INTERVIEW
掛川市|市長 久保田崇

静岡県 掛川市が「副市長」を初の公募。45歳、新市長と共に次のステージへ

人口約11万7000人。静岡県掛川市が「副市長」初の公募を実施する。市としての今後のビジョン、そして新たな副市長に期待することとは。2021年4月に新市長に就任した、掛川市 久保田崇市長(45)に伺った。

※既に応募受付は終了しました。

掛川市は、未来に向かってチャレンジしていく

人口約11万7000人。静岡県掛川市といえば、日本屈指の「掛川茶」に代表される緑茶生産地だが、それだけが魅力ではない。

「お茶が有名な掛川市ですが、じつはそれ以外も多くの特徴・魅力があり、高いポテンシャルを秘めていると考えています」

こう語ってくれたのが、2021年4月より新市長に就任し、変革を推進する久保田崇市長(45)だ。

1年を通じて過ごしやすい気候、豊かな自然に恵まれた広い土地、関東・関西へのアクセスがしやすい利便性の高さ、名だたるメーカーが製造拠点を置く。じつは非常に高いポテンシャルを持つ地方自治体だという。

「昭和54年になりますが、掛川市は、全国で初めて生涯学習都市宣言を行った自治体でもあります。生涯学習による成果を、まちづくりにも活かす。その考え方のもと、市民と行政による“協働のまちづくり”を掲げてきました。たとえば、10年以上に及ぶ誘致運動、30億円に及ぶ市民募金という取り組みにより、新幹線「掛川駅」が昭和63年に開業した。1戸10万円、企業なども含めて寄付・募金をもとに新駅をつくる。ほとんど全国に例のなかったこういった取り組みで、日本一のまちづくりを目指してきた歴史があります」

そして、2021年4月。掛川市では40年ぶりとなる40代市長となった久保田市長。コロナ禍、少子高齢化など、さまざまな課題に対してこう語る。

「日本全体にも言えることですが、掛川市も少し元気を失っている部分はあると思います。ただ、生涯学習の理念が根付く掛川市は、必ず未来に向かってチャレンジしていける。行政もそうですし、市民のみなさん一人ひとりも、様々なことに挑戦していく。そういったまちにしていきたい」

その一歩でもあるのが、今回の「副市長」の公募だ。掛川市として民間からの副市長公募は初の試み。久保田市長が目指す掛川市の未来、そして新副市長に期待することとは――。

掛川市1

1976年生まれ。掛川市生まれ、掛川市育ち。国家公務員試験合格後、2001年に内閣府に入府。経済産業省資源エネルギー庁勤務や英国留学を経て、内閣府参事官補佐として「子ども・若者育成支援推進法」立案などに携わる。2011年の東日本大震災が起こるとボランティア活動をきっかけに、岩手県陸前高田市長に請われ、同市の副市長として4年間復興に尽力。退任後は立命館大学教授を務める。その後、当時の掛川市、松井三郎市長の要請で、2019年に掛川市の副市長に就任。2021年4月に掛川市長に当選した。

「スピード」と「柔軟性」を備えた新たな市政へ

掛川市の改革を掲げている久保田市長。どのような市政を目指していくのか。その概要について伺った。

新型コロナウイルス感染防止対策にしてもそうですが、これだけ世の中や環境の変化が激しく、誰にも正解がわからない時代。市政にとって重要なのは「スピード」と「柔軟性」だと捉えています。

国や県の動きを見て、受け身で対応していくだけでは生き残っていけない。とくに危機的状況においてスピード感を持って、柔軟に対応していく。地方自治体から課題を見つけ、ポストコロナ時代に対応して積極的に打ち手を考え、地方から国に提案していけるような自治体に改革したいと考えています。

一方で、緊急事態宣言が解除された(2021年10月時点)とはいえ、新型コロナウイルス感染症の蔓延によって市民のみなさまにとっては不安のほうが大きい。そういった声、不安に寄り添っていくことも大切です。

たとえば、新型コロナウイルスのワクチン接種にしても「本当に安全なのか」「自分は打てるのか」「いつ打てるのか」など。きちんとした情報が届かないことで、不安も大きなものになってしまいます。ですので、まずは正しくわかりやすい情報をしっかりと届けていく。広報紙や同報無線、プレスリリースやSNSなどあらゆる媒体を総動員して戦略的に広報を仕掛けていきたいです。

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正しい情報を、いち早く、わかりやすく届けていくためにTwitterやYouTubeなど、SNSなども積極的な活用し、自身で発信を行なう久保田市長。

誰もが「チャレンジ」をしやすいまちをつくっていく

久保田市長が見据えるのは、さらにその先。中長期のビジョン、重要なキーワードが「チャレンジ」だ。

チャレンジ、挑戦というのは、もしも「掛川市でコレがやりたい」と思うことがあれば、それがやりやすくなること。その思いが実現するように制度面、仕組みを整えていくことを意味しています。

