掲載日:2024/10/31NEW更新日:2024/10/31
求人掲載中
財務省が民間出身者をはじめとした、新たな職員の中途採用を実施へ。今回の募集にあたり、大手建設会社から同省でのキャリアを選んだ峯岸 佳苗さん(29)を取材した。現在、大臣官房総合政策課 課長補佐として働く彼女は、なぜ「財務省」を次なるフィールドに選択したのか。そこには「より社会全体のためになるような仕事と向き合っていきたい」という思いがあった。
社会全体のために働く選択を。20代後半で決めた転職
もともと大手建設会社にて約5年間にわたって働いてきた峯岸さん。東京と東北支店で経理部門や現場事務を経験。20代後半へと差し掛かるなか、次第に「転職」を意識するようになったと当時を振り返ってくれた。
前職はもともと志望していた業界でもあり、率直に言えばとても楽しかったですね。マンション、ホテル、自社社員寮、原子力発電所…さまざまなプロジェクトに携わることができました。少しずつ建物が大きくなっていたり、まちの様子が大きく変わっていったり。多くの人たちが力を合わせ、同じ目標に向かっていく、非常にやりがいのある仕事でした。特に4年間従事した現場事務は小さな会社のバックオフィスを全て見ていくという役割でしたが、「一国の主」ともいえる事務所の所長に対して損益管理や経理処理について直接意見をする場面も多く、緊張感はありつつも充実していました。
ただ、やりたい仕事ができたからこそ、達成感もあったのかもしれません。「この先どんな仕事に挑戦ができるのだろう」「ずっと同じ道でいいのか」と考えるようになっていきました。 自分なりにやれることは全力でやってきましたし、手前味噌ですが、評価をいただいていた自負もあって。ちょうどそのタイミングで「長い目でみた時に、社会全体に良い影響を与える仕事がしたい」「みんなのために役立つことがしたい」という学生時代からの思いと改めて向き合うようになりました。今までの経験は力になっているはず。別の道を探すこともこれからの人生を考えたらより楽しいものになるではないか。そういった思いから転職を意識するようになりました。
財務省 大臣官房総合政策課 課長補佐 峯岸佳苗(29)
2017年に鹿島建設(株)に入社し、東京建築支店の経理部審査グループでキャリアをスタート。その後、同支店内の現業グループ、東北支店の現業グループにて勤務。2022年、財務省に入省し、関税局総務課で局内のとりまとめや国会関係業務を担当。2023年には理財局財政融資総括課に移り、財政投融資計画の企画等を手掛けた。現在は大臣官房総合政策課で課長補佐として、マクロ経済政策の調査・分析および総合調整を行い、国内外の経済情勢を踏まえた効果的な政策の立案に従事。前職時代の経験が活きている場として「多様な人たちの折衝やコミュニケーション」を挙げてくれた峯岸さん。「前職では所長、自社社員、協力会社などをサポートする役割でした。協力会社への発注・出来高の管理、プロジェクト全体の損益管理、労働時間管理、派遣社員の契約管理、労災手続き、地鎮祭などの神事も手掛けました。さまざまな立場にある方と円滑なコミュニケーションをとる力、突発的な問題に瞬時に対応する力は今の仕事でも活きているように思います。」
「私も、財務省で働けるかもしれない」
こうして転職を意識するようになった峯岸さん。なぜ、国家公務員という道を選んだのか。また、なぜ財務省だったのか。そこには「偶然の出会い」があったという。
転職を考えるなかで、改めて向き合ったのが、自分は何がしたいのか?ということでした。これまでの私の人生を振り返ってみると、とても恵まれた環境だったように思います。ただ、少子化や高齢化などの社会問題は依然解決の糸口が見えていないですし、東日本大震災やコロナ禍を経験するなかで、今までの安定した社会が続くとは限らないことを痛感しました。多くの人が私と同じような不安を抱えている日本社会を、少しでも前向きにできる仕事に携わりたい。そんな思いでさまざまな転職サイトを見ていた際に、まさに偶然アンビ(AMBI)で見つけたのが「財務省」における募集でした。民間出身の方のインタビュー記事を読み、「中途で入省し、活躍している人がいるんだ」と知り、新卒でしか活躍できないイメージがガラリと変わりました。そして財務省では、国全体の予算編成はもちろん、国際的な経済協調や税制など、すべての産業に影響があるマクロ視点の政策に携わることができる。「まさに自分のやりたいことに合致している」と感じて、思い切って応募しました。
