INTERVIEW
FC今治(株式会社今治.夢スポーツ)

J2昇格『FC今治』で挑む、子どもたち世代のための地域社会づくり――マーケティング責任者が抱く思い

掲載日:2025/03/27更新日:2025/04/04
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2025年シーズンよりJ2に昇格したサッカークラブ『FC今治』。同クラブ運営を基軸に、持続可能な地域社会づくりに挑むのが、岡田武史氏(元日本代表監督)が率いる「今治.夢スポーツ」だ。新たな中途採用にあたり、AMBI経由で入社し、活躍する阿部珠恵さん(執行役員/マーケティング責任者)を取材した。広報・PRコンサルタント経験を経て、2023年2月に入社した阿部さん。なぜ、彼女は『FC今治』で働くことを決めたのか。そこに「子どもたち世代のために、心の豊かさが感じられる“地域社会づくり”に貢献したい」という思いがあった――。
(photograph:Atsushi Kondo)

子どもたち世代のため、「心の豊かさ」がある地域社会づくりを 

事業会社・スタートアップの広報、そしてPR会社ではコンサルタントとしてキャリアを築いてきた阿部さん。なぜ「今治.夢スポーツ」への入社を志望したのか。まずはその経緯から聞くことができた。

前職では4年ほどPR会社で働いたのですが、もともと転職しようとは考えていませんでした。同僚たちはみんな優秀で学ぶことばかりでしたし、プロジェクトにも戦略立案から実行、振り返りから次の施策づくりまで伴走型で携わることができ、大変ではありながらも、刺激を受けながら楽しい日々を過ごしていました。

そういった中、たまたまAMBI(アンビ)で目にしたのが『FC今治』の求人募集だったんです。元日本代表監督である岡田さんのことはもちろん知っていましたし、何より共感したのが「次世代のため、 物の豊かさより心の豊かさを大切にする社会創りに貢献する」という理念。というのも、2019年に子どもが生まれたことで、おこがましいかもしれませんが、「子どもたちの世代に、仕事を通じて何ができるだろう」という問いがずっと心にあって。未来のために何が還元できるのか。心の豊かさや生きる力をいかに身につけてもらえるか。今治という素敵な土地で真剣に向き合っている『FC今治』の挑戦に感銘を受けました。私自身、地方出身でもあり、これからどういった環境で子育てをしていくべきか、考えていたタイミングも重なり、『FC今治』の選考を受けることにしました。

こうして選考へと進んだ阿部さん。その過程において現地観戦したホームゲームは忘れられない体験だったと振り返る。

代表である岡田さんとの最終面接で初めて今治を訪れたのですが、ちょうどそのタイミングで『FC今治』のホームゲームを観戦しました。とても感動したし、驚いたのが、地域のみなさんに心から愛され、応援されているということです。たとえば、地域のおばあちゃんたちもスタジアムに足を運んでいるし、選手の名前を覚えている。まるで、子どもたちの運動会を見ているような楽しさだと仰る方もいました。当時のスタジアム(※)には長いスロープがあったのですが、私がベビーカーを押しながら歩いていると、おばあちゃんたちが「あら、かわいいわね」「がんばってね」「私たちもスロープが往復できるくらいずっと健康でいないとね」と気さくに話しかけてくれて。そういったあたたかい空気、スポーツが地域に根付いていること、街の活力となっていることが実感でき、「こんな素敵なクラブの一員になりたい」と強く思い、『FC今治』への入社を決めました。

(※)もともと『FC今治』のホームスタジアムであった「ありがとうサービス. 夢スタジアム」のこと。現在は2023年1月に竣工した「アシックス里山スタジアム(FC今治新スタジアム)」がホームスタジアムとなっており、「ありがとうサービス. 夢スタジアム」は練習場に転用されている。

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阿部珠恵さん(執行役員/マーケティンググループ)
人材サービス大手で広報業務を経験後、医療スタートアップで広報部門の立ち上げに従事。その後、PR会社に転職し、企業のPR戦略立案や施策実施支援などを手掛けてきた。2023年2月、愛媛県今治市を本拠地に、持続可能な地域社会づくりを掲げる「今治.夢スポーツ」に入社した。「私はそこまでサッカーに詳しいわけではなかったのですが、もともと夫がサッカー好きで、私もたまに一緒にJリーグの試合を観戦していました。」と語る阿部さん。「スタジアムにいくと屋台やイベントが並び、お祭りのような活気があり、その雰囲気が好きでした。また、子どもたちとグルメを楽しんだり、展示されている消防車を見たり。試合中は観客全員が一体となって応援する。街や地域のハブとなっていく、そういった「場」や「コミュニティ」としてもとても興味を持っていました。」

サッカーにとどまらない事業で、地域・未来への貢献を

こうして2023年の2月に『FC今治』に加わった阿部さん。現在、執行役員・マーケティング責任者として活躍する。これまでの2年間を振り返り、2023年3月5日に開催された「アシックス里山スタジアム」初のホームゲームが強く印象に残っているという。