たとえば、子育てをしていきたい、勉強がしたい、就職したい、新しいビジネスをやってみたいなど。働き方、価値観が多様化するなか、自発的にそういった「やりたいこと」が出てくるまちになることが理想です。ただ、当然、精神論だけではチャレンジはできませんので、制度を含めて仕組みを整えていきます。

掛川市は広く、豊かな土地がありますので、とくに農業が盛ん。この5年で総農家における法人数も増加しています。こういった営農形態の変化が見られるなか、もし、新しく農業をやりたい方がいれば、農地や設備、ノウハウ・資金面などで何らか支援ができるような制度を整備していく。こういった部分は行政の大きな役割だと考えています。

また、掛川市には日本を代表するようなメーカーが多く製造拠点があり、働き口も多い。市における製造業だけの売上で見ても1兆円を超えており、小さな県に匹敵する規模を誇ります。そういった製造業があるため、今のところ人口も横ばいを維持していますが、さらに移住にも力を入れたいです。

コロナ禍を経て、とくに東京・名古屋・大阪など、都市部で働く方々のなかではリモートワークも増えています。たとえば、週1~2日の出社が必要だったとしても、新幹線の駅がある掛川市に住む、移住先としても充分に魅力的。そういった方々を受け入れる土壌を作っていきたいと考えています。

最近では、緑茶を原料としたリキュール特区が本年7月に全国で初めて内閣総理大臣から認定されました。また、今年末には「遠隔操作による自動運転での夜間走行は全国初」となる、掛川駅から掛川城まで無人運転車両が走行する実証実験の計画があります。

このように、テクノロジーなどを取り入れながら積極的にまちづくりを行っていきます。

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「掛川市としてもさまざまな挑戦をしていきたい」と語る久保田市長。「遠隔操作による自動運転での夜間走行は全国初」もその一例となる。また、2020年7月に内閣府によるSDGs未来都市に選定された掛川市。再生可能エネルギーの推進、小学校・中学校の連携統合などを踏まえた教育の制度などでも改革を行っていくという。

新副市長への期待するのは「改革」

現在の掛川市の体制として久保田市長、そして髙栁泉副市長(61)が在任中。そこにもう1名、新たな副市長を公募で採用する。公募の背景、そして新副市長に期待することを伺った。

私自身、官僚、陸前高田市の副市長、そして大学教授と、さまざまなキャリアを経験するなか、民間の方々と一緒にプロジェクトを進める機会が多くありました。そのなかで感じたのは、民間出身のみなさまの「スピード」や「柔軟性」。まさに今、掛川市が求めている部分に長けた方が多くいらっしゃった。とりわけ、大きな組織の改革に関わったことのある方などに応募いただきたいです。

現在、約800名の職員がいます。着実に公務をこなせる人材は多くいますが、新たなチャレンジ、スピード感、柔軟性は足りていない。ぜひそこを補完していただきたいです。

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髙栁泉副市長(左)と久保田市長(右)。「掛川市では2名の副市長体制を考えており髙栁泉副市長と連携し、お互いに情報共有をしながら進めてほしい」と久保田市長。「人口約11.7万人を誇る掛川市は規模的にみても全国自治体の上位16%ほど。規模感がありつつ、地方自治体として自力でできることも多い。副市長としての裁量でさまざまな施策に取り組み、私と地方創生のモデルをつくっていってほしい。それくらいの気持ちでいますね」

市民のみなさんのために働く使命

そして最後に伺えたのが、久保田市長の仕事観について。内閣府にて官僚として働き、陸前高田市の副市長、そして大学教授…と異色なキャリアを持つ。なぜ掛川市の発展に強い思いでチャレンジしていくのか。

もう10年前の話になりますが、岩手県の陸前高田市副市長として働いた体験は、私の人生観を大きく変えたといっていいと思います。

陸前高田市は、10人に1人ぐらいが津波で亡くなっている被災地。市民のみなさまと直接お話をすれば、ご家族の誰かしらを亡くされていて。被災地の皆さんの人生、生活が激変してしまった。人生においてさまざまなことが起こりますが、自然災害はいつ、誰の身にふりかかってもおかしくありません。いつまで生きられるかわからない。そういった一度しかない人生を後悔なく過ごしたい。挑戦していくことが必要だと思うようになりました。

そう考えたとき、何を生きがいとして働くか。とくに思いを強くしたのが、地域への貢献でした。市民のみなさんの近くで力になっていく。地域を発展させていく。それをいろいろな方と協働して進めたいと。

ですので、市役所の仕事は決められたことをやることではない。地域の発展のため、そして、みなさんが安心して暮らしていくため、先手先手を打って取り組みたい。

大げさかもしれませんが、使命感に近いのかもしれません。これは私だけでなく、市役所に勤めている職員は、どこかでそういった気持ち、気概を持っているはず。ぜひ今回入庁される方も同じ気持ちで働いていただけると嬉しいですね。

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