2050年のCO2排出ゼロへ――新時代のエネルギー会社「JERA(ジェラ)」(東京電力と中部電力により設立)がエネルギービジネスの常識を変え、脱炭素社会の実現をリードしていく。その挑戦を支えるシステム基盤の構築に向け、ICT部門を強化する。求める人材像とは?今回は経営企画本部 情報セキュリティ統括室 室長の山川哲司さんにお話を伺った。
国際エネルギー市場で戦うことができるグローバルなエネルギー企業体をーー。
国際競争力あるエネルギーの安定供給と企業価値の向上を同時実現することを目指し、2015年、東京電力と中部電力によって「JERA」は誕生した。
「他の誰にも真似できないエネルギーのイノベーションを加速させていきます」
こう語ってくれたのは、経営企画本部 情報セキュリティ統括室 室長の山川 哲司さん。
「JERAは国内火力発電の半分を占める発電能力、世界最大級の燃料取扱量を誇るグローバルなエネルギー会社です。地球温暖化対策を最重要課題と考え、脱炭素社会の実現を積極的にリードしていきます」
※2019年に火力発電事業全体を承継。これにより燃料上流・調達から発電、電力/ガスの卸販売までの一連を手掛ける巨大なバリューチェーンが完成。2020年10月には「JERAゼロエミッション2050」を公表。2050年までのCO2排出ゼロを目指す。
特に強みとなるのが、燃やしてもCO2を排出しないアンモニアや水素を使った「ゼロエミッション火力」だ。自然条件に左右されてしまう再生可能エネルギー事業の拡大を支える次なる打ち手として、期待を集める。
「私は新卒のときから電力業界でキャリアをスタートし、2019年よりJERAに参画しました。長く電力業界に携わってきましたが、JERAは、これまでの電力会社とは一線を画していると日々感じています。従来、エネルギー会社は安定稼働が命題でした。リスクを最小化するため、従来のやり方を“変えないこと、継続すること”が文化として根付いてきました。そうした文化に対し、安定稼働は大前提として、より良くするための変化も恐れない。それがJERAの特長です。ICT部門のトップであるサミ・ベンジャマは、最新のITと海外の先進事例を貪欲かつ迅速に活用していくスタンスを示しています。私たちJERAのITインフラを急ピッチで最適化するということは、すなわち社会のエネルギーインフラを最適化することと直結します。ITを通じて社会に与えるインパクトという点では、従来のエネルギー会社と同じかもしれませんが、スピード感やスケール感は桁違いだと実感しています」
そして2022年、ICT部門における採用をこれまで以上に強化していく。求める人材像、担うミッション、やりがいについて山川さんに伺った。
【JERAゼロエミッション2050へのアプローチ】 ●洋上風力発電の開発 ●石炭火力発電×アンモニア ●LNG火力発電×水素
再生可能エネルギーの導入を、自然条件で左右されず発電可能な火力発電で支える。火力発電においては発電時にCO2を排出しないゼロエミッションを追求する。
海に囲まれた日本では、洋上風力発電に適した場所があり、大規模な事業化が期待されている。現在、地震や台風など日本と環境が似ている台湾の大規模な洋上風力発電事業に参画し、ノウハウを取り入れながら、日本の洋上風力発電事業の開発に活かしていく。
燃やしてもCO2を排出しないアンモニアは、相性が良いボイラー型の石炭火力で燃やす。2024年度に大型の火力発電所で世界初となる、アンモニアを燃料の20%として焼やして発電する実証を行なう。石炭火力でアンモニアを燃焼していくことで、段階的にCO2排出量を下げていき、2040年代にはアンモニアだけで燃やす発電を目指している。
燃やしてもCO2を排出しない水素は、相性が良いガスタービン型のLNG(液化天然ガス)火力で燃やす。水素は運搬が難しいという課題があるが、アンモニアから取り出すこともできる。燃料の上流である調達、輸送から下流の発電・販売までのバリューチェーンを保有するJERAの強みを活かし、水素とアンモニアの製造、輸送、貯蔵、販売などのサプライチェーンの構築に参画し、事業領域の拡大を目指す。
山川哲司
1997年に東京電力に入社。2017年より東京電力フュエル&パワーへ異動。2019年4月より、JERAに転籍。現在、経営企画本部 情報セキュリティ統括室 室長を務める。
まずはICT部門の募集背景から伺わせてください。
まず、私たちがエネルギー業界を牽引していくうえで、JERAがどうありたいか、という点についてお話します。JERAは、データに基づく正確かつ迅速な意思決定を行なう「データドリブンカンパニー」を目指しています。そのための取り組みとして、全経営陣がスポンサーとなる「全社デジタル変革プロジェクト」を2019年7月に発足させ、現在まで数々のDXプロジェクトを立ち上げ、推進してきました。社内でのICT部門の存在感は非常に大きいと感じています。
たとえば、デジタル活用における第一歩となったのが、2020年に実現した「基幹システムのフルクラウド化」です。
これは、東京電力と中部電力が、それぞれに持っていたシステムのデータを統合し、効率的な全社最適を実現していくことが狙いでした。
一般的には「クラウド化なんて珍しくはない」と思われるかもしれませんが、“変えない”ことが根付くエネルギー業界においては初となる試み。それをわずか6ヶ月で達成したことも、業界では注目を浴びました。
ただ、これではデータドリブンカンパニーへ進化するための基礎ができたにすぎません。これからさらにICTを強化していくことで、日常的にデータを活用できる環境を作っていく必要があります。最終的には、事業活動のあらゆる場面でデータを生かし切るのが当たり前となる状態を目指していきます。
事業統合の完了後、IT基盤の統合が次の課題となった。東京電力と中部電力から継承したシステムなどが複数混在し、かつ、アーキテクチャが不揃いなうえデータの互換性が乏しい。この解決策として、「データドリブンカンパニーへの変革」を掲げ、IT基盤の統合を目指すことになった。
続けて、今後のビジョンについて教えてください。
IT活用を通じて、エネルギー業界に新たなビジネスモデルを構築していく。JERAの強みである世界最大級の設備規模と運用実績から得られた情報、経験、技術を資産(データ)化し、データを活かすプロ集団へ進化していくことです。
その一例が、「デジタル発電所(パワープラント)」プロジェクトです。
これは、発電所の運転保守業務において、ヒトの五感に頼ってきた領域に対して、デジタル技術やデータ分析、AIなどを導入し、これまでにない高度な発電所の運転・保守を実現するためのプロジェクトです。
従来発電所では、熟練スタッフがそれぞれ培ってきた技術力を世代から世代へと継承していくことにより、長期間にわたる安定操業を実現してきました。今回のプロジェクトは、こうした領域へ大胆にデジタル技術を導入し、ノウハウをデータ化、つまり「見える化」し、集積と解析を通じて、さらに高度な運転・保守技術へ昇華していきます。例えば、機器の運転寿命をより正確に予測する、故障の前兆をより早くとらえる、そして大きなトラブルを回避する、あるいは機器の性能を最大化する、さらには発電所全体としての性能を高める、といったさまざまな具体的成果へ繋げていきます。
また、エネルギー業界に限らず社会全体に共通して言えることですが、これまで現場を支えてくださっていたベテランの先輩方が次々と定年を迎え、技術継承のリスクもあります。少子化により若手の絶対数も少ないため、今までより効率的に蓄積してきた技術や知見を伝えていく必要があります。こうした面でも、AIやデジタルの活用は、非常に大きな意義があると手応えを感じています。
「デジタル発電所(パワープラント」はあくまでDX推進の取り組みの一部です。JERAでは、全社でデジタル改革を進めていきます。これにより、エネルギーバリューチェーン全体を通して、あらゆる事業に関わるデータが一元管理のもとに置かれ、互いに活用し易くなる環境を整えることで、さらなる変革を生み出し、新たな価値創造を目指します。
そうした意味でも、JERAのICT部門は、事業部門を支えるだけではなく、事業部門とともに社会的な経済合理性を追求し、変革を牽引していく存在と自負しています。
現在、デジタル人材は様々な業界領域で求められていますが、特にJERAのICT部門で働く魅力とはどういった部分でしょうか?
エネルギー業界は、いままさに変革期を迎えています。大手IT企業などのように革新が進んでいない分、チャレンジしていけるホワイトスペースが多い。ここは面白い部分ではないでしょうか。ただ、変革のスピードはとても早く、ホワイトスペースがどんどん埋まっていくので、今が一番面白い時期ともいえると思います。
ICT部門は『We decide, We control, We create』をスローガンとして掲げています。誰かが作ってきたやり方に縛られることなく新しく自分たちでルールを作り、ルールに従って最適なアクションを選んで進めていくのが、JERAのやり方です。
ICT部門のメンバーは、スローガンに則り、一人ひとりがプロジェクトをリードしていくという心意気で取り組み、自分たちで決断、コントロールして新たなものを創り出しています。ベンダーに丸投げするような人材は、JERAにはいません。
JERAは挑戦を可能にする風土を醸成しています。従来の業界の慣習にとらわれず、受身にならず、仕事を通じて変革することに楽しさややりがいを感じることができる人とぜひ一緒に働きたいですね。
「事実、ICT部門には、こうした環境に惹かれ、多様なバックグラウンドを持ったメンバーが集結しています。たとえば日系及び外資の金融、IT、コンサルティング、メーカーなど、業界もさまざま。国籍も、10ヵ国もの出身者が在籍しており、多様性を重視する組織です」と山川さん。
特にITエンジニアなどの技術職における採用の際、重視するポイントとは?
基本的なことと思われるかもしれませんが、「コミュニケーション力」です。知見がある同僚と相談しながら、クイックに連携しプロジェクトを前に進めていける力、とも言えます。
私はエネルギー業界で長く働いていますが、JERAで働くようになって感じる特長の1つが、これまでに経験したことのないスピード感で物事を進めていく点です。
たとえば、従来の電力会社であれば1年以上かかるシステム開発等のプロジェクトを、3~4ヶ月で遂行していくイメージです。実際にミッションクリティカルシステムのフルクラウド化を6ヶ月で実現したことからも、そのスピード感がわかるかと思います。
このスピード感を実現するには、一人で悩んでいる時間はありません。周りの仲間とクイックに連携し、ディスカッションを通して方向性を導き出していく。そういった姿勢が不可欠だと思います。
当然、クラウドをはじめとしたテクノロジーの活用が進めば進むほど、このスピードはさらに加速されていきます。ICT部門だけでなく、JERAではあらゆる部署において同じスピード感で変革が生まれ、物事が進みます。システムの全体管理を担っているICT部門こそ、JERAの事業全体を進化させ、価値を向上させていく好循環を生み出していく鍵となるはずです。
最後に、山川さんにとって「仕事」とはどういったものですか?
仕事とは「情熱を持って挑戦していけること」だと考えています。自分のやりたいことを実現する手段とも言えるかもしれません。
私に関して言えば、人々の生活を支える仕事をしたいと、この業界の門を叩きました。
これまで働くなかでは、当然、厳しいお言葉をいただいたこともあります。ただ、どんなことがあっても、エネルギーは生活に不可欠なものであること、それは揺らぎません。当たり前過ぎて普段はあまり恩恵を感じることは少ないかもしれませんが、例えば、停電して初めて「電気のありがたさがわかった」といった言葉をいただくこともあります。その度に、みなさんの生活を根本から支えていくエネルギー事業に携わる使命や責任を改めて感じます。私としては、そういった環境に身を置けていることに誇りを感じていますし、面と向かって話したことはあまりありませんが、きっと仲間たちも同じ想いではないかと思います。