掲載日:2025/01/20更新日:2025/01/31
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世界40以上の国と地域で展開するトヨタのグローバル金融統括企業「トヨタファイナンシャルサービス」(以下、TFS)。今回は同社で、欧州エリア子会社の経営企画を担う立山龍太さん(37)を取材した。前職はゼネコンで働き、2019年にTFSへ入社した立山さん。3年間のイギリス駐在を経て、2025年1月からはドイツに駐在予定。世界を舞台に活躍する彼に、同社でこそ得られる働きがい、そして志について伺った。
トヨタファイナンシャルサービスについて
日本を含めた世界40以上の国と地域で自動車ローンやリースを中心とした自動車販売金融サービスを展開する企業。トヨタグループの金融事業の「核」を担うトヨタファイナンシャルサービスは、今、クルマや各国の消費者ニーズの変化に合わせて自らの変革に力を入れており、従来の自動車販売金融サービスに加え、トヨタと金融を掛け合わせた新規事業の開発、推進をしている。具体的には、クルマのサブスク『KINTO』、トヨタの決済アプリ『TOYOTA Wallet』、マルチモーダルモビリティサービス『my route』などを展開。特に『KINTO』は、テレビCM放映などを通じ、高い知名度を獲得。新車を月々定額でレンタルする『KINTO ONE』、愛車のカスタム・機能向上サービス『KINTO FACTORY』などサービスラインナップも増やしている。現在、40以上の国と地域に展開するトヨタグループの販売金融子会社・拠点を支援し、拡大するべく、グローバルマーケットを視野に入れた企画・推進のために、採用強化を行う。
「グローバルを舞台に挑戦できる環境」が決め手だった
現在、TFSで欧州エリア子会社の経営企画として働く立山さん。その入社の決め手を伺った。
国際人材の育成に積極的で、事業体が世界中にある。グローバルを舞台に挑戦できる環境があることは、大きな決め手になりました。
また、選考で3名の方々とお話する機会があり、世の中の動きに対する解像度の高さ、そして多面的な思考に触れ、「こんな人たちと働いていてみたい」と憧れを抱いたこと。これもポイントになりましたね。
たとえば、当時はシリアの戦争などの世界情勢、マクロの経済動向などについても話しましたし、そういった状況をふまえて自分たちにどういった社会貢献の仕方があるのかといった話もしました。また、いざ海外駐在するとなれば、日本人として海外で暮らす、いわば少数派で生きていくことになる。それについてはどう考えるか。特に、ヨーロッパの人々はビジネスシーンにおいてもエレガントな立ち回りを求める傾向があるが、どういった振る舞いが適切だと思うか等、多岐にわたる話をさせてもらいました。自分として共鳴した部分も多かったですし、有意義な議論ができた感覚もありました。「ここなら自分が成長できそう」という確信が持て、志望度が高まったことを覚えています。
自身の経歴を「我ながら凸凹なキャリアです」と語る立山さん。そもそもの転職理由、そしてTFSに出会うまでの経緯を話してくれた。「新卒ではゼネコンに入社し、5年にわたり働きました。日本国内で現場施工、技術営業、設計、積算を担当し、充実していたと思います。そうしたなか、家族が病気になり、療養のためフランスに移住するため、やむをえず離職することに。フランスでは看病の傍ら、現地の国立大学に通っていました。ただ、現地で就職することを考えると、語学力だけでは戦えないと聞いて、少しでも就職に有利になればという思いもあり、MBAを取得するためにビジネススクールに通いました。もともと前職時代から、経営や財務への興味はあったので、非常に刺激的でした。そして、スクールで紹介してもらった会社の1つが、TFSでした」
3年間のイギリス駐在で得た、たしかな手応え
2019年9月に入社した立山さん。現在に至るまでどういった仕事を経験してきたのか。
まず入社後2年ほどは、名古屋の本社オフィスで働いていました。担当していたのは、ポルトガルとイギリスのリース事業会社をM&Aし、さらにスペイン、イタリア、フランス、ドイツの子会社として立ち上げること。ちょうどコロナ禍に突入したタイミング。海外とはリモートでコミュニケーションを取っていました。
そして2022年からの3年間は、そのイギリス子会社に経営企画として出向。主なミッションとしては、M&Aにより1つの会社に統合していくにあたって、トヨタのカルチャーを浸透させていくための戦略支援(PMI)。加えて、日本本社と現地をつなぐ窓口として、現地側から本社側にイギリス国内のビジネス環境の動向、経営判断に影響を与えそうなマクロでの動向などのレポーティング等を行なっていました。
特に海外駐在を経て感じる「やりがい」について、「世界の動きを肌で感じながらビジネスができる醍醐味」を挙げてくれた。
世界情勢、政治動向、経済状況……これらをただニュースとして聞きかじるのではなく、日々、肌で感じながら働くことができる。あらゆる外部要因が、自分の仕事にどのように影響を及ぼすのかを目の当たりにしながら、経営・財務における戦略立案の経験を積める。これは大きなやりがいであり、TFSの経営企画ならではの魅力かなと思います。
特に私が駐在していたイギリスで言えば、自動車メーカーがビジネスをしていく上では非常にタフな市場環境でした。世界的なEVシフトに逆行するかのごとく、英国政府は個人顧客へのEV購入補助金の打ち切りを発表。自動車メーカー各社はディスカウントを余儀なくされ、競合にあたる自動車リース会社のなかには利益が前年比7割減といった会社もある状況でした。当然、トヨタグループとしても厳しいビジネス環境。社員は皆一様に「このままではまずい」という危機感は持っているものの、「そこにどう立ち向かえばいいか」は描けていない。ここに対して、いかに戦略を示していけるかが問われていました。