仕事のやりがいにも通じるのですが、2023年3月5日「アシックス里山スタジアム(FC今治の新スタジアム。当時は「今治里山スタジアム」)」での初ホームゲーム、あの日の光景は今も鮮明に記憶に残っています。クラブ史上最多の5,424人の方が駆けつけてくれました。「歴代最多の入場者数」という記録もさることながら、観客の熱気や声援、選手たちの気合…まさにスタジアムが一体となり、リーグ戦の幕開けにふさわしい盛り上がりに立ち会うことができました。

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(photograph:Atsushi Kondo)

じつは私自身、2月中旬頃に入社したので、すぐにチャレンジしたミッションでもありました。開幕まで残り2週間。いかに新スタジアムを満員にするか。近くのイオンモールでチラシを配ったり、地域の方々に直接お声がけしたりと、マーケティング施策として何か特別なことをしたわけではありませんが、限られた時間の中、泥臭い活動も含め、みんなでできることは全てやりました。その結果、人々が熱狂し、一体感を共有する空間となり、あの日のスタジアムに広がっていた感動につながっていった。マーケティングは、数字以上の価値を生む。それが実感できた瞬間だったように思います。ちなみに、FC今治のスタジアムはサッカー専用のスタジアムでもあり、観客と選手の距離がとても近いのも特徴です。選手一人ひとりの表情、躍動感まで伝わってきますし、観客の熱気がギュッと詰まった空間に日々立ち会っていける。ここは何よりもの働きがいになっています。

そしてサッカーにとどまらない事業に挑み、さまざまな形で地域、未来への貢献に挑戦できることも『FC今治』で働く大きな魅力だという。

もちろん「サッカー」という強いコンテンツが基軸にありつつ、大きな理念を掲げているクラブだからこそさまざまなことにチャレンジができます。たとえば、スタジアムのドッグラン、カフェ運営、ランニングコミュニティ「アシさとクラブ」活動などは、サッカーに興味がない方もスタジアムに足を運んでもらうきっかけづくり。毎試合スタジアムに足を運ぶおばあちゃんがいるのですが、「知り合いに会うこと」を楽しみにしているんですよね。そういった、少しのんびりとした形で来場される方も多いのはFC今治の特徴の一つと思っています。今後、J1を目指すなかで、熱狂的なサポーターのみなさんが増えていくことはもちろん大切なのですが、一方でこうした多様な人に試合を楽しんでいただき、多くの人々とFC今治と関わりを広げていくことも重要です。そういった多様なかたちの「人と人とのつながり」を生み出していけるのも醍醐味だと個人的には感じています。

続いて、やりがいの一方でミスマッチしないためにも「知っておいたほうがいい厳しさ」についても聞くことができた。

どの仕事にも共通しているかもしれませんが、さまざまな場面でプレッシャーを感じることはありますね。地域のみなさん、サポーター、パートナー企業の経営者…さまざまな方々に支えられて成り立っている事業でもありますし、関係者と密接に関わりながら、いかに期待に応え続けていけるか、ここは常に問われると思います。

たとえば、2週間に1回のホームゲームがあり、もちろん目標集客人数があります。それらをいかに達成していくか。試合の勝敗にしても、企画や施策についても、思うように成果がついてこない時はありますが、その中でも、いかに1試合ごとに応援いただき、来場された方に満足いただけるか。それぞれのプロセスや場面において、さまざまなご意見もいただきます。むずかしいのは、どれも的確なので、間違っているものは無いということ。見る角度によっては全てが正しいわけです。ただ、全てのご意見を叶えることはできません。絶対的な正解がない、そういった中で「どうすればうまくいくのか」「新しい答えがきっとどこかにあるはずだ」と前向きに考え続ける力が求められると思います。また、J2にも昇格し、クラブとしても、会社としても、今まさに新しい『FC今治』の姿を模索しているところでもあります。理念、社内の経営指針、行動指針への強い共感、「FC今治らしさ」へのこだわりを大切にしていくのと同時に、自律的にチャレンジをしていく。さまざまな個性、才能が集まっており、自由にやりたいことを任せてもらえる環境はあります。それらの多様性が「次のおもしろさ」を作り出していく原動力になっていく。ですので、さまざまな視点から『FC今治』が次にどのような姿になるのかを妄想したり、考えたりすることが好きな方であれば、きっと存分に楽しめる環境だと思います。

