によって解決される課題とは?

より本質的なところで言うと食品加工業者さん、飲食店さんが抱える「低利益」なビジネス構造を「高収益」へと転化させられる。ここにデイブレイクの介在価値があると考えています。

「作りたてのおいしさで食品が冷凍できる」ということは、それまで難しかった“計画生産”ができるということでもあります。これは店舗運営におけるパラダイムシフトと言っても過言ではありません。

たとえば、調理スタッフが空き時間に調理を行い、特殊冷凍しておく。ピーク時にはそれを別のスタッフが解凍し、おいしい料理を即座に提供する。この体制が構築できればスタッフのシフトが組みやすくなる。調理や仕込み時間も調整がしやすくなり、人手不足問題の解消につながります。当然、フードロスも削減できる。この生産性向上・コスト削減はフードビジネスに大きなインパクトを与えるもの。

もちろん、おいしい料理を、おいしいままに冷凍できる「アートロックフリーザー」や「特殊冷凍」に注目いただけるのはうれしい。メディアの皆さまからも多く取材依頼をいただいています。ただ、私たちは自分たちのことを「特殊冷凍機メーカー」だとは思っていません。モノ売りではなく、あくまでフードビジネスの課題解決を提供していく会社です。そして特殊冷凍機の品質向上・活用が最大化されることで、おいしいものを多くの人たちに届けていく。「低収益」に悩む事業者さんにも利益が還元されるようにし、全員がハッピーになる世界を思い描いています。これはデイブレイクが掲げる「あったかい心の連鎖を生み出す」というビジョン、そして「作り手から食べ手までのより良い未来を創造する」というミッションに根ざしたものであり、創業時から掲げる最も重要な指針です。

デイブレイクの事業戦略・強みについて

「特殊冷凍テクノロジー×IT」による、食品流通の課題解決を行う「デイブレイク」。同社では自社開発した特殊冷凍機「アートロックフリーザー」の直接販売だけではなく、冷凍機活用のコンサルティング事業も展開する。

具体的には「特殊冷凍機」による新商品企画支援、フードロス削減・仕入れ効率化に向けたオペ―レション支援、調理・生産スタッフの人手不足解消・教育体制構築支援など。「アートロックフリーザー」を活用した冷凍商品の販売数を伸ばすことで、2台目、3台目の購入につなげていく。

さらに顧客の「声」を重視すべく、次世代冷凍ビジネスコミュニティ『デイブレイクファミリー会』を2022年3月に立ち上げた。製品活用に向けた交流・勉強会をはじめ、「特殊冷凍機は手元にないが、特殊冷凍商品を販売したい事業者」と「特殊冷凍機を持っており、販路を拡大したい事業者」のマッチングを図る。そのなかで生まれる特殊冷凍に特化したレシピ監修・OEMのニーズに

デイブレイクとしては応えていく。現在、大手スーパー、大手食品企業との連携・共同開発を進め、特殊冷凍食品の流通量増を目指す。複数の事業シナジー・成長ループによる特殊冷凍の産業化し、経済的価値と社会的価値、両方の追求を掲げる。

「日本発」の世界で勝てる会社に

続いて、今後の事業ビジョンについて伺ってもよろしいでしょうか。

「世界で勝てる日本企業」を目指していければと考えています。ここは創業時から変わらない目標でもあります。特に日本の「食」は世界でも通用するもの。さらに「冷凍」はニッチな領域だからこそ、トップが狙いやすい。フードロスという社会課題の解決にも貢献ができ、価値や意義があると考えています。

じつはデイブレイクでは、キーエンスやアクセンチュアといった大企業出身のメンバーも活躍しているのですが、彼らが「入社の決め手」と話すのも「世界で戦えるポテンシャル」と「社会的価値」です。

私たちが構想しているのは「特殊冷凍」を産業化し、海外へと持っていくこと。たとえば、日本で人気の飲食店が海外進出しようと思った時、人件費にせよ、テナント料にせよ、すごく高い。ただ、特殊冷凍を活用すれば、それらの課題が一気に解決できます。こういった事業戦略を共に練っていくことができます。さらに特殊冷凍機は開発して終わりでもありません。保守やメンテナンスも必要ですし、それを活用した商品企画、オペ―レション構築も欠かせない。もっといえば「冷凍」だけではなく「加熱調理」「解凍」などに技術の応用がしていける。真に誰もやってこなかった事業をイチから作っていける。これは大企業であったり、既に市場がある領域では得られないおもしろさだと思います。

何よりも私たちが提供するサービスは、お客様に寄り添ったものなので、すごく感謝いただける。「人手不足で困っていたけど、たくさん食品を提供できるようになった」「仕入れコストが削減できた」「これまで冷凍できなかったものを冷凍できるようになった」と。もちろん、特殊冷凍機は高額な商品なので、大きな価値を感じていただけるようにするのは大前提です。そういったプレッシャーを含め、事業をつくる側も、技術を追求する側も、バックオフィスも、大きなやりがいが感じられるはず。ここは自信を持って言えるところです。

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起業のきっかけについて「もともと冷凍機の施工工事を行う父の会社で働いていたのですが、言ってしまえば、自分でなくてもいい仕事だと感じてしまったというのが正直なところ。また、業界や既存のビジネスモデルにも限界を感じていました」と率直に語ってくれた木下さん。「だからこそ、起業にあたって“自分にしか描けない世界観のビジネスを作ろう”と心に決めました。もう一つ軸としたのが、尊敬される仕事をすること。そのためにも社会課題を解決できる企業をつくりたい。それらを体現したのが、デイブレイクです。創業当時はあまり言われていなかったですが、フードロスが社会問題化し、サステナビリティが重視されるなか、世の中からも必要とされる会社として成長ができてきたと感じています。」

人生をかけて「誰もやったことがないこと」をやる

最後に木下さんを突き動かすもの、原動力について伺わせてください。

誰もやっていないこと、できなかったことをやりたい。ここに尽きると思います。

あくまでも私の価値観ですが「人から言われたことだけをやっておけばいい」だとやはりおもしろくない。そして、多くの人に共感されたり、尊敬されるような仕事がしたい。たくさんの人に見てもらい、評価してもらえてこそ「もっと頑張ろう」と思えるものですよね。そんな風に「自分」と「人」、そして「人」と「人」がつながり、どんどん「輪」が大きくなれば、世の中にとって有意義なことができるはずです。私の役目は、高いアンテナを張って、その接点をつくり、最大限に広げていくこと。今回入社してくれる方とも、ぜひ一緒に社会にインパクトを与えていくような大きな「輪」をつくっていければと思います。

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▼採用担当者に聞く求める人物像・選考のポイントについて

「事業内容やビジネスモデルはもちろんビジョン、ミッション、サスティナブルに対する考え方への理解・共感を重視しています。特に「フードロス削減など社会的価値への興味・関心だけではなく、経済的価値の追求、事業成長へのコミットも重要です。社会的課題を解決しながら、会社を成長させ、利益を出しつつ問題解決を行うCSV(Creating Shared Value)の考え方、そして「世界で戦える日本企業を目指す」という意志がポイントとなります。また「お客様視点」を何よりも大切にするのがデイブレイクらしさです。情報共有やディスカッションを行う上で、チームワーク・社内の風通しの良さがあります。役割に囚われずに、人に対する興味があるか、誠実な対応ができるか。さらに「答えのない課題」に向き合い、チームで逆境を乗り越えていけるか。こういった点を重視したいと考えています。」

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