INTERVIEW
Honda(本田技研工業株式会社)

Hondaで、新たな事業機会創出を。ベンチャー出資・提携・M&A…CVC機能で担う「戦略」連鎖

掲載日:2023/07/25更新日:2023/07/25
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2000年代から積極的なオープンイノベーションを推進してきた本田技研工業(以下、Honda)。さらなるCVC機能の強化、そして「戦略」連鎖を狙う。そのなかでお話を伺ったのが、コーポレートデベロップメント統括部にてCVC機能の戦略企画・ディール実行等を牽引する佐藤功さん*。同ポジションの役割、意義、得られるやりがいについて伺った。

*コーポレートデベロップメント統括部/コーポレートデベロップメント部/コーポレートベンチャリング課所属

HondaのCVC機能・コーポレートベンチャリングについて

2019年秋には同社初のM&Aによって「Drivemode」を子会社化するなどCVC機能を強化し、オープンイノベーションを推進してきたHonda。その機能を強化し、Honda の将来の競争力の「種」獲得・育成を加速させている。

社内においてその機能を中心的に担うのが、コーポレートデベロップメント統括部/コーポレートデベロップメント部/コーポレートベンチャリング課となる。

主な役割としては、電動事業等、Hondaにおいて強化・補完が必要な領域、取り組んでいない未知領域に対する“仕込み“を行い、未来に向けた新たな事業機会創出を目指す。特に有力なベンチャー企業を含む「外部」との連携機能の確立、Hondaの戦略と連鎖したリソース獲得による次世代に向けた CX (コーポレートトランスフォメーション)を推進していく。グローバルにスタートアップ探索を担う「Honda Innovations Co., Ltd.」「Honda Innovations Silicon Valley, Inc.」とも連携を密にし、コーポレートベンチャリング(CV)を担っていく。

未来に向けた、Hondaの競争力の「種」獲得・育成を

まずはHondaにおける「コーポレートベンチャリング(以下、CV)課」が担っている役割、取り組みの概要から伺ってもよろしいでしょうか。

現在、HondaではCX(コーポレート・トランスフォーメーション)と題し、企業変革を推進しているのですが、CV課としても既存事業の持続的な改善から、新たな競争環境に適応するための仕込み、破壊的イノベーションの探索まで、幅広い領域に対するアプローチを担っています。

主な目的は、出資、提携、買収による組織能力の拡充、外部アプローチによる社内変革を推進。そして、CVC活動による「戦略」連鎖を起こし、未来に向けたHondaの競争力の「種」を獲得・育成することです。

より具体的な取り組みとしては、有力なスタートアップを選別し、出資案件として案件組成、Hondaとの戦略シナジーを鑑みた戦略整合性の明確化、投資先としての適格性を勘案してディールを実行していくこと。また、出資後に協業とモニタリングも行なっています。

グローバルなスタートアップへの探索でいえば、日本にある「Honda Innovations Co., Ltd.」、シリコンバレーにある「Honda Innovations Silicon Valley, Inc.」のメンバーとの連携を密に行っています。出資案件の案件組成を検討し事業部、研究所との橋渡し役になりPOC(実証実験)を行なうこともあります。

具体的な実績についても伺ってよろしいでしょうか。

例えば、破壊的イノベーションを探しにいくといった文脈で、2023年2月にイスラエル発核融合のスタートアップ「NT-Tao」への出資にも参加をしました。EV化が進んでいくなか、車両の電動化だけでなく、エネルギーを作る際のゼロインパクト、カーボンニュートラル化も非常に重要なテーマです。世の中には様々なアプローチがありますが、核融合もその一つ。核融合は太陽と同じような原理でエネルギーを生み出す仕組みで、資源となる重水素などは海水中に豊富にある。つまりEV充電のための電力を、カーボンを出さず、ほぼ無限に生み出せる可能性があるとされています。まだまだ原理を実証している段階ですが、「NT-Tao」の小型核融合炉が成功すれば、Hondaとのシナジーも期待できます。核融合にせよ、AIにせよ、多岐にわたる領域を見ていく。領域を絞らずにアプローチできるのは、HondaにおけるCVCのおもしろいところでもあると思います。

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佐藤功
コーポレートデベロップメント統括部/コーポレートデベロップメント部/コーポレートベンチャリング課 株式会社明治に入社後、営業、商品開発、コーポレート部門を経験。(株) 明治での勤務と並行し、ビジネススクールに入学、MBAを取得した。その後、大学院での出会いをきっかけに本田技研工業株式会社へ入社。入社後、新事業開発の推進、CASEに代表される電動化・コネクテッド領域の経営重要課題に関わるPMOに従事。現在、M&A案件のディール推進、CVCの立ち上げ・制度設計・推進に取り組んでいる。