『FC今治』マーケティンググループが担っている業務・ミッションについて

「マーケティンググループでは、ホームゲームの企画・運営、チケットの配券管理、さらにペイド・オウンド・ソーシャル・アーンド各種媒体での発信企画、グッズ展開、地域コラボなど多岐にわたる、ファン・サポーターとのコミュニケーション施策を担っています。一般企業に比べ、マーケティングが担う領域が広いことが特徴です。たとえば、2週間に1回程度ホームゲームが開催されるのですが、その試合でどのような企画を行うのか、いかに人を集めるか、企画立案・PR活動などの集客活動を行うほか、警備や人員配置などの運営も担当します。また、同グループにてチケット管理、グッズ・MD事業、地域コラボレーションなども手掛けています。特に地域コラボチームは2024年に立ち上がったばかり。地域のお困りごとに対して私たちができることを模索し、コラボを通じて価値還元していく取り組みです。その結果『FC今治』に興味を持っていただける方を増やしていく。いずれも大きなゴールは「賑わいのあるホームゲーム及び地域を作っていくことを通じて、『FC今治ファミリー』を増やしていく」ということ。入社当初は「こんなにも広い領域を見ていくのか」と驚きましたが(笑)いろいろと勉強しながら取り組んでいます。」(阿部さん)

(※)ペイド・オウンド・ソーシャル・アーンド
企業と消費者をつなぐメディアを分類したもの。それぞれのメディア特性ごとにマーケティング活動に活かされる。ペイド(Paid)はテレビCM、新聞広告、Web広告など広告費を支払って掲載するメディアを指す。オウンド(Owned)は企業自身が所有するメディア、アーンド(Earned)は自然露出・口コミなど。ソーシャル(Shared)はSNSなどのソーシャルメディアを指す。

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商店街でのファン感謝祭での様子(左)と地域コラボ活動(見守り)時の画像(右)。その他にも、スクール運営、保育園でのボールで触れ合う体験、サッカー未経験者歓迎イベントなど、さまざまな活動を行なっているという。「地域との繋がりを深める取り組みとして、公民館でジャズコンサートを実施したこともありました。」と話をしてくれた阿部さん。「そのコンサートにサッカー運営のボランティアスタッフも鑑賞に来てくれて「生きる希望をもらった」と直接感想をくれたのですが、言葉にならないくらいうれしかったですね。「演奏者ご本人にお返しはできないかもしれないけれど、地域にお返ししていきたい」という言葉には、自然と涙が溢れてきました。」

チームで「見たことのない景色」を作っていこう

そして取材後半、これからの目標について聞くことができた。

直近の目標としては、やはりJ2リーグでの戦いにおいて集客やMDを強化し、スタジアムで選手を応援する熱量のある雰囲気を作っていくことです。クラブとして、スタジアムの規模や地域との関わりを広げながら、毎試合に足を運んでいただけるファンを増やす。そして、その先にあるJ1やACL出場などの夢の実現を、ホームゲームの基盤づくりの視点から後押ししたいです。

『FC今治』はリスタートし、10年目を迎え、応援してくださるファンやサポーターの方々もずいぶん増えてきました。一方で、まだ手が届いていない地域や層がたくさんあるのが現状です。J2に昇格した今、他のクラブと比べて入場者数やJリーグIDの「お気に入り登録数」などの数字を見ても、まだまだ成長の余地があります。地域の規模、クラブの特性を考慮したとしても、ポテンシャルはあるはず。ですので、さらに多くの方々にクラブを知っていただき、興味を持っていただけるような活動を続けていければと思います。長期的な視点で見ると、地域の皆さんに貢献できることを増やし、その結果としてクラブへの好意や興味を持っていただく活動も持続的に続けていければと思います。

もう一つ、個人的には、クラブの理念にもある「次世代のためになる仕事」にも挑戦していきたいですね。どんどん不確実性が高まっていると言われている時代ですし、未来は予測できないものになっています。そういった中でも『FC今治』の教育事業、フットボール事業、コミュニティ事業を通じ、子どもたちの育成、活躍を支援していきたいですし、『FC今治』に関わったことが何らかたくましく楽しく生きていく力になったらうれしいなと思っています。そして、大きな目標になるかもしれませんが、『FC今治』が他の地域創生にとってもヒントとなり、モデルケースとして注目されるようにしたいです。その実現は、最高の成果の一つだと思っています。

最後に、阿部さんにとっての「仕事」とはどういったものか――。

新卒で入社した人材サービスの会社のスローガンが「はたらくを楽しもう」だったのですが、その言葉は今も私の中で大切にしているものです。これは「とにかく楽しく仕事をしよう」という意味ではありません。働くことには大変なことも多いですが、その分、成果を出したときの喜び、達成感は大きくなっていくもの。そういったことを含めて「働くっていいな」と思えるような仕事に出会っていく。こうした「はたらく楽しさ」があるから仕事をがんばれる。『FC今治』でそういった仕事に出会えていますし、これからも同じように楽しみながら向き合い続けていければと思います。もう一つ、「早く行きたければ一人で行け、遠くへ行きたければみんなで行け」という言葉も大切にしてきたのですが、今の仕事は、まさにチームで見たことのない景色を作っていくもの。自分一人で推進するのではなく、チーム全員で力を合わせることで、大きな仕事を成し遂げていければと思います。


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