入省当時の選考過程について「さまざまな財務省職員の方とお話しできたことが印象的でした。」と話す峯岸さん。「具体的な仕事のエピソードも多く、仕事を楽しんでいることが伝わってきました。また、1時間以上、政策について意見を交わす場があり、面接というよりもディスカッションに近いものでしたね。私の意見に対し、具体的な質問が返ってきたことは今でも覚えています。年齢やキャリアに関わらず、テーマに対して意見が求められるし、聞き入れてもらえる。議論を尽くす。こういった文化を垣間見ることができ、とても魅力的だと感じました。」
未来に「財務面」からバトンをつないでいく
こうして2022年に財務省へと入省した峯岸さん。特に「やりがいを感じた仕事」について聞くことができた。
2024年7月末、「財政投融資の在り方に関する議論の整理(*)」という文書を公表しました。私も担当の一人として情報・データの収集、財投分科会で使用する資料や想定問答の作成などに携わりました。「財政投融資」の役割や意義について深く考えるきっかけになりましたし、自分の業務が国民の生活や事業活動につながっていく実感が得られたように思います。
(*)財政制度等審議会 財政投融資分科会にて財政投融資が担うべき役割や在り⽅について検討したもの。
また、海外における政府系ファンドの事例や産業支援の制度を調べていく中で、より社会に貢献していくためには、自分自身の知見を広げ、成長していかなければならないと身の引き締まる思いがしたことを覚えています。
そして、今回の文書の公表は、今後の財政投融資を考える際の基準点となるのはもちろん、法改正、運用改善につながっていく可能性もあります。私自身の担当は異動によって変わってしまいましたが、次の担当者が引き継いでくれる。言ってみればどんどん「バトンをつないでいく」といった感覚に近いのかもしれません。自分が携わった検討が実現し、より良い日本をつくる一助となっていくことを期待したいと思います。
もう一つ、「財政投融資の執行調査」が印象に残っている仕事だと話す峯岸さん。「財投機関の事業や融資先を調査するために、北海道へ視察に行きました。北海道ではJRTT(鉄道・運輸機構)が財政融資を受け、新函館北斗から札幌までの新幹線建設が進んでいます。これが完成すれば、新駅の周辺が栄え、生活が豊かになることが期待される。そういった場に立ち会い、スケール感含めて実感できたことが印象的でした。民間企業も含め、多くの人たちがチームとなり、国民生活の改善や地域の発展につながっていく。そういった場面に立ち会えるのはやはり嬉しいですね。」と話をしてくれた。また、やりがいの一方で、ミスマッチをしないためにも知っておいたほうがいい業務の厳しさとして、「情報量の多さ、その処理のスピードや質が常に問われる部分」を挙げてくれた。「部署によると思いますが、多くの情報が日々入ってくるため、優先順位を考えながら的確に対応する能力が求められます。国会の答弁書作成はスピード・質どちらも求められるので、常に緊張感をもって作業する必要があります。また、毎年人事異動があるのも特徴です。出向や留学、海外勤務の機会もあります。いわば毎年転職し、新しいチャレンジをしていく感覚に近い。財務省という職場は、いろいろなことに関心を持ち、楽しんでいける人に適していると思います。」
私にとっての仕事は「誰かの役に立つこと」
そして最後に聞けたのが、峯岸さんにとっての仕事とはどういったものか。根底にある仕事への価値観について、エピソードを交えて聞くことができた。
私にとっての仕事は「誰かの役に立つこと」だと思っています。なぜ、そう思うようになったのか振り返ってみると、おそらく父の影響が大きいと思います。私の父は「橋」や、山や丘の斜面が崩れないようにする「法面(のりめん)」を設計する土木技師だったのですが、寡黙な人でもありました。残業続きで家に帰ってくるのはいつも遅い時間、学校行事も仕事でなかなか来られない。そんな父が、ある日、旅行に向かう車のなかで「あの山の斜面にコンクリートが見えるだろう?あの法面は俺が作ったんだ。これで土砂崩れを防いでるんだ。」と誇らしげに話をしてくれて。父が話をしてくれたこと自体にも少し驚いたのですが、何よりも「仕事とは誰かの役に立つこと」なのだと印象付けられた体験になりました。もちろん仕事は楽しいことばかりではないですが、人の役に立つからこそ、一生懸命やる理由になる。そしてやりがいにつながっていくのだと思います。とはいえ、私自身、まだまだ知識も経験も足りていないと痛感する毎日です。さまざまな経験を通じ、広い知見を持ち、社会に貢献できる人になりたい。そしていつか誇らしく仕事の話ができる、そういった父のような人になっていきたいと思っています。