こうしたなか私が特に意識して取り組んだのが、社員一人ひとりが戦略の全体像をクリアに描けるようにすること。誰一人取りこぼすことなく、納得感を持って業務に取り組める環境をつくることでした。
たとえば、コールセンターの仕事は「目の前のお客様が困らないように対応すること」ですが、それで終わりではありません。サービス品質を向上させることでお客様にファンになっていただければ、また将来的に契約を結んでくれるかもしれない。目の前の業務が、将来のリテンションの種まきにもつながるわけです。
そういった「理想のストーリー」を描き共有することで、なぜ今このKPIを追う必要があるのか、各現場スタッフ一人ひとりの理解度を高めていく。戦略的な全体像における各部署の仕事の意義や重要性、関連性を伝えていく。皆が互いに支え合っていて、どれか一つ欠けてもうまくいかないということを繰り返し説明していく。とにかく人間味のあるコミュニケーションを大事にしていました。これを各部署に対して実施。会社方針の策定では経営層だけではなくマネージャー層とも計100回以上はミーティングをしたと思います。
結果として、タフなビジネス環境下においても、リスクとオポチュニティーをしっかりと考慮してビジネスを存続させ、安定的にパフォーマンスを発揮できる状態をつくることができました。駐在最終日のフェアウェルパーティーでは、子会社の経営陣から「君のおかげで皆が戦略理解度を高め、自信を持って各業務に取り組めた。本当によくやってくれた」と言ってもらえました。これは非常に嬉しく、自分にとって大きな自信になったと思います。
そして、世界を舞台にタフな環境をくぐり抜けた今、痛感しているのが「ネットワーキングの重要性」だという。
私はゼネコン出身なので胆力には自信があって「やればなんとかなる」、「やれるところまでやってやる」というタイプですが、海外ではそれでも太刀打ちできない瞬間が訪れます。そういったときに重要なのが、「わからないことを聞ける人をどれだけ持っているか」です。
本社、現地問わず、自分よりも大きく物事を動かせる人たちと、日頃からコミュニケーションを取り素直に悩みを伝え、助けてほしいと言えるような関係性をつくっておく。もちろん、頼ってばかりではなく、誰かが窮地に陥ってるときは、一緒に汗をかき解決できるよう努力する。人と関わり、「互いに支えあっている」という感覚を共有しておくことは、海外で働いていく上では必須スキルなのではないかと思います。
写真は、イギリス駐在中のグループ会社の同僚とのパーティーの様子。立山さんは転職してから「ビジョンへの共感」が高まったと話してくれた。「トヨタグループに入ってよかったと思うのは、トヨタの人たちは市場を向いており、『ちゃんとした商品をお客様にお届けするんだ』、『日本の産業を支えていくんだ』という意識が、現場レベルでも浸透していることです。これは、豊田会長の影響が大きいのかなと思います。『トヨタイムズ』という社内メディアでは、常に豊田会長がそういったメッセージを発信していますし、実際に現場にフラッと出向き社員にも話し伝える様子を目にします。子会社を統括する経営企画としても学びがありますし、トヨタっていい会社だなと思いますね」
新天地ドイツへ。世界に学び、進化を続ける。
2024年12月でイギリス駐在の任務を終えた立山さん。2025年1月からは、新天地ドイツへ。今後の仕事への意気込みを伺った。
イギリスでは子会社1社を見ていましたが、次はドイツを拠点として、ヨーロッパの30社ほどの子会社を統括することになります。こうしてまた海外で働く機会をいただけるのは有難いことですし、ワクワクしています。
私個人としては「世界に学ぶ」ことはこれから先も続けていきたいです。今、海外がリードする産業がほとんどな中、日本は90年代の幻影を追っていてはいけないと思うんです。「ジャパン・アズ・ナンバーワン」という感覚ではなく、学ぶ立場を意識していなければ、ビジネスパーソンとしても凋落してしまうのではないかという危機感を持っています。だから、ドイツでも、柔軟に市場やお客様が求める命題を探し、組織や自分のレベルが上がるように率先して学び続けていきたいです。
もう1つ、これはトヨタグループの全社員に課されている宿題でもあるのですが、車を作った後の稼ぎ方・ビジネスモデルの構築にも注力していきたいですね。例えばトヨタが保有する車を増やすことで車購入後の部品交換をトヨタの純正品を使って補修できるフローをつくる。自社で中古車を保有し、 お客様にリースでご利用いただくようなスキームを構築するのもよいかもしれません。いくつか温めているアイデアはあるので、チーム一丸で進めていければと思います。
最後に、立山さんにとって仕事とは。
個人的には、あまりやらされている感覚はなくて。いうなれば、仕事とは「真面目に取り組む遊びのようなもの」かなと捉えています。特に、精度の高さを追求していくという点で、プラモデルをつくることに似ているのかなと思います。「自分の考え」を精緻に反映したいからこそ、さまざまな人と関わり、ときには駆け引きもする。人が介在することで複雑性は増しますが、難易度が高くなるからこそ、より面白さも増すのかなと思います。
そして、「自分の考え」を磨く意味で、産業にダイレクトに結びつくことだけではなく、あらゆるテーマにアンテナを張り自分なりの考えを持っていたいです。
日頃から社会的なテーマに関して考え議論することは好きで、今もMBA時代の仲間とオンラインで意見交換したりしています。38ヵ国から集まった、業界・職種も異なるメンバーがいるので、非常に多様な考え方に触れられる。つい先日は、LGBTQ×採用、能力主義などをテーマに話し、また新たな視点を得たところです。
自分をモチベートするような情報は世の中に溢れている。これからもあらゆるテーマに対して考え、理解を深めていきたいですし、何かしらそういったエッセンスを仕事に反映させていけたらいいなと思っています。