掲載日:2025/06/05更新日:2025/06/05
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農林水産省(以下、農水省)の「総合職」募集にあたり、2024年1月に農水省に入省した山下修平さん(消費・安全局植物防疫課 生産安全専門職 ※所属は取材時点)を取材した。もともと岡山県庁職員として働き、農林水産省へ。入省の決め手は、農家・事業者を直接的に支援できる「現場との近さ」にあった――。
中央省庁への出向経験が、転職のきっかけに
前職、岡山県庁の職員として働いていた山下さん。なぜ、彼は農水省を志望したのか。転職のきっかけ、農水省への入省理由から話を聞くことができた。
前職時代、「G7倉敷労働雇用大臣会合」開催に伴い、岡山県庁から厚生労働省に出向していた時期があり、その経験が転職のきっかけの一つになりました。国際会議に「国の立場」で関わっていく、そういった貴重な経験ができたのですが、そもそもの予算規模が大きく違いますし、仕事のスケールも大きなものに。各国ごとの入国管理、車両・ホテル・会談場所の手配など、さまざまな大変なこともあったのですが、例えば、各国の閣僚が会議を通じ、国際的な宣言文をまとめていくプロセスにも立ち会うことができました。ミスが許されない緊張感はありましたが、やりがいが大きく、中央省庁での仕事に興味を持ちました。
さまざまな省庁がある中でも、なぜ農水省だったのか。その理由について山下さんはこう話す。
まず、大学時代の先輩が農水省で働いており、「大変ではあるけど楽しい」と勧めてくれたのが大きかったですね。特に農水省であれば、地方の農家さんをはじめ、直接的な事業者支援に取り組んでいけるイメージもありました。例えば、前職の県庁だと「市町村との繋ぎ役」となることが多く、あまり現場のことはわからないというのが正直なところ。その点、農水省はいわゆる「現場との近さ」があるだろうと考えました。
面接でも「地域の人たちのために働きたい」という点をお伝えした記憶があります。そういった会話の中で、職員の方から「とある富山の米農家さんがビジネスとしてとても成功している」という事例について聞いた時に、実際に現場を見て話していると感じ、そのことがとても印象に残っています。もともと岡山県庁にて農業統計に関わった経験はあったのですが、正直、データでしか見ることができていなかったなと。それも重要ですが、現場に出て、さまざまな事例を収集し、上手くいっているものに関しては全国的に普及させていけるかもしれない。そういった点にも魅力に感じ、入省を決めました。
山下修平(農水省 消費・安全局植物防疫課 生産安全専門職)
東北大学法学部卒業後、2015年に岡山県入庁。本庁健康推進課、備中県民局地域づくり推進課、本庁危機管理課、本庁農政企画課、岡山県東京事務所などで多岐にわたる業務を経験。その後、厚生労働省国際課への出向(G7倉敷労働雇用大臣会合)関連業務を担当後、再び岡山県東京事務所勤務を経て、2024年1月に農水省に入省。畜産局総務課、畜産局食肉鶏卵課を経て、消費・安全局植物防疫課(現職) に至る。
携わるのは「防疫」による伝染病予防
こうして2024年1月に農水省に入省した山下さん。現在の所属、そして業務内容について聞くことができた。
消費・安全局の植物防疫課、生産安全専門職として働いています。その中でも現在、主に携わっているのが、海外からの違法畜産物などの持ち込みに係る対策の強化について検討・議論の取りまとめです。
近年、インバウンドの活況を背景に、海外から家畜伝染病が持ち込まれるリスクは高まっています。例えば、アジア全域に感染が拡大している「アフリカ豚熱(強い伝染性と高い致死率を有する伝染病)」はその一例です。もしアフリカ豚熱がまん延してしまったら、多くの豚が死んでしまう深刻な事態を招く可能性があります。いかに日本への侵入を未然に防ぐことができるか。2020年(令和2年)には家畜伝染病予防法が改正され、家畜防疫官が海外からの入国者の携帯品に違反畜産物を持っていないか質問・検査できるようになるなど、水際検疫の体制は整備されました。しかし、そうした体制整備を踏まえても、令和2年度以降の違反畜産物の摘発件数が増加するなど、更なる水際検疫の強化が必要になっています。そのため、農水省では、専門家を招いてどのようにしたら水際検疫の強化ができるか、検討会で議論を重ねているところです。
仕事で実現していきたいことについて「ゆくゆくですが、地方をはじめ事業者のみなさんが自走していくための仕組みづくりに取り組みたいです。」と話す山下さん。「国として支援をしつつも、いかに事業者のみなさん自身が健全に利益を生み、持続可能な仕組みにしていけるか。政策立案、制度設計などの通じ、実現したいと思っています。」
机上ではなく「現場の声」を重視していく
続いて聞けたのが、農水省で働く「やりがい」について。
私自身は水際検疫の検討会などの取りまとめ、調整に携わっているため、今のところ現場で働く方との直接的な接点はありません。ただ、現場を知る専門家の意見に基づいて、水際検疫の強化策がとりまとめられています。今後は、この検討会から頂いた強化策を踏まえ、現場の声も聞きながら、制度の見直しも含めてどのように農水省として対応ができるのか、考えていくのが楽しみです。
また、水際対策のような、国や産業に大きく影響を与えていく「責任ある業務」を担当することができます。今まさに検討・議論され、動かしたものが後々にも残っていくはず。そういった点もやりがいですね。一方で、その裏返しとも言えますが、強い責任感、使命感が求められる仕事でもあります。加えて国会対応、国際情勢の影響によって、突発的な仕事も多い。わかりやすいところだと、いわゆる「トランプ関税」は食料品の輸出・輸入にも関わる話でもあります。その他にも、国内で何らかの家畜伝染病の発生を確認した場合、すぐに輸出停止などの措置が取られる可能性もあり、緊急での対応も求められます。こういった、急を要する業務が発生することは事前に知っておくといいのかもしれません。
農水省入省後、印象に残っている仕事について「自身が作成に携わった答弁案を大臣が読み上げた時は“国の仕事に携わっている”という実感がありましたね。」と話をしてくれた山下さん。「その他にも、例えば、重要な会議など、出席者のそれまでの発言や立場などを事前に調べ、事前準備を徹底したところ、会議が想定内に収まったという経験も。そういった一つひとつで自身の成長を感じることができています。」
公共分野で「幅広い人たち」のために働いていく
最後に聞けたのが、山下さんの仕事の価値観について。彼にとって「仕事」とは、どういったものなのか――。
もともと公務員を選んだ理由にも近いのですが、「幅広い人のために働くこと」にやりがいを感じますし、それが私にとっての仕事だと思っています。特定の個人、企業のためではなく、地域全体、社会全体のために、いろいろな人たちと関わりながら「公平に働いていきたい」という気持ちがあるのかもしれません。
振り返ってみると、もともと大学時代、仲間たちと「人力飛行機」を作る活動をしていたのですが、当時の経験が少なからず影響しているように思います。全員で協力し、できるだけ遠くまで飛行機を飛ばし、大会での優勝を目指す。ただ、それだけなのですが、じつは東日本大震災が起こった2011年、私たちのチームが優勝を果たすことができました。東北のチームだったということもあり、東北のみなさんをはじめ、たくさんの方からお祝いの手紙や言葉をいただいたんですよね。結果的にではありますが、多くの人に喜んでもらうことができました。そんな風に、自分自身も、そしてチームも成長しながら、課題を乗り越え、多くの人に喜んでもらいたい。そういった仕事をこれからも目指していければと思います。