紙やプラスチックの代替製品を、石灰石からつくろう。環境問題と貧困の解消に貢献していこう。突飛もないアイデアに見えるが、実際に取り組むのがものづくりベンチャー「TBM」だ。開発する日本発の新素材『LIMEX(ライメックス)』が解決していく「地球の課題」とは。
※記事内の情報は、2020年5月掲載当時のものとなります。
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推計企業価値、1218億円。グローバルユニコーン企業『TBM』
TBMは今、日本で最も注目されるベンチャーの1つと言っていいだろう。
すでに資金調達額は総額108億円を超え、調達先としてゴールドマン・サックス、伊藤忠商事といった企業が名を連ねる。さらに2019年には推計企業価値が1218億円となり、日本で史上6番目のユニコーン企業となった。
なぜ彼らはこれほどまでに市場から高い評価を獲得できるのか。そこには、「石灰石」から紙・プラスチックの代替製品をつくる新素材『LIMEX』の革新性がある。
「石灰石は地球上の多くの場所で調達ができ、無尽蔵と言えるほど豊富な埋蔵量がある。資源の乏しいと言われる日本でも、100%自給自足が可能です」
石灰石の可能性についてこう語ってくれたのが、TBM海外事業部 部長の中村友哉さん。
たとえばLIMEXは、「メニュー表」「名刺」「レジ袋」「食品トレイ」など、様々な紙・プラスチック製品を代替する可能性を秘めているという。
「地球はいま、持続不可能な状態だといっていい。人口増加と生活水準の向上に従って、このままの消費を続けていれば、近い将来資源は確実に枯渇してしまう。例えば、紙やプラスチックの製造には貴重な天然資源が多用され、地球環境の大きな負荷になっています」
さらにこう続ける。
「近年では、海洋のマイクロプラスチック汚染なども深刻になり、プラスチック製品を規制する動きが活発になってきました。環境に優しいプラスチックの代替製品が求められています」
一見、環境に大きな影響を与えているようには見えない紙であっても、製造する際に大量の水や木を必要とする。水危機や森林伐採による環境破壊は差し迫った地球上の課題だ。
こういった課題に正面から挑み、世界に「サステナビリティ革命」を起こしていく。彼らの挑戦に迫った。
LIMEX製品はすでに5200社以上の企業で導入(2020年3月時点)。たとえば、企業の名刺、飲食店のメニュー表、G20大阪サミットの会場内でゴミ袋として使用されている。
中村友哉
新卒でアクセンチュアに入社。戦略コンサルタントとして、主に製造業のクライアントを担当。シニア・マネジャーとして活躍する。その後、LIMEXの可能性に惹かれ、TBMへ転職。海外事業部長としてLIMEXの海外展開を担う。
LIMEXを第三極の素材へ
「いち早く世界にLIMEXを広げていく」
そのために彼らが採用しているのが、ファブレスモデルでの海外展開だ。
「ベンチャーである私たちが、世界各地に自社工場をつくる生産モデルではとてつもない時間とお金がかかってしまう。そこで私たちは、現地パートナーに技術ライセンスを提供し、製造・販売を行なうことでスピーディに海外展開するための仕組みをつくっています」
さらにLIMEXの強みについて、こう補足する。
「LIMEXの製造にはプラスチック成形工場など、既存設備をそのまま活用できる。最小限の投資で生産活動を行うことが可能です」
たとえば、アフリカやサウジアラビア、モンゴルなど水や木といった資源が乏しい国でも、自国で採れる石灰石を使い、紙やプラスチックの代替製品を作ることができるという。
「世界各地でLIMEXの地産地消が実現できれば、地球規模での環境負荷低減に貢献できる」
見据えるのは、LIMEXを紙・プラスチックに並ぶ第三極の素材にすること。
「ただのニッチな素材として終わらせるわけにはいかない。環境への意識が高まる中で、紙・プラスチックでは解決できないことがある。その第三のソリューションにLIMEXがなっていかないといけないと思っています」
紙とプラスチックの世界での市場規模は、紙が年間約70兆円、プラスチックは年間約100兆円を超える。LIMEXが秘めるポテンシャルも非常に大きいと言えるだろう。
「世界中で当たり前に使われるころには、金額規模として何十兆円という数字も見えていくはずです」
中国・河南省に持続可能な新たな産業を
TBMはLIMEXの海外展開を本格化させるフェーズへ。
2019年9月には、中国・河南省の政府系ファンドなどとLIMEXの製造・販売、さらに使用済みLIMEX製品を回収し、付加価値をつけて再製品化する「アップサイクル」を実現するプロジェクトをスタートさせた。
「河南省側から仰っていただいたのは、ただLIMEXの工場をつくって製品を販売するだけではなく、「LIMEXによる循環型の仕組みをつくりたい」ということでした」
LIMEXは、無機物である石灰石を主原料としているためリサイクル時の劣化やロスが少なく、アップサイクルに優れているという特徴がある。
「中国はまだまだゴミの分別や廃棄物処理などが未整備なところがある。河南省で模範になる持続可能な産業をつくり、中国全体を変えたい。こうした強い想いを伺いました。私たちも河南省で終わらず、中国全土で、そして世界中でしっかり貢献できるようにこのモデルを広めていきます」
河南省プロジェクトに参画する、ファンドの方々と
貧困地域に産業を生み出す
「持続可能な産業を生み出し、貧困地域に雇用を生む。これもLIMEXの意義だと考えています」
中村さんから伺えたのは、河南省側の担当者との印象深いエピソード。
「もともと河南省は目立った産業がなく、貧しい地域。ゴミを集めてきて転売して、生計を立てるといった風習もあったといいます。現地の方々はそのことをすごく恥じていて。ただそれを聞いたCEOの山崎から「私たちの実現したいサステナビリティやサーキュラーエコノミーとすごく親和性がある」とお話させていただいたんです。その言葉をすごく喜んでいただいて。同時に強い期待も寄せていただいた。その期待にしっかりと応えていかなくてはいけないと、私自身強く感じています」
さらにこう続ける。
「必要な資源が乏しく、貧しい国や地域がある。ただLIMEXによって、それが逆転できるかもしれない。世界を変えられるかもしれない。これは働く上ですごくやりがいがあることですよね」
グローバルで「サステナビリティ革命」を起こす
取材終盤、中村さんから伺えたのが彼らが実現したいことについて。
「『サステナビリティ革命』はこれから確実に必要だし、誰かが起こさないといけないこと。だからこそ、私たちがトップランナーとして世界で戦っていきたいと思っています。LIMEXにはそれを実現できるポテンシャルがあると思っているし、ベンチャーで働くからこそ世界を変えるようなチャレンジをしていかないとおもしろくないですよね」
「そのためには、それぞれがいかに人に仕事に真摯に向き合えるか、ここが大切だと考えています。LIMEXは新しく、多くの可能性を秘めた発展途上の素材なんですよね。いろんな方に育てていただかないといけなくて。世界中の方にファンになっていただかないと、日本からやってきた新素材っていうだけでは広まるわけがない。そのために私自身もTBMとして、日本の代表として尊敬される人でありたいと思っています」
そして最後に語られたのは、中村さんにとっての「仕事とは」。
「仕事って自分の人生の一部。だからこそ、楽しいものじゃないといけないし、やりがいのあるものじゃないといけないと思っています。LIMEXでなら、日本のものづくりの技術で日本、そして世界をもっと元気にできる。将来の世代に良いものを残していける。そう信じて日々チャレンジできることは、すごく楽しいですよね」
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