INTERVIEW
日本郵船、「陸上職事務系」採用スタート

日本郵船で挑戦を。次世代燃料船、宇宙ビジネス、金融テックなどの新規事業も。広がる活躍の舞台

掲載日:2024/10/01更新日:2024/10/01
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「輸送だけではない。船とは異なるフィールドの新規事業も生まれています」こう話してくれたのが、日本郵船で働く伊藤 彰英さん。もともとはプラントエンジニアリング会社で働いていた伊藤さんが日本郵船に入社した背景には、「もっとキャリアの広がりがある環境で、少しでも社会を良くする仕事をしたい」という思いがあった。

プラントエンジニアリング会社から日本郵船へ。「幅広い挑戦をグローバルにできる環境」が決め手だった

前職はプラントエンジニアリング会社で働いていた伊藤さん。その転職動機は何だったのか。

もっと新しい挑戦をしてキャリアの可能性を広げたい。そう思ったことが転職のきっかけでした。

前職はプラントエンジニアリング会社で、東日本大震災後に普及拡大した再生可能エネルギーに関連するプロジェクトを担当していました。具体的には、メガソーラー発電所建設のための見積、官公庁・顧客との折衝、プロジェクト管理など。大規模なプラントを作る仕事は、社会的なインパクトも大きくやりがいはありました。ただ、モノを作る前の検討や、作ってからの運用などのバリューチェーン全体の業務に興味が湧き、思いきって働く環境を変えてみたいなと思い、転職を考えるようになりました。

転職活動をするうえでは、直近の経験を少しでも活かせればという思いから、再エネに関わる事業を手がける会社を中心に探していましたね。その中で、海運業界は洋上風力発電などに関連する取り組みを始めているところが多く、自然と選択肢に入ってきた形でした。

最終的に、日本郵船の決め手とは?

日本郵船は、洋上風力発電などに関わる新規事業において頭一つ抜けた存在であったことはもちろん、それ以外の領域でも事業を展開しており、さまざまなチャレンジをしていけそうだと思ったこと。そして、活躍のフィールドがグローバルに広がっていること。これらが揃っていたことが大きな決め手でした。

また、一次面接から日本郵船特有の人の良さを感じたことも、志望度が高まったポイントでした。転職の面接では珍しく、前職での仕事経験や得られたスキルに加えて、人となりを知ろうとされていると感じる会話が多かった記憶があります。特に今も覚えているのが「船は好きですか?」という質問です。実は前職時代に小さなプラントを海外に輸送する際に使用した船が日本郵船グループの船。業務上、船の図面や仕様書を読み込むうちに船に興味を持ったこともあり、そういった思いの丈を話しました。

日本郵船01

伊藤 彰英
2013年、新卒でプラントエンジニアリング会社に入社。入社後数年間は、プラントや海上輸送における仮設部材の構造設計を行い、海外現場の工事施工監理などを経験。その後、メガソーラー発電所の見積・官公庁/自治体との折衝業務・プロジェクトマネジメント業務に従事。2019年10月に日本郵船へ入社。現在は、自動車事業統轄グループ調整チーム 課長代理を務める。プライベートでは一児の父。2022年11月~2023年3月にかけて育児休暇を取得。週の約半分は16時半には退社し、子育てと仕事に奮闘する日々。

宇宙ビジネスに続け。新規事業創出プログラムで、次なる挑戦を

3~4年に一度の頻度でジョブローテーションがある日本郵船。伊藤さんは入社後から現在までに2部署を経験。どういった業務に関わってきたのか、その「仕事のやりがい」と合わせて伺った。

時系列でお伝えすると、入社して3年間は、当時設立されたばかりの新規事業を開発・運営するグリーンビジネスグループ(※1)に配属され、日本郵船を含む大手5社と共同で、海から地球を美しくというテーマで「CO2を排出しない次世代燃料船」の開発プロジェクトを担当していました。

誰も行ったことのない領域の新規事業ということもあり、最初の3ヶ月は何をしたらいいのか全くわからず途方に暮れていたのを覚えています。そこから一念発起して仕事終わりにビジネススクールに通い、ビジネスの基礎に加え新規事業を進めていくうえで必要な思考の枠組みを学びました。学んだことは即実践。痺れるような日々でした。

ただ、時はちょうどコロナ禍。対面での調整が難しく、5社の利害調整は難航。残念ながら事業打ち切りを余儀なくされました。当然、自分が手掛けてきた事業がなくなるのは悔しく、複雑な思いはありました。ただ、それ以上に、3年という期間の中で事業立ち上げからクローズまで一連のサイクルを経験できた貴重な経験だったと捉えています。失敗をしたからこそ、複数のステークホルダーと事業を創っていくうえでの振る舞い方、在りたい姿を描くことの重要性など、新規事業における教訓を得ました。

2023年4月に自動車事業統轄グループ(※2)に異動し、現在は自動車専用船の燃料を時代の要請に応じた形に転換していく業務に関わっているのですが、その中でもグリーンビジネスグループ時代の経験は活きていますね。

現在の業務としては、船舶の脱炭素に向けた水素、アンモニア、メタノールなどあらゆる次世代燃料がある中、将来を見据えてどの燃料とするかを見定め、発注計画の検討を行うこと。そこを決めていくうえでは、前提として長期的な自動車輸送サービスをどういうものにしたいか、業界をリードしていく日本郵船としてどうあるべきか。そういった「ありたい姿」を描き、全員が共通認識をもつことが大切だと考えています。

これが非常に難しいのです。自動車メーカーの動向、最新技術の進化、環境規制などの外部環境の変化から未来を予測して、日本郵船として取り組んでいく意味合いを抽出していかなればならないためです。現在、部署横断で議論なども行いながら、計画を決めていこうとしているフェーズ。壮大な問い。難解ですが、業界を牽引する立場である日本郵船だからこそ取り組まなければならないことであり、非常にやりがいがあると感じます。

(※1)グリーンビジネスグループとは
再生可能エネルギーをテーマに次世代に向けた新たな価値創出を目指し、2019年4月に創設されたグループ。水素・アンモニア等の次世代燃料を使用した船の開発をはじめ、洋上風力発電事業、LNG燃料供給事業、CO2輸送やカーボンクレジット等さまざまな取り組みを行っている。

(※2)自動車事業統轄グループとは
完成車の輸送や世界各地での完成車専用ターミナルの運営などの事業を展開する自動車事業本部内で、営業・運航・安全管理以外の業務を担当するグループ。具体的には、船隊整備、業務効率改善業務、収支管理業務をはじめ、脱炭素化に向けた環境規制への対応など、自動車輸送事業に関わるさまざまな情報の収集・発信なども担っている。

こうした中、伊藤さんは社内の新規事業研修プログラム「NYKデジタルアカデミー」にも参画。次なる挑戦を始めている。

入社して驚いたのが、約140年もの歴史がある企業にも関わらず、新たな挑戦を続けていること。例えば、2019年には、船員やその家族、関係者が抱える課題を解決し、彼らの生活を支えて豊かにすることを目指す「MarCoPay(マルコペイ)社」を設立。直近で言えば、先端事業・宇宙事業開発チームが新設され、宇宙研究開発機構(JAXA)や三菱重工業(株)などとの共同研究プロジェクトが始まっています。

そして、宇宙ビジネスの新規事業が生まれるきっかけとなったのが、「NYKデジタルアカデミー」と呼ばれる、新規事業の開発・運営に必要とされるスキルや考え方の習得を目指す社内研修プログラムです。

私は入社後すぐに新規事業立ち上げは経験できましたが、事業アイデア創出のフェーズは行ったことがありません。ぜひそこから経験を積んでみたいと思い、2024年春から研修に参加しました。

週1日2時間、9ヶ月間にわたる長期の研修なのですが、実は2回の海外研修が含まれています。この7月に、1週間のシンガポール研修に行ってきたところです。シンガポールマネジメント大学のキャンパスにいる方を対象に、特定のテーマについてインタビューし、直面している課題の抽出、ニーズを汲み取ったうえでの解決策の考案をしていくという内容でした。まさに、新規事業創出の最初のフェーズを実地で学ぶことができた、非常に有意義な時間でしたね。

日本郵船研修

NYKデジタルアカデミーでのシンガポール研修の集合写真。「次回はフィリピンに行き、船員育成をしている商船大学NYK-TDG MARITIME ACADEMYで2回目の研修があります」と伊藤さん。

日本郵船02

日本郵船の3~4年に一度発生するジョブローテーションが自身の特性に合っていると話してくれた。「私自身は5~6年ごとに熱中することが変わっていくタイプ。要は飽き症なんですが、日本郵船だと飽きる前に異動が発生します(笑)。異動のたびに、強制的にアップデートしていかなければならない環境になる。マンネリとは無縁ですね」

新たな領域でも、❝Bringing value to life. ❞を体現したい

続いて、今後の目標について。

日本郵船は❝Bringing value to life.❞を企業理念に掲げ、その理念の通り創業から約140年にわたり「海運」を中心としたモノ運びを通じて、社会を豊かにするさまざまな価値を社会に届け続けてきました。その時々の社会の要請・ニーズに応じて事業の形を進化させ、また新しいサービスを提供すべく新規事業の立案・立ち上げにも携わっていきたい。ここが1つ、自分の目標ですね。

正直、まだどういった事業を行っていきたいかは定まっていませんが、今、NYKデジタルアカデミーへの参加を通じて自ら熱意をもって取り組めるテーマを探しているところです。個人的には、共働きで3歳の子を育てる親でもあり、まさにライフワークバランスの課題に直面しているところ。こういった「多くの人が大変だけど、まだ解決できていない」というテーマはあると思っています。今、NYKデジタルアカデミーで一緒に活動しているメンバーには子育て中の人も多いので、そういった領域で考えていくのも選択肢としてアリかもしれない、と考えています。

また、グリーンビジネスグループ所属時代に経営学全般を学んだこともあり、日本郵船が出資した会社やグループ会社などの経営企画にも挑戦していきたいとも思っています。

新たな挑戦を続ける伊藤さん。何が彼をそこまで突き動かすのか。

いつか自分が人生を終える時に、ほんの少しでも社会がよくなっていたらいいな、と。こうした思いが、根底にはあるのかなと思います。

といっても、昔からそういうことを考えていたわけではなくて。大学生までは「漠然と何かしたい」という衝動はあったものの、何をしたらいいのかよく分からないまま生きていました。1つ、明確に転機となったのが、大学院時代に教授に薦められて『後世への最大遺物』(内村鑑三著)を読み、衝撃を受けたこと。そこには、後世へ遺すべきものとして「お金」、「事業」、「思想」などが挙げられていたのですが、そのとき初めて「自分はこの人生で何を遺したいか」を考えるようになったんです。「限りある人生を真っ当に生きなくては」と。自分のことばかりを考えていた学生が、真人間になったというか(笑)やりたいことが明確になっていったように思います。

働く中で出会ったエネルギーなどの分野は、地球規模の課題にも密接に関わるものであり取り組む意義を見出していますし、日本郵船で働くことをきっかけに、今後は船・輸送とは異なる領域でも後世に遺すものがつくれるかもしれない、という希望を持てています。

誰かから見たら「そんなことやっても意味ないのでは」と思われるかもしれない。だけど、「やらないよりはまし」だと思うんです。これからも、仕事を通じてその時に自分が出来ることを全力で行い、ほんの少しでも将来が良くなることを目指していきたいですね。

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