国内の自動産業が変われば、日本経済が変わる

ここからは佐藤さんご自身のキャリアについて伺わせてください。転職理由、Hondaへの入社動機について教えてください。

前職時代に通っていたビジネススクールでHondaの方と出会い、その方との会話がきっかけでHondaに入社をしました。当時「いかに大企業でイノベーションを起こすか」を研究として学び、前職でも組織再編を推進していたのですが、Honda社内においてハイレベルな議論が交わされていると知り、入社してみたいと。ただ、入社するタイミングでは、すでに組織再編は終わっていたので、期待される役割は異なっていたのですが(笑)本格的に新規事業を強化していくタイミングでもあり、関心のある領域だったので、運は良かったと思います。

もう一つ、日本の未来を考える上でも、日本の基幹産業、自動車業界における大企業のイノベーションに携わりたいと考えました。EV化をはじめ、転換期を迎え、国内メーカーは厳しい状況に置かれていますが、Hondaには世界トップクラスの技術力がある。PR含め、もっとグローバルで存在感を出していけるはず。新規事業も活発に展開していく。その波に乗りつつ、新しいことを仕掛けていきたいと入社を決めました。

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もともとは開発戦略室にて航空領域、海洋領域における事業開発を担い、部署異動を経て組織再編のタイミングで現ポジションに至る佐藤さん。「経営会議にてCVC機能の体系化を経営層に提案させていただき、以来その領域を担ってきました。それまでも一部出資は行っていたのですが、トップダウンだけではなく、いかにボトムアップで案件を探しにいけるか。経営層に対して頻度高く直接提案ができ、経営層が“チャレンジ”に積極的なこともHondaの強みであり、すごいところだと思います」

入社2週間で社長提案も。挑戦が評価されるHondaの風土

入社後に佐藤さんが感じた「Hondaならではの魅力」があれば教えてください。

まず経営層がチャレンジングであることですね。トップが新たな挑戦、事業創出に高い関心を持っており、とにかく話が早い。「会社を変革しよう」という思いが、言葉だけではなく、意思決定にも反映されていると思います。

また、「こんなに頻繁に経営層たちと話すことがあるのか」と衝撃を受けました。2020年1月に入社したのですが、入社2週間で当時社長だった八郷さん(2021年4月1日付退任)に提案を持っていくことになり、正直、すごい会社だなと思いました(笑)

当然、社内全体が「挑戦」に対してポジティブだと思います。できたばかりのCVCの枠組みにおいても、どう事業部と戦略整合性を取っていくか、メンバーも交えて一緒に話しながら作っていく。ここは仕事としても非常におもしろいところですね。

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一緒に働きたい人物像についても語ってくれた佐藤さん。「Hondaが変革するために今何をすべきか、という意識を持ってくれる方と一緒に仕事したいですね。携わる領域についてはその都度学んで理解すれば問題ないと思います。出資・M&AといったCVCに関する業務経験、スタートアップに関する知識が大事かと言うと、正直そんなことはありません。それより重要なのが、業務遂行能力が高いかどうか。また、業務に対して一生懸命めげずに取り組めるかという部分です」

動き出さないと、変わらない

最後にご自身が仕事において大切にしてきた考え方、価値観があれば教えてください。

非常にシンプルですが、動き出さないと変わらない、そう考えているので、常にチャレンジしていくことは大切にしてきました。転職にしても、異動にしても、大学院にしても、ガラッと環境を変えるのは、どんな人でも少なからずストレスはあるもの。ですが、一回入ってみたら何とかなる。自分の中に成功体験があるので「やったことのないことでも何とかなる」といった自信になったように思います。

CV課に関しても、外から来た人間だからこそやれた部分はあったのかもしれません。「提案をしてみて否定されたらしょうがない」「とにかくやらないことには始まらない」という覚悟でやってきました(笑)とにかく早く動かし、やりきること。ここは私の強みでもあり、評価してもらえているところだと思います。あとは、あまりに「壮大なこと」ばかり言うと信頼は得られないもの。なので、共感を得ながら、人を巻き込み、とにかくめげずに淡々とやっていくことも大切かなと思っています。

最後の価値観のところでいえば、じつは小学校の頃から生徒会長を任されるなど、リーダー的な役割を担うことが多くありました。自分というより、まわりを見渡し、全体を良くしていきたい。そういったマインドが「日本の企業や経済を良くしていく」という価値形成の原点にあるのかもしれない。そこに、これまでの経験、得たスキルが重なり、今に至っています。今後もそれらをHondaという場所で活かし、新しいチャレンジに向き合っていければと思います